第三章 カーネーション
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*零said
休憩に入って、我輩はある人物の元へ我先へと向かって行く。
零「どういうつもりじゃ」
女王「おやおや零さんじゃん。どうしたの?」
零「どうしたもこうしたもない。お主が珍しく指名で仕事するから受けてやったのになんでこのメンツなのか聞きたい」
女王「私がイメージしたキャラを忠実に演じてくれそうな役者を選んだだけだよ?それが不満なの?」
零「不満じゃない。ただ何故かと聞いておるんじゃ」
女王「う〜ん。何故かぁ…私は尊敬している零さんにカッコイイままでいてほしいだけだよ。高望みだけど、仕事もプライベートもね。」
零「随分、公私混同して仕事をするんじゃな」
女王「…珍しいな。怒ってるの?なら、辞めればいいじゃん。私は怒らないし、スタッフにも伝えるけど?」
そういって、女王様はニヤニヤと笑い我輩を見る。高校生の時はもっと純粋だと思っておったが、いろんな知識を備えすぎて厄介な子になったもんじゃ…。
やはり全てわかった上でこのキャスティングにしたんじゃな…。ほんと悪い子じゃ…
零「まったく…悪い子になったもんじゃな。その悪知恵は誰から授かったんじゃ?」
女王「…誰から…さぁね、基礎は間違いなく零さんだけど…」
零「…ほう。」
女王「とにかく、私はかっこ悪い朔間零が嫌いなの。いい機会だからケジメつけなよ。じゃあ私、次の仕事があるから。辞めたいなら連絡して」
零「やるよ。まったく、生意気になったなオマエ」
女王「……あはは☆それでこそ朔間さんだ!凛月に負けるなー!頑張れー!れ〜い!」
零「ばか!声がでかい!」
女王「あっははは☆カッコイイ零さんが戻ってきますように!」
女王様は神様に拝むようにパンパンと手を合わせてから部屋から出ていった。我輩は唖然と彼女を見ていると背後でバンバンと机を叩く音が聞こえて振り向けば凛月が珍しく大爆笑しておった。隣の美羽子ちゃんがアワアワと我輩と凛月を交互に見るその様子が愛らしくて我輩もクスクスと笑いながら席に戻る。
凛月「女王様なんだって?」
零「どうやら、今の我輩はかっこ悪いらしい。カッコイイ零さんに戻れと言われてしもうた」
凛月「あははっ、あの子らしいっ…!」
『そんな!朔間さんはかっこいいですっ!』
美羽子ちゃんはふんすっと鼻がなるほどに前に出る。凛月とふたりで驚いた顔をする。しかし、ふっと糸が切れたように笑いだす。それに今度は美羽子ちゃんが驚いてキョロキョロと二人を見る。
零「美羽子ちゃん、またよろしくな」
『はい!私こそよろしくお願いします!』
なんとなく、女王様の言いたいことはわかっておる。されるがままに別れてしまったことを後悔しておる。我輩にキッカケをくれたんじゃろう。じゃが、凛月まで呼ぶ必要はないじゃろう。あの子はまったく……
零「神様っていうのは試練が好きじゃのう…」
『…?何か言いましたか?』
零「いいや、なんでもない」
*凛月said
本読みを終えて、それぞれが次の仕事へと移動していく。俺も共演者に挨拶をしつつ次の仕事のために部屋を後にする。
移動の車に向かう途中の廊下で問題児に連絡をする。
女王「もしもし?」
凛月「何してくれてんの?俺を失恋させたいの?」
女王「急になに?幸せそうに笑ってたのに内心、女王様に叛旗を翻すために闘志を燃やしてたの?」
凛月「からかうのは辞めてよ…ほんとどういうつもり」
女王「どうもこうも、いい脚本書けたから好きな人にやってほしいだけでしょ?乙女心がわからない凛月だなぁ〜」
凛月「…二人とも未練タラタラなのに、やっと美羽子が俺のこと呼び捨てで呼んでくれてタメ口聞いてくれるようになったんだよ?なのに…兄者と共演させるなんて」
女王「…じゃあ騎士らしく立派に魔王から天使様を守ってみせなよ。
うちの騎士はそれができるはずだよ。自分の正義と信念を信じて頑張りなよ。エンディングを決めるのはヒロインだよ。」
凛月「ふ〜ん…そういうこと…」
女王「頑張れ凛月!負けるな凛月!悪い奴からお姫様を助けるのは王子様の役目だよ!」
凛月「少女漫画の見過ぎ。馬鹿じゃないの?」
女王「なにをおおおっ……」
反論しようとする女王様の声をプツリと切る。彼女の思惑がなんとなく見えたからもういいとしよう。携帯をポケットにしまって車に乗り込む。愛用のアイマスクで目を覆ってすぐに寝る体勢にはいる。大丈夫だよ、あんたの言いたいことはわかった。だから、絶対このドラマの間に彼女に答えを出させるよ。
必ず、エンディングは天使様が騎士にキスしてハッピーエンドだよ。
凛月「ほんと、神様は試練ばっかりあたえるよね。」
*美羽子said
本読みが終わって、事務所に他の撮影の台本を取りに帰ってくると社長が珍しくフロアにいて「ちょっとおいで」と手招きされたので大人しく従う。
『なんですか…?』
社長「…朔間零さんのことだが」
その瞬間、背筋がピンっと伸びる感じがした。なにを言われるかわからないけれど、どう反応すればいいかわからない。朔間さんがいるから、このドラマをおりろと言われるのか。それとも、恋愛ごとにおいてまた釘を刺されてしまうのか…。
社長「そう身構えなくてもいい。ただ、もう事務所の方針に縛られなくてもいいって言いたかったんだ。誰と恋愛してくれてもかまわん。それはお前の自由だ。小さい頃からお前の面倒を見て支えてきたのは、あんなに悲しい顔をさせるためじゃないんだ。でも、今度は素直に相談してくれるか?」
『…はい、わかりました。』
社長「とにかく今は仕事頑張ってくれよ。」
『はい!』
社長の部屋を後にして、私は次の仕事の準備をした。マネージャーの車の中で社長の言葉を繰り返す。きっと、朔間さんとのことを知っているみんながずっと後悔していたんだと思う。そのくらい、この一ヶ月の私は死んだような顔でもしていたのかもしれない。けど、今回のドラマの件や顔合わせにきた朔間さん…そして、社長の言葉に不思議と体が軽くなった気がした。
もう、私は『天使様』なんて言葉を身に纏うための誓いを崩してもいいのだと誰かが言ってくれた気がした。
『神様は試練がお好き、だけどそれは愛あってこそだよね』
第二話
興味ない人に試練なんて与えない
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