追憶*壊れたオルゴール
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中庭の低木へ倒れ込んでしまった私は、地面に打ち付けられた痛みに目をつぶるとその痛みはいつまでもこずむしろ柔らかい感覚に身を包まれた。
『イタタ……柔らかい…?』
凛月「痛いのは俺の方なんだけどぉ…?うう〜…安眠妨害ぃ…」
『凛月…?』
凛月「てか、男の上に乗っかってくるなんて…女王様、だいた〜んっ♪」
『うあぁっ、ごめん!重かったよね⁉︎』
凛月「ん〜しょっ、…大丈夫だよぉ、女王様は軽い軽い…ふあぁ、ふ♪」
そこにいたのは先ほど別れた人物と同じ黒髪と赤い目を持った…朔間凛月その人だった。
凛月は自分と一緒に私を起こして少し話すと私の首元をスンスンと嗅いで少し怒った顔でこちらを見直した。
凛月「…誰といたの」
『へ…?』
凛月「兄者の匂いがする…一緒にいたんでしょ?兄者………”朔間零”と」
『……Oh…』
凛月「ダメ、こればっかりは誤魔化されてあげない…。あの人と知り合いだったんだね…」
『……うん、今年のはじめくらいから知り合いだった…、
凛月が朔間さんの弟だっていうのも知ってた。…でも凛月は凛月だと思ってるし、朔間さんは朔間さん…でしょ?』
凛月「じゃあなんで…初めましてなんて…知ってたくせに」
『だって”朔間凛月”に会うのは初めてだったし…、』
すると凛月は、怒っていた顔から一変微笑んで私の頭を撫で始めた。私はその珍しい表情に固まってついされるがままに撫でられていた。
凛月「紡は本当にいい子だね…王さまの言ってた通りだ…
俺をちゃんと”朔間凛月”として見てくれるんだね…?”朔間零の弟”じゃなくて…それだけで嬉しい…
紡と初めて会った時から、ずっと思ってた。この居心地の良さの理由…知りたかったんだけどわかった気がするなぁ〜…」
『私は、凛月の全てをわかるわけじゃない…けど、人と比べられる苦しさは理解できる…
それが全てじゃないけど、嫌なんでしょ?朔間さんと比べられるのが…重ね合わせられるのが…。私も嫌だった、ずっと……』
凛月「紡…?」
ずっと思っていたことだった。小さい頃から、作曲をし始めた時はただ楽しさでやっていた。父はそれから幼馴染である私とレオの曲をコンテストに出すようになってしまった。競争させるつもりはなかっただろうけど、それには必ず勝敗がつくものだった。私の曲はいつも二番目だった。
それでも曲を書き続けられたのはレオが負けるたびに「今回も紡の曲は最高だったな!」といつも本音で褒めてくれるからだった。
私はレオという太陽のもとで生活しているつもりだった。高校に入ってから別々になることが多く、アイドルの活動をするようになってレオの代わりに作曲を請け負うことがたまにあった。その度に褒めてくれる人もいれば「月永くんなら…」と比べる人もいた…。私は気づけば太陽のもとで生活しずらい体になっていた。
『ずっと太陽の隣にいれると思ってたけど、私はすっかり月の下でしか生きられない。今だって、放課後だけだから…』
凛月「…紡?なんの話を…」
『凛月もそう思わない…?輝く人は眩しい…それが破滅に向かって行っても太陽と月じゃ正反対だから…何もしてあげられない』
凛月「…紡は王さまの太陽だと思うけど…」
凛月は悲しそうな目で私を見る。先ほどまで怒っていたのが嘘のように私の目をじっと見つめている。
私は凛月の言葉に胸が暖かくなって行くのを感じた。
『凛月は、私のことが太陽に見えるの?ふふ…嬉しいなぁ…
でも、私はこのままでいい…今が一番幸せ。レオがいて泉がいて…音楽科の友達もアイドル科の友達もいる…。『Knights』がいて、『Knights』を応援してくれるファンがいる…。
もちろん、一緒に月の下で過ごしてくれる友達がいるから寂しくないよ…”凛月”っていうんだけど…?』
凛月「……そう…じゃあ女王様が寂しがるから一緒にいてあげるよ…俺は太陽は苦手だけど、月…夜であれば、一緒にいれるね…?」
『一緒にピアノでも弾いてゆっくり過ごそう…朝が来るのを待っていよう…?』
凛月「何それ…プロポーズ…?」
『違うよ…友達って意味だよ…?』
凛月はため息をついた。「もう…」と呟き私の膝に頭をのせる真下にある凛月の顔を見る。
『なんで…そうなるの…?』
凛月「お友達でしょ〜?甘やかしてよ…
なんか、紡の話を聞いてたら、兄者のことど〜でもよくなったや。
俺も今のままでいい…紡が一緒にいてくれるならそれでいいや……すうすう♪」
『だからって…夕寝に付き合うとは言ってないんだけど…まぁいいや…』
凛月は静かに寝息をついて、私を1人置いて夢の国へ旅立ってしまった。……その柔らかい髪の毛を撫でながら朔間さんが言っていた言葉を思い出す。…この時間を守れるのならば、私に負の感情がいくら向こうとかまわない…
私は私の宝物を守りたい…そのためなら何も痛くないし怖くない…だから大丈夫だよ朔間さんーー…。
月の住人
『初めて月の世界の宝物』
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