第二章 カルミア
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会場に戻ると、焦った顔をした立花さんが寄ってきてボディチェックをするかのように私に触れて「怪我ないですか⁉︎」と大きな声を出して顔を寄せる。
『大丈夫です…すみません…初めてきて知らない人ばかりで少し人見知りを…』
あんず「そうだったんですね!よかったぁ…誘拐でもされたらどうしようかと思いました…。」
凛月「大丈夫だったでしょ?あんずは心配しすぎだよ。」
あんず「私にも立場があるんです!何かあったら、私に相談してくださいね!」
凛月「大丈夫だよ。もう、俺がついてるからあんずより俺の方が相談しやすいよね?美羽子」
『えっ⁉︎あ…あのその…』
凛月さんの急なフリにたじろいでいると、立花さんが凛月さんに注意する。でも、凛月さんは注意されてるにも関わらず嬉しそうに笑っていた。
そして、飽きてきたのか話している立花さんを振り切って私と一緒に主役である瀬名さんの元へと歩いていく。立花さんに会釈して凛月さんに引かれるがままについていく。瀬名さんはこっちに気づき、少し不機嫌な表情をする。
瀬名「ちょっとぉ〜、来たならまず主役に挨拶でしょ?」
『ひぇっ…すみません、瀬名さん。お誕生日おめでとうございます。それとこれ…』
瀬名「あ…俺の好きな店だ。中身見ていい?」
『はい…気に入ってもらえればいいんですけど…』
瀬名さんは机に紙袋を置いて丁寧に袋を開けていく。開けて出てきたネックレスに「へ〜」と声をもらして、自分に合わせて「どう?」と私に見せる。
『似合ってます、とっても』
瀬名「俺だしねぇ〜当然でしょ…?まぁ、ありがとうございます。天崎さん♪」
『あ…敬語じゃなくてもいいですよ。同い年ですし』
瀬名「…そう?じゃ遠慮なく、ありがとう〜」
瀬名さんは気に入ってくれたみたいで、あげたネックレスをまた大事にしまっていく。一安心すると、凛月さんが私の頭を肘置きにして瀬名さんに話しかける。
凛月「俺が美羽子に助言してあげたんだよ〜セッちゃん、俺にも感謝して?」
瀬名「はいはい、ど〜も」
『ふふっ、お二人は仲良しさんなんですね♪』
瀬名「…別に、腐れ縁でしょ」
凛月「そうだよ。だって、俺とセッちゃんはお友達だからね♪」
瀬名「ていうか、天崎さんも俺にはタメ口でいいよ。なんか、片方が敬語って気持ち悪いし…」
『えっ…あぁ…そうですね!タメ口で…いき…ま…す…』
癖で出てしまう敬語にだんだん声が小さくなってしまうと、不機嫌顔の瀬名さんが「ふふっ」と笑い始める。凛月さんも嬉しそうに笑う。私はバカにされている気がして目を逸らすと2人して謝る。
瀬名「ごめんごめん、慣れてくれればでいいよ。癖って抜けないしね。くまくんにさえ、敬語なのに俺が先にタメ口なんて厳しいよね。」
『すみません…つい…』
凛月「じゃあ、俺にタメ口きいてよ」
『え…そんな…』
凛月「あと、凛月さんっていうのもやめて?」
『えぇ…』
瀬名「ちょっと、くまくん。脅さないの」
戸惑っていると、見兼ねた瀬名さんが止めてくれる。私は瀬名さんの後ろに隠れるように凛月さんを睨むと、凛月さんが笑う。
凛月「うそうそ、俺も慣れたらでいいよ。美羽子」
『…凛月は、意地悪です…』
凛月「…っ!うん、意地悪してごめんね」
瀬名「ちょっとぉ!俺を挟んでいちゃつかないで!どいたどいた!」
瀬名さんは少し怒って私たちから離れていく、けど一度振り返って「プレゼント、ありがと…」と紙袋を揺らして去っていった。凛月は隣に立って、去っていった瀬名さんの後ろ姿を見て笑う。
『…なんで笑うんですか…』
凛月「あれ、結構喜んでるよ」
『え…そうなんですか…⁉︎そんな風には』
凛月「セッちゃんはツンデレさんなの」
『ツンデレ……なるほど…』
去っていった瀬名さんはまた『Knights』のリーダーである月永さんに絡まれていて、嫌がっていたが楽しそうに笑っている様子を微笑ましく見ているとまた腕を引かれる。
『あ…どこに…』
