第二章 カルミア
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*美羽子said
初めて見た凛月さんの幸せそうな顔を目の当たりにして私は逃げるかのように、会場を後にした。同じフロアにある休憩できるようなスペースに逃げ込み。隅っこにある椅子に腰掛ける。
何か持って来ればよかった、お腹の虫と戦っていると目の前に小さなケーキが三つほど乗ったお皿を前に出される。
バッと上を見上げるとクリームまみれの女性が、立っていてあまりの衝撃にビクリと肩がゆれる。
『あっ…あの…その…』
「あっ…先にお皿受け取ってもらっていいですか…顔ふくんで」
『はい…えっと、これ』
「一緒に食べましょう!私も仕事前に何か食べたくて!」
『だったら…全部どうぞ…』
どうぞ、というと同時に私のお腹が鳴き声をあげた。女性はふふ、と笑った後クリームを持ってきたタオルで拭う。そして、クリームがなくなって現れた顔は先ほど『Knights』のみなさんとお話ししていた女性だった。
「いいんですよ、一緒に食べたほうが幸せでしょ?」
『ありがとうございます…』
「天崎さんとは実はずっとお話ししてみたかったんです」
『そんな私なんて……え?何かでお会いしたことが…?』
「いえ、直接お会いしたことないんです。でも会いたかったんです、2年前から」
『2年前…?』
私は2年前の記憶を振り返る。2年前…賞を取ったドラマとか、人気ワードに入った映画の話かな…?どれのことだろうと、頭を巡らせていると女性は「あぁ!」と声をあげる。私はそれに驚いて、彼女の顔を見つめる。
「ごめんなさい!私自己紹介してなかった…。えっと、『Knights』専属プロデューサーの月永です。初めまして、普段はプロデューサーをしつつ、作曲家と脚本家とか…いろいろやってます」
『月永さん…あっ!まさか脚本家の…!』
「はい〜、月永さんです♪」
その名前を聞いて思い出したのは、朔間さんと初めて出会ったドラマの脚本家さんの名前だった。ずっと、会いたいと思っていたけど会う機会はなくて、ファンになってしまって月永さんの書いた作品はプライベートで見に行くほどだった。初めて会った月永さんがまさか『Knights』の一員だったなんて…あれ、月永って…
『あの…失礼ですが…月永…えっと、月永レオさんとはどう言った…』
「あぁ…旦那です。一応。」
『一応…』
「あれでも、アイドルなので公表したけど私からは言わないようにしてるんです。何かと面倒なので」
『すみません…!そうとは知らず!』
「いいんですよ!気にしないで…それより、天崎さんの話しませんか?」
『私の…ですか…?』
そう言って、月永さんは私の隣に座る。完全にクリームがなくなった顔は、誰が見ても美人だというほどに整った顔をしていた。旦那さんである月永さんと並べば美男美女夫婦といって過言ではない。確か、月永さんは去年結婚を公表して奥さんの意向で顔まで出さなかったけど、結婚してることはみんながみんな知っている事実だ。なんとなく勿体無いなぁ…なんて思いながら見ていると、月永さんがケーキをひとつ取って私の口に押し付ける。私は無意識に口を開いてパクリとケーキを口に入れる。
「さっき、悲しそうな顔してたからつい追いかけてきちゃって…何かありました?」
『…ごめんなさい。お祝いの席なのに…気を遣わせてしまって』
「…気は遣ってないですよ…?ただ、気になって」
『そんな私なんて…』
「それやめませんか…?私なんてって言わないでください…」
『ごめんなさい…』
「ごめんなさいも…やめましょう?私天崎さんと仲良くなりたいんです!ミーハーだと思われたらアレなんですけど…私天崎さんのファンなんです!2年前のあのドラマの時から応援してて、賞取った時は家で旦那に「うるさい!」って言われるくらい大騒ぎしました!」
『そんな…私も月永さんのファンで…その…うう…』
大好きな人にそんな風に褒められると思っていなくて、涙腺が緩んでしまった。月永さんは「うええっ⁉︎」と驚きながらもタオルで涙を拭ってくれた。けど、そのタオルにはクリームがついてて、私の顔にもクリームがついてしまう。月永さんがそれを見てアワアワしてる様子を見てクスクスと笑う。
「よかった…。笑ってくれましたね。嬉しい♪」
『あの…ありがとうございます。私も、月永さんのファンなんです…。舞台も映画も…、ドラマも見てました。どれも面白くて…大好きです』
言いたいことを伝えると月永さんが嬉しそうに笑う。なんだか、この人の前だと自然と口が動いてしまう。言わないつもりが、つい言葉が先行してしまう。不思議な人、それとどこか凛月さんみたいな感じがして接しやすく感じた。
「よかったら、友達になりませんか?同い年でこんなにすごい人がいるのって嬉しくて…」
『同い年なんですかっ⁉︎』
「…はい、私は凛月と同い年ですよ」
『驚きました…。同い年で…あんな脚本を…』
「だから!友達になりましょう!敬語はなしで!」
『あ…はい…えっと…うん。』
月永さんは私の手を取って笑った。その笑顔があまりにも綺麗でついつられて私も笑う。さっき『Knights』の皆さんやそれを見ていた立花さんが笑ってしまうのも理解できるほど、彼女は綺麗に笑うしそれが伝染してしまう不思議な力を持っていると感じた。
彼女に話してしまえば、楽になると感じたのか…私の口は彼女に今の思いを話始めた…
第四話
『実は…』
→