第二章 カルミア
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*美羽子said
『UNDEAD』のライブから数日、撮影を終えて事務所に帰ってくると偶然にも廊下で母と遭遇する。母は私の顔を見ると、少し嬉しそうに笑って「こっちにいらっしゃい」と事務所の一室に案内される。
『…なに?ママ』
母「来年の春ドラマ決まったわ」
『…え?う…うん?』
母「脚本…見てみなさい」
いつもなら、マネージャーからくるはずの仕事の話を忙しい母がこんなに嬉しそうに語るのは割と珍しいことでもごもごと話してしまう。母に促されるまま、渡されたドラマの企画書を確認する。すると、そこには脚本家のところに私の尊敬してやまない月永さんの名前が書かれていた。それを見た瞬間バッと立ち上がり、母の顔を見る。母は笑って、「やるでしょ?」と言うので首が折れる覚悟で上下に振る。
『うん!うん!やる!やった!また月永さんのお話にでれる!』
母「実は月永さんからのご指名よ。よかったわね」
『指名…嬉しい…ど、どうしよう…嬉しくて昇天しちゃいそうだよ』
母「…久しぶりにちゃんと笑ったわね」
『え…』
母「悪いと思ってるのよ。朔間さんのこと、あれからあなた本当の意味で笑わなくて…ごめんね、辛い思いをさせてしまって」
『ママ…ううん、いいの。私は大丈夫だよ。だって、私の恋人はファンのみんなで…、最愛の人はママとゆうくんだけだから』
母「いいのよ、無理しないで…?あなたも二十歳超えた大人なんだから恋人が居たっていいのよ…。ほんとは、朔間さんのことを公表したって…私はよかったのよ…」
『もういいんだよ。今はこのドラマのことだけで幸せだから。』
母「ごめんね、美羽子」
母は泣きそうになりながらギュッと私を抱きしめながら「ごめんごめん」と謝った。私はそれを抱きしめながら、ウンウンと頷いた。久しぶりに見せた母の涙には後悔が滲んでいた。本当はあの日からずっと後悔していたのだと思うと、私も申し訳ない気持ちになってしまった。
でも、もう私は大丈夫だ…。未練は…、正直まだあるかもしれないけどもっともっと…自立できればきっと……
『私…このドラマ頑張るね!楽しみにしててね!』
母「うん、頑張ってね。ドラマ楽しみにしているわ。ドラマ決まったお祝いに
『ゆうくんとご飯!行きたい!』
母は笑って頷く、久しぶりに親子2人で笑い合う。母とは、仕事上の立場や私が一人暮らししていることもあって会話の機会が減っていたからこうやって少しでも本音で話せたことを嬉しく思った。
だから、見逃してしまっていた。主演以外の出演者部分を私は家に帰ってから気づくことになる。
*凛月said
仕事が終わって、事務所の休憩スペースで仮眠をとっていると、パタパタと何かが走ってくる音がする。どうせ、俺には関係ないと思い壁を向くように寝返りを打つ。
あんず「凛月くーん!仕事だよ!仕事仕事!」
凛月「う〜…あんず?なに、俺いま寝てるんだけど〜…」
あんず「凛月くんにお仕事の話があるんだけど!起きて!」
凛月「それは『Knights』のプロデューサーに話せばよくない…?なんで俺…?」
あんず「凛月くんのOKをもらってくるように先輩に頼まれたの!」
凛月「あ〜…?女王様が聞いてくるなんて珍しいな…う〜ん、なんの仕事なの?」
あんず「ドラマだよ!来年の春ドラマ!先輩が脚本を書いてて凛月くんがいいって」
珍しい…女王様が自分の脚本で、自分のユニットメンバーを指名するのは滅多にない話だ。現に、2年前のドラマをのぞいて女王様の脚本の作品に出演したESアイドルはみんなオーディションで選ばれたものや製作スタッフの推薦で出演している。
なんだか、嫌な予感がして横にしていた体を起こし、あんずを見る。あんずは頭に?を浮かべている。
凛月「誰が出るの?」
あんず「えッ…えっとぉ…」
凛月「見せて…企画書あるんじゃないの」
あんず「…えっと…」
焦っているあんずを無視して手に持っていた資料を奪い取る。そこには、主演のところに天崎 美羽子と書かれていた。
あんず「天崎さんが主演で…、先輩珍しく役者全員指名か候補あげしてて…かなり力を入れてるみたいで」
凛月「へ〜珍しい…うん、わかった。女王の命令は絶対だからね」
あんず「…!先輩喜ぶと思う!ありがとう!」
そういって、あんずは走り去っていってしまった。美羽子と久しぶりにメインの役どころで共演できることの喜びと、役者陣の名前に少し不穏な空気を感じた、歯車が少しズレていく感覚に俺はひどく頭を悩ませた。それでも、この仕事を受けないと俺はきっと後悔するから、そして受けた仕事はどんな状況でも完璧にこなす。オンオフを切り替えるのが上手いのが『Knights』っていう集団だしね。
俺の頭の中で女王様がニヤリと笑ってる気がして、今度会ったら文句を言おうと思いつつ、また仮眠を取ることにして体を横に倒すのだった。事務所に飾られていたカルミアの花がいい香りを放っていて俺の睡眠を促してくれる。
彼女とまたドラマができるなんて、神様からのプレゼント…だったらいいな…でも、希望であれ絶望であれ…絶対にこのチャンスを逃さないよ。俺は意地の悪い『吸血鬼』だからね
第十一話
凛月「共演できるなんて嬉しいなぁ♪」
【カルミア】
花言葉*優美な女性,大きな希望,野心
第二章 カルミア end.
……To be continued