凛月「お腹空いてない?ケーキ食べよ。ここのケーキ、エッちゃん御用達のお店からきてるから美味しいよ」
『エッちゃん…?』
凛月「天祥院英智、っていったらわかる?」
『あ…はい、存じています…。』
凛月「ここはエッちゃんのおかげで警備も厳しいし、あんまり他の目を気にしないでいいよ。気楽に過ごして、せっかくのセッちゃんの誕生日会だし、いっぱい笑顔になって帰ろう?」
『あ…。うん!』
私の手を引いて、歩く凛月は後ろを振り返って笑う。幸せそうな笑顔で笑う彼は『アイドル』そのものだったけど、その笑顔をもし…もし…私が作っているのなら、なんだか嬉しくて私も笑顔になっていた。
そのあとは凛月に連れられるがままに共演したことのある方々に挨拶をしたり、『Knights』の皆さんのお話に混ぜてもらったりして楽しい時間を過ごした。
時間も遅くなったから、と凛月さんが送ってくれることを申し出てくれるが、私は「下にタクシーを呼ぶので大丈夫です。」と断る。すると、恐れ多くも『Knights』の皆さんが下まで送ってくれることになってみんなでエレベーターに乗り込む。
凛月「美羽子、今日は楽しかった?」
『はい!楽しかったです!共演者の方のパーティーは何度か参加したことあるんですけど…なんだか学生気分になってはしゃいでしまいました!』
瀬名「ちょっとぉ〜?俺の誕生日会なんだけど」
『あっ…すみません。』
鳴上「あらヤダ!泉ちゃんは怒ってるわけじゃないのよォ!喜んでるの!」
朱桜「そうです、瀬名先輩は照れ屋さんなので照れ隠しですよ」
『そうなんですか…?』
瀬名「そんなわけ…っ!あぁ〜チョ〜うざぁい!」
月永「気にしなくていいぞ!セナはきてくれて嬉しいと思ってるから!」
凛月「そういうこと♪」
顔が少し赤くなっている瀬名さんをみんなして笑う。どうやら、本当に怒っている訳ではないらしい。本当に、『Knights』の皆さんは仲が良いんだなと思うと微笑ましく思った。きっと、彼らが築いてきた絆は何よりも強く深い…。だから、こうやってふざけて言い合って笑い合える。なんとも羨ましい関係だった…そりゃ、こんな関係の人たちと別れてまで私を選んだりできないですよね…朔間さん…
そんなことを考えてると、エレベーターが開いて凛月さんが手を差し出す。
凛月「お手をどうぞ、お姫様」
『えっ…』
月永「おぉ!面白いな!お手をどうぞ!」
鳴上「あら、エスコートなら負けないわァ♪美羽子ちゃん、お手をどうぞ!」
朱桜「私も負けられませんね!お手をどうぞ”princess”」
瀬名「…お手をどうぞ」
なぜか、エレベーターを降りると『Knights』の皆さんが手を差し出す。私は、驚き固まっていると瀬名さんが「腰痛めるんですけどぉ〜」ともらして、私は慌てて凛月の手を取る。顔を上げた凛月は嬉しそうに「当然♪」と私の手を引いた。ズンズンとタクシーのある方へと足を進める。
凛月「今日はさ、『アイツ』のことは忘れて、楽しかったことだけ思い出して?笑って帰ってよ。そしたら、ここにいるみんなが笑うから…約束して?今日は笑って…悲しい顔をしないで」
『…え…あ…』
凛月「じゃあ、気をつけてね」
凛月は言いたいことだけ言って私をタクシーに押し込める。私は、精一杯の笑顔と声で『Knights』の皆さんに伝える。
『今日はありがとうございました!楽しかったです!本当に!また次の現場で…!おやすみなさい!』
月永「あぁ!おやすみ!良い夢みろよ〜!」
鳴上「おやすみなさい♪アタシも楽しかったわァ」
朱桜「今日はありがとうございました!またよろしくお願いします!」
瀬名「プレゼントありがとねぇ、大事にする。おやすみ」
凛月「おやすみっ♪帰ったら早く寝るんだよ?」
そう言って凛月は私の頭をひと撫でして運転手に「いってください」と伝える。私は出発したタクシーのなかで1人撫でられた頭を抑える。到着するまでにこの温もりが消えないように…
第六話
『なんでだろう…幸せだ…』
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