第三章 カーネーション
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恋と愛が違う、それはどのように範囲でそのように変わるのかわからないけど…誰もそれを教えてくれない。
でも、鳴上さんのいう通り、私と朔間さんの恋は諦めのつくものだったのはまぎれもない事実だ…。未練がないとは言えないけど、でもこの2ヶ月ほどで諦めが付いているというのもまた事実だ。それもこれも凛月のおかげ……
『え…なんでここで凛月が出てくるんだろう…』
自分の心境の変化を感じているのに、そこに友達のはずの凛月が現れるとは…、でもそのくらい凛月は私のそばにいてくれた。何も言わずに痛みをわかってくれていたからこそそれを忘れて今まで過ごせた…。アイドルの朔間零を冷静にみていられた。
朔間凛月は不思議な人だ。ズケズケと私の中に入ってくるけどイライラさせたりしない。むしろ居心地の良さすら感じる…、彼は多くは語らないけどその雰囲気で何かを許されている…それか認められている気持ちになってしまう。それは、凛月のいいところとも言える。
そんなことを考えていると、テレビ局の廊下を歩いていると綺麗な鼻歌が聞こえる。それに導かれるように音をたどれば…
『月永さん…?』
月永「ンァ…?……あれ…えっと…お前は…」
『あっ…えっと』
月永「待って待って!言わないで!妄想するから!」
『あ…はい!』
月永「わかったぞ!お前はリッツの『天使様』だ!」
『え…リッツ…?』
月永「朔間凛月!おれの大事な仲間!」
『あ…凛月のことなんですね。可愛い名前ですね』
月永さんはキラキラした目で私のことを見る。少し肩身が狭い感じがするがそれが少し少年のようで面白くある。
月永「おれあんまりお前と話したことないからさぁ!リッツから聞いた話のイメージが強いんだ!」
『凛月がよく話を…?』
月永「あぁ!よく話すぞ!ナルもすごく楽しそうにそれを聞いてる!」
月永さんとは、あまり共演回数がなくたまにバラエティとかで一緒になるけれどドラマなどの出演が多い私は凛月や瀬名さんと共演が多い。だから、未だに月永さんは未知の存在だ…
『月永さんはここで何を…?』
月永「ん?え〜っと…あれ、おれ何してたんだっけ…」
『え…』
月永「あぁ!そうだ!この後奥さんとデートなんだぁ…!あはは☆」
『え…奥さんって月永さん…?』
月永「おれのことレオでいいよ!二人とも月永で面倒だろ?おれはあんまり呼び方気にしないからさぁ…えっと『天使様』?」
『あっ…じゃあレオさん…あの、私美羽子でいいですよ?『天使様』って好きじゃなくて…』
月永「そうか?じゃあ美羽子!年も同じだろタメ口で全然いいぞ〜!奥さんが好きな人はおれも好きでいたいから!」
『へ…?』
月永さんは私が話す隙もないほどに新しい情報を盛り込んでくる。凛月が『Knights』の皆さんに私のことを話していることや月永さん……レオさんは夫婦のことを隠す気がないこと、奥さんが私のことを好いてくれていること……頭の中が大混乱だ…
『…レオさんは、奥さんのこと大好きなんですね』
月永「ん?そりゃそうだろ。好きだから結婚した!」
『その止められたりは…』
月永「ん〜確かに付き合うときは迷ってたみたいだし、発表するのは嫌がってたなぁ…けど、誰がなんと言おうと別れる気もないし発表も結局説得してできちゃったわけだけど…」
『でも…レオさんってアイドルじゃないですか、それも『Knights』のリーダーで…』
月永「だから?」
『え……気にしたりとか…』
月永「そりゃ、ファンの子には悪いと思うしメンバーにも何かと申し訳なくなることもあるけど、おれは何よりもアイツが大好きだから。アイツと一緒になれないなら、アイドルっていうのを嫌いになっちゃうかもしれない…。
けど、おれがアイドルでいれるのはそれを認めてくれた仲間とおれが幸せで笑ってるならそれでいいって思ってくれるファンの子たちのおかげなんだ。
だからさ、おれはそう思ってくれる子たちのために幸せに笑ってアイドルをするんだ!あはは☆」
月永さんは本当に幸せそうな顔で私に笑った。その顔が本当に後悔がないこと、彼女のことを好きであることが伝わってくる。本当の恋…いや、愛というものを知っている人なんだとわかる。
私にはそれができなかった、朔間さんとのことを公表してしまえばきっと今まで通りとは行かない。それは嫌だと判断して恋と仕事の天秤で仕事をとったそれだけだ。でも、レオさんは愛をとってその上で仕事をしている…私にはできなかったことだった…。
『レオさんは恋と愛の違いってわかりますか…?』
月永「ん?なんだそれ、哲学かぁ?おれそういうの面白いけど嫌い!」
『面白いけど嫌い…?』
月永「そういうの考えるだけ時間の無駄だ!無限地獄!それより周りを見て感じろ!そして、妄想してればお前らしい答えが見つかると思う!人に聞くよりお前自身の答えを出すのが一番面白いと思うぞ!」
『…面白いですか…?』
月永「あぁ!誰かの答えに満足するんじゃなくて自分なりの答えを撃ち出すのがいい!おれはそういうのがすき!」
『…じゃあ…レオさんの恋が世間によって叶わなかったら、諦めがつきますか…?』
月永「…ん〜、そうだなぁ…諦めかぁ…もしおれが無理して駆け落ちしてアイツが死ぬっていうなら諦めれるかもしれないけど、もしお互いが何しても生きれるっていうならおれは諦めない!
アイツを掻っ攫ってでも添い遂げたいなぁ…。おれさ、今までいろんな女の人と会って話したりしたけどアイツ以上って会ったことない!あっ、妹を除いてな!」
『…諦めない…』
月永「うん!おれ、アイツと人生を添い遂げるために生きてるから諦めるとか考えられないな!例え世間がおれを非難して生きづらくなっても、おれにはアイツが必要だ!」
そう自信満々に言い切ったレオさんは廊下の先で呼ぶ奥さんの声を聞き、「じゃあな!頑張れ『天使様』」と言い残して私の前から消えていった。廊下の奥に見えたふたりは幸せそうな顔をして出口のある方へと歩いていった。呆然とふたりを眺めている私の元には先に楽屋に入っていたマネージャーがあまりに遅かったのか駆け寄ってくる。
マネ「ちょっと先に局ついた人が楽屋に来ないってホラーなんだけど…」
『ねぇ、マネージャーは諦められない恋したことある…?』
マネ「…急になによ、仕事が恋人の私に喧嘩売ってる?」
『いや、恋もいいけど本当の愛っていうのがもっと知りたくなったなって今思ってるとこ』
マネ「……そう、じゃあまずは仕事しっかりこなしてからゆっくり考えなさい」
『はーい、仕事しますよ〜!』
私は怒っているマネージャーを追い越して自分の楽屋へと向かう。もし、本当の愛ってものが存在するならその相手は、朔間さんじゃなかったんだ。だってあれは諦められる恋だったんだもの…
第五話
『きっと、私の隣を歩いてるのは彼じゃない』
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