第二章 カルミア
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『UNDEAD』のライブは大盛況のうちに幕を閉じた。私は、ファンの皆さんが退場するのを眺めつつ隣にいる凛月の服をガシリと掴んでいた。
凛月「あのさ、服がシワになるんだけど」
『……』
凛月「…美羽子?」
『……すごかったぁ!面白かった、初めてライブでこんなに興奮したよ!大神さんかっこよかった!ロック!って感じで、歌い上げるとお客さんがキャア!って歓声をあげて…羽風さんもウィンク一つで女の子をメロメロにして、アドニスさんは寡黙だけど歌うとみんなが聞き入ってるのがわかった!』
凛月「…兄者は?」
『朔間さん…は…』
凛月「わかってるでしょ。あれ、絶対に気づいてるよ。」
『…そう、だよね。やっぱり気づいてるよね』
凛月が言うには、真面目ぶってたけど意識はバリバリこっちに向いていて、私が他の人を見ている時もこちらを見ていることがあったらしい。
『朔間さん…かっこよかったなぁ…もっと早く見に来ればよかったって後悔しちゃった』
凛月「…そう……でも見に来れたじゃん」
『うん…』
私の目から涙がこぼれ出す。その時にはすでに、客席も関係者席もすっからかんになっていて私と凛月だけが座っていた。凛月は泣いている私に何も言わずに寄り添ってくれていた。
少しして、落ち着いてボーッと先ほどまで人がいっぱいいた会場を眺めていると、凛月が隣でサッと立ち上がる。もう退場の時間だ…。この素敵な空間ともお別れしなくてはいけない。
凛月「…ほら、行くよ」
『うん、ごめんなさい…凛月、付き合ってくれてありがとうね』
凛月「次は、もっとまともなデートのお誘いしてよね」
『デートのつもりはないんだけど…。』
会場を出て、2人向かい合えば凛月は「俺は楽屋に行くから」と先ほど向かった関係者口の方へと歩いて行った。私は、会場をあとにしてマネージャーが迎えに来ている駅の方へと歩いていった。
*凛月said
泣いていた美羽子が落ち着いてから、会場の外まで送ってから俺は楽屋口へと入る。人がいなくなってから楽屋に入るからか挨拶の人はおらずスムーズに案内される。そこには、開場前に話したコーギーだけでなく『UNDEAD』のメンバー全員が揃っていた。
俺が入ると、一番手前にいた薫さんが「あ…」と声をこぼし、みんながこちらを見る。
凛月「おつかれ〜、いいライブだったよ」
大神「あぁん?リッチー1人だけか?」
凛月「あの子は次の仕事があるから帰ったけど、楽しんでたよ」
乙狩「あの子…?もう1人いたのか…?」
凛月「うん、コーギーと共演してそのお礼でチケットくれたんでしょ?」
大神「まぁな、あいつのおかげで撮影がやりやすかったしお礼にな」
羽風「もしかして、女優の美羽子ちゃん?」
乙狩「あぁ…確かに、客席にいたな」
凛月「うん、コーギーのうちわぶん回してた」
羽風「え〜なんで晃牙くんなワケ?」
凛月「さぁね〜、でも大興奮してたから会場から出るの遅くなっちゃった」
乙狩「とにかく、楽しんでもらえたなら何よりだ」
すると、それまで何も言わなかった兄者がガタリと立ち上がりこちらに向かってくる。みんながシンっとしてその行動を見ていると、俺の目の前で止まり、俺と同じ赤い瞳を俺にぶつける。
零「あの子は、なんて…」
凛月「もっと早く見に来たかったってさ」
零「そうか…凛月、ゆっくりして行くが良かろ。我輩少し出てくる」
そう言って兄者は楽屋から出て行った。みんながそれを呆然と見つめて、バタンと扉が閉まった瞬間みんなが俺に詰め寄る。
羽風「あのさ、もしかしてだけど美羽子ちゃんと零くんって何かあったの?仲悪い…?」
大神「いや、見た感じ仲良かっただろ。2年前のドラマから結構仲良くしてるって聞いたぞ…」
乙狩「しかし、あんなに元気のない朔間さんも珍しい…何かあったのだろうか…」
凛月「…本人に聞けばいいんじゃないかなぁ?俺は知らない、誘われてきただけだし
とにかく、挨拶はしとかないとって思って、あと美羽子がすごい楽しんでたよって報告しとくね。じゃあね〜♪」
大神「おい、リッチ〜!」
コーギーが止めるのを無視して、俺は『UNDEAD』の楽屋をあとにする。そのまま、廊下を歩いていると横から腕を引かれる。よろけるのをなんとか止まって、顔を上げるとそこには兄者がいた。
凛月「…なに」
零「あの子は元気かえ」
凛月「顔見たでしょ…」
零「仲良しなんじゃな…」
凛月「まぁ…共演とか多いし、『Knights』とも仲良いから…」
零「そうか…こんなこと聞くのもなんじゃが、凛月はあの子のこと…」
凛月「好きだよ。ただあんたのお下がりが欲しいわけじゃなくて、あのドラマの時から俺は美羽子が好き。」
兄者は驚いた顔をして俺の顔を凝視する。何その顔…、明らかに未練がありますって顔に書いてあるんだよ…。でも、俺はもう容赦しないよ。また美羽子をあんたに渡すわけないでしょ、例え2人とも未練タラタラだとしても…、あの子はあの子なりに立ち直ろうとしてるんだから…。
凛月「…未練タラタラって顔に書いてあるけど、気持ち悪いよ」
零「…相変わらずあたりが強いのう…」
凛月「あんたがどういう判断しようと、俺は諦めないから悪いけど」
俺は言い切って、兄者から離れる。今度こそ会場から出るために歩を進める。今の会話で兄者がどういう風に思っているかなんて知らないけど、2人が付き合っている時から我慢してたんだ。2人には悪いけど、別れるって聞いた時チャンスが巡ってきたんだって思ったんだ…。やっと、彼女を……美羽子を手に入れることができるって…。悲しむ彼女につけこむのはって思ったけど、兄者から電話がかかってきて理由ができた。
そして、いいタイミングで彼女に電話ができた。だから、ずっと思ってた神様がこの恋を許してくれているんだと…。
だから、俺は兄者とは違う。隠れて、制限をかけて幸せを育もうなんて思わない。バレても、逃げも隠れもしない…
だって、『騎士』と『天使様』なんて最高の組み合わせでしょーー?
第十話
凛月「俺はあんたと違うんだよ」
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