第二章 カルミア
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あのあと、家に着いてからも幸せな気持ちのままベッドに入って眠りについた。
凛月に告白されたことは、もちろん驚いたけれどそれは少し頭の片隅に置いておいて…。『Knights』のみなさんを含め、ESに所属しているアイドルの方と仕事関係なくお話しできたのが面白かった。特に、学院時代一緒だったというわけではない私にも気さくに話しかけてもらえて会場で浮くこともなく過ごせた。それもこれも全部凛月のおかげだ、傍でいろんなところに連れて行ってくれたおかげだ。
そして、次の日ベッドから起き上がると朝日が部屋を照らしていた。「あぁ…寝れたんだ」ってぼんやりと思いながらベッドから降りる。ペタペタとフローリングが鳴く音を聞きながらリビングに行って朝ごはんを作る。
それを食べて、着替えればマネージャーから連絡が来て今日も今日とて仕事に行くために家を後にした。
マネ「おはよう、昨日はどうだった?」
『楽しかったよ。瀬名さんもプレゼント喜んでくれたし、あ…あとずっと会いたかった人に会えた』
マネ「まさか…朔間零と会ったんじゃないでしょうね?」
『え…?あぁ…そういえばいなかったな朔間さん…』
すっかり忘れていたが、朔間さんもESのアイドルで誕生日当日にも関わらず…会場にすらいなかったな、と思い出す。『Knights』の絆を見ていて、彼のことを思い出したけどそれよりも幸せそうに笑う凛月の方が鮮明に私の頭に残っている。
マネ「居なかったの?じゃあ、会いたかった人って?」
『月永さん!脚本家の!』
マネ「あぁ…あんたの好きな脚本家ね」
『美人だった!それに良い人!なんで、あれで顔を公表しないのか謎すぎて…』
マネ「ヘぇ〜…そりゃあ相当な美人なのね」
『だからそうだって…』
マネ「あんたがそんな年相応に興奮するなんて、珍しいし本当なんだなって思うわ」
『…正直すぎたかな…』
マネ「い〜や、良いと思うわ。それにあんたが喜びそうな仕事取れそうだから仕事終わったら事務所だね」
『…?うん、?わかった』
マネージャーはそう言いながら笑うと現場へと車を走らせた。それにしても、月永さん本当に良い人だったな。どこか見透かした感じは凛月に似ている気もしたけど、『Knights』の皆さんがあんなに笑顔に
なるのも頷けるほどに、綺麗に笑って人を惹きつける。それこそ、アイドルや女優をやっても良いほどに不思議な力を持っている人だった。また会いたいな…
マネ「そういえば、これ先日お世話になった大神さんから事務所に届いてたよ」
『大神さん…?なんだろ…』
マネージャーが差し出した封筒には、『大神晃牙』と大神さんらしい荒々しい文字で書かれていた。中には、先日の撮影のお礼とチケットが2枚入っていた。私は、思わず目を見開く。あぁ…忘れようとしてたのに、ただのファンになってしまおうと思ったのに、それでもチケットに映る彼の瞳が私を捉えて離さなかった。
『UNDEAD』のライブチケットだ…。
『ライブチケット…もらった…どうしよう。行っていいのかな…』
マネ「…まぁ、朔間さんじゃなくて大神さんからもらったものでしょ?関係者席だろうし、いいんじゃない…?っていうか、行きたいんでしょ」
『…へ…そ、そんなことは…』
マネ「顔に書いてあるわよ、行きたいって」
『……ずっと、行けなかったから…見たいけど…』
マネ「…行ってきなさいよ。」
『いいの…?』
マネ「正直、申し訳ないと思ってるのよ。『天使様』なんて言われ続けてそれを一生懸命守って事務所に貢献し続けてくれていた貴女の恋愛の自由を奪ってしまったことをね」
マネージャーはそれ以上語ることなく、真っ直ぐ前を見た。その目はどこか潤んでいて、それ以上何かを聞くことはできなかった。
私は片手に握ったチケットをただ見つめる。初めて見れる。ずっとずっと見てみたかった、彼のライブする姿を、彼が歌う姿を、彼が踊る姿を……『アイドル』の彼を……。
罪悪感はあるけれど、行ってもいいと言うなら…行きたい…。
『行きたい…。『UNDEAD』のライブに私…行きたいよ…ちゃんと、ファンになりたい。ただのファンになりたいの…』
私は、現場に向かう車の中で何かを許された気がして肩がスッと楽になった気がした。しかし、チケットが二枚あることを思い出す、誰か誘わなければならない…。と思い携帯を開くが連絡先を交換しているプライベートな友人は限られている。加えて、朔間さんとのことを理解している人なんて0に等しいので誘いにくい。だから…、人を選ばないといけない…。頭をよぎったのは、残酷にも思えるが『彼』だけだった。
『
おはようございます。
昨日は、ありがとうございました。本当に楽しい時間でした。
突然ですが、先日共演した大神さんから『UNDEAD』のライブチケットを貰ったのですが、一緒に観に行きませんか。
事情を知っている凛月と一緒に行けると嬉しいのですが、もちろん無理にとは言いません。
お返事待っています
天崎 美羽子』
愛想のない用件だけの文章のメールを送って、携帯を閉じようとするとすぐに携帯がメールの受信音を鳴らす。開くと、先ほどメールした凛月からだった。
凛月「
初デートが兄者のライブって喧嘩売ってるの?」
『デート、って…』
マネ「スキャンダル、はやめてよ〜?」
『いや、これは…!凛月がふざけて…』
マネージャーが「凛月?」と頭をかしげるが、私はそれを気にせず凛月に返信する。
『
デートじゃないよ。お誘いだよ…。
嫌ならいいよ…別の人誘うから…。』
凛月「
嫌とは言ってない。
行くから、日付と時間送っといて」
驚く速さで返信が来て、私は呆然とその文面を見つめる。ッハとして、ライブの日時を送れば「了解」と黒猫のスタンプが返ってきた。なんだか、凛月に似ていて彼がそう言っている絵面が見えてクスリと笑う。すると、現場についたのか車が止まってドアが開く。
マネ「あんたねぇ…交友関係はとやかく言わないけど、お願いだから心労を増やさないでよね」
『大丈夫だよ。凛月は友達だから…!』
私は車から降りて、現場に向かって歩き出す。マネージャーは荷物を持ってその後についてくる。何か言った気がしたけど、私の耳に届くことはなかった。
第七話
マネ「あんた、今までにないくらい幸せそうに笑ってたけど」
→