追憶*壊れたオルゴール
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『”くまくん”…?』
凛月「あんた…だれぇ…?」
ここ最近の暑さを思えばたまにやってくる涼しい日。それが今日だった…木の下はいい日陰になって涼しい風が吹き抜けていく。そこには、どこか見たことのある黒髪が寝転がっていた。
きっと泉が言ってた”くまくん”とはこの人だろう。特徴が酷似しているので間違いない…。
『えっと…夜永紡です。一応、『Knights』の関係者…?みたいな…』
凛月「…なにそれぇ…だいたいあんた女の子だよねぇ〜…」
『音楽科の特待なの…だから放課後だけ出入りできるんだ…しらない?』
凛月「あぁ…聞いたことあるかも…で?なんで俺の安眠妨害するわけ…」
すると、”くまくん”はのっそりと起き上がってしゃがんだ私と同じ目線になる。その顔は怒っている…というよりは不機嫌と書いてあるような気がする。
私は軽く正座するように座って事情を話し出す。
『ごめんね?起こして、泉…瀬名泉に言われて探してたんだけど、今日は『Knights』のレッスンの日で、私が見にくるの珍しいから”くまくん”も呼んでこいって…』
凛月「あ〜…なるほどねぇ…セッちゃんか。それで?なんであんたがいるの珍しいの…?」
『私、音楽科の仕事で他のユニットと打ち合わせとか…そういうのでいない事が多くて…去年よりみんな真面目にユニット活動してるから…時間があっても足りなくて…だから、『Knights』のレッスンの日は確実にいれることなくて…えっと…”くまくん”が入ってはじめて時間取れたから…』
凛月「それやめない…?」
『え…?』
凛月「俺の名前”凛月”っていうの、凛々しい月って書いて凛月…」
『あぁ…やっぱりあなた”凛月”って言うのね…?そっか…ふふ…』
凛月「…なにその笑い」
『…うんん。なんでもないよ、よろしくね”凛月”』
やっぱり似ていると思って薄々勘づいてはいたのだが、朔間さんが言ってた弟さんにこんなところで会えるなんて思ってもみなかった。通りで名前が嫌いな”くまくん”って言われて疑問だったけど、その正体を見れば原因はなんとなく察しがつく。
天才の隣にいる苦しみは私もなんとなくわかるから、あまり触れないでいてあげよう。
『それで?練習は行かない?』
凛月「ん〜…気のりしないなぁ〜」
『じゃあ!やめよ!私もここにいていい?睡眠の邪魔はしないよ!たぶん!』
凛月「えぇ…たぶんなんだ…」
『静かにしてる…!と思う!』
凛月「なにそれ…っふふ♪まぁいいよ、静かにしてるなら」
凛月はそう言うとまた寝転がって寝直すようだ。木陰とはいえ、少し日が入ってきたのでカバンにしまったメモ帳とペンと一緒に日傘を出して凛月の顔が影になるように日傘をかけてやると「ラッキ〜♪」という声をもらすので、つい笑ってしまう。
なんだか…猫みたい…で面白い人だなと感じつつ、私も凛月の向かいから隣に座り直してメモ帳と向かい合った。
ーーーそれから少し経った頃
書き続けた詞を先日レオから追加でもらった曲のメロディーにのせていく
『〜♪〜♪〜♪』
凛月「それ…なんの曲?」
『え…なんの曲なんだろ…レオからもらったやつ…』
凛月「レオって…あぁ王さまね」
『そうそう…たぶん『Knights』の曲になるんじゃないかな?作った曲は学校の課題曲か学校外か『Knights』の曲だから…私に渡すってことは『Knights』の曲だと思う…』
凛月「思うって…なんか適当〜」
凛月はそう言うとボフっと芝生に沈んだ。適当もなにもその王さまが適当の権化なのだ。最近スランプ気味なんだとこぼしていると思えば、急に私の元へとやってきて、五線譜の書いた紙を渡して「詞を頼んだ!」とだけ伝えて去っていく。たまにちゃんとした楽譜ですらないときはそれを楽譜におこすところまでが仕事となることだってある…。だからたまに『Knights』の曲じゃないものも書いてしまう事もある。
そんな事を考えていると携帯が鳴り、私を呼ぶ。すぐに鳴りやまないあたり着信なのだろうけど、いったい…
『あっ…泉だ…どうしよ…っう〜〜…』
瀬名「”もしもしぃ?あんたどこにいるわけっ!せっかくあんたがくるからダンスから歌のレッスンに変えたのに!”」
『だってだって…凛月が行かないって…』
瀬名「”凛月って…くまくん見つけたのぉ?引きずってでも連れてこい…”」
『ええ〜無理ですよ。瀬名さんん…これでも私女の子であるからしてぇ〜〜』
瀬名「”変な喋り方して誤魔化さないでくれる?チョ〜うざぁい”」
凛月「もしもし?セッちゃん?もう10分くらいしたらいってあげる…だからもうちょっと王さまとまっててねぇ〜バイバ〜い♪」
瀬名「”はぁっ?ちょっ…くまk…”」
凛月は私から携帯を横取りして、そのまま通話を切ってしまう。私は身動きできず固まったまま凛月を見ている…すると固まったままの手に携帯を戻し凛月は私の膝の上に頭を置く。
その柔らかくも確かな重みに私は背筋が伸びるのを感じる。
『えっ…え⁉︎凛月さん!これはまずいですって!』
凛月「なんