第二章 カルミア
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凛月さんと一緒に初めてESビルに降り立つ。凛月さんは慣れたようにビルに入り、私はそれに慌ててついていく。エレベーターがやってきてそれにふたり乗り込む。
そういえば、凛月さんは最近よく共演するのもあるがよく現場で会うようになった。朔間さんと付き合ってから別れるまでを全て知っている人だから、私がおかしくならないように朔間さんに言われて見守ってくれているのだと思うとなんだか二人に申し訳なく思う。
『凛月さん、私もう大丈夫です』
凛月「大丈夫…?なんの話?」
『私もう…朔間さん…零さんのただのファンになります。』
凛月「なんの話…?いや、ファンでいることは別にいいけど」
『凛月さんは朔間さんにお願いされて私のこと守ってくれてたんですよね…?』
凛月「…はぁ?」
凛月さんは、いつもの甘い声を急に氷点下のように凍った声になってビクリと肩が揺れる。徐々に私に近づいてきて私はそれに合わせて後ずさる。しかし、狭いエレベーターの中だから限界はすぐ訪れた。ドンッと壁に片手をつかれて、壁ドンだと怯えながらにふと思う。
凛月「俺が、兄者のためにあんたの傍にいたって言いたいの…?」
『そうじゃないと、凛月さんが…あなたがそばにいる理由がわからない…』
凛月「……そう。」
エレベーターが到着したことを告げる音が鳴り、凛月さんは私から離れてエレベーターを降りる。私はそれを唖然と見つめ、エレベーターが閉まる前にその後をついていく。
何か、間違えたことをしてしまったのか。わからない、けど答えを聞こうにも凛月さんが「話しかけないで」と背中で語りかけていて私はただ彼の背中を見つめ追いかけることしかできなかった。
すると、会場であろう部屋から一人の女性が出てくる。栗色の長い髪に紺色のスーツをビシッと着ている人だった。
あんず「凛月くん!お帰りなさい!準備できてるよ!」
凛月「あんずだ、お疲れ〜♪」
あんず「…!天崎美羽子さんですよね!ようこそ!私、ESの『P機関』に所属している立花あんずです!」
『立花さん…初めまして、天崎美羽子です。』
あんず「…?大丈夫ですか?お疲れですか…?」
『い…いえ、初めてくるもので…緊張しちゃって…』
凛月「あんず〜、その子案内してあげて」
あんず「…?、はい!」
凛月さんは立花さんに私を預けて、会場の中に消えていった。今まで明確に突き放すことはなかったので、ビックリしてしまう。けれど、それでいいんだ。仲良くなりすぎて今度は凛月さんに迷惑をかけてしまうからこのまま共演者という距離を確実に保っていかないといけない。もう、これ以上迷惑をかけたらいけない…でも、なぜか凛月さんに突き放されてしまって少し…というかかなり寂しいと感じている自分がいた。
あんず「天崎さん、大丈夫ですか?」
『あ…はい!ごめんなさい。少しボーッとしちゃって、瀬名さんにとりあえずお会いしたいのですが…』
あんず「はい!ご案内しますね……あぁ、今は邪魔しないほうがいいかもです。」
『…?』
あんずさんが指差すほうには凛月さんも加わって『Knights』全員で話しているところであった。そこには、見たことない女性が一人加わっていて、主役である瀬名さんも、先ほどまで一緒だった凛月さんも、他のメンバーの皆さんも幸せそうに笑っていた。
その女性は、女優である私より綺麗で皆さんと並んでも見劣りしない容姿、スタイルも抜群だ…。
『あれは…?』
あんず「あの方も『Knights』の方です!皆さん高校からの仲なんです」
『なるほど…』
初めて見た凛月さんの幸せそうな顔だった。いつも、私といる時は悲しそうだったり苦しそうだったり、そんな表情が多かった。もちろん、楽しそうな顔だって見たことある。けど、初めて見る顔だ…凛月さんあんな表情ができるんだって遠目に見ていて感じた。
*凛月said
あんなことを言われるなんて心外だ。俺はただ、美羽子自身が心配で俺の意志で近くにいたんだ。なのに『兄者』のお願いで俺がいたなんて鈍いを通り越して腹がたつ。
偶然出てきたあんずに美羽子を預けて、俺は先に会場に入る。そこには予定があったESのアイドルがいて、中央には本日の主役であるセッちゃんがいた。周りには守沢さんと薫さんがいて、俺もその側にいって薫さんに話しかける。
凛月「薫さん、兄者はいないの?」
羽風「零くん?今日はお仕事♪夜だからねぇ…今のうちに働いてもらわないとっ♪だから、零くんの誕生日は俺と一緒に明日お祝いの予定だよ」
凛月「そう…ならいいや」
羽風「なになに?お兄ちゃんについに会いたくなったっ?」
凛月「……いくら薫さんでも怒るよ?」
羽風「おぉ…怖い怖い…!もりっち〜!いこいこ!美味しいもの食べよ〜」
守沢「あぁ!そうだな!」
薫さんは、守沢さんを連れてセッちゃんから離れていった。逃げたなと思いつつも、今日は兄者がいないということに安心する。…確かに、俺が兄者から美羽子のこと守っているのは確かだけど、それは兄者のためでも美羽子のためでもなくて…俺のためなんだけどね。なんて思いながら、薫さんたちが去っていた方を見ていると、隣にフリーになったセッちゃんが立つ。
瀬名「男の嫉妬は見苦しいよぉ〜」
凛月「俺は別に薫さんのこと、そういう意味で好きじゃないけど」
瀬名「そんなのわかってるよ。ただ天崎さんに朔間を会わせたくなかったんでしょ」
凛月「俺も朔間だけど」
瀬名「…ハァ〜、馬鹿だねぇ。くまくんは」
凛月「…うるさいなぁ」
セッちゃんは、わかったような口を聞いてから俺の頭を乱暴に撫でる。俺はその手を払ってそっぽを向くけど、その反対側からセッちゃんのクスクスと笑う声が聞こえた。ちょっとムカつくけど…でも居心地が悪くなることはなかった。
第二話
凛月「…とりあえず、あの子が素直に楽しめそうならそれでよかった」
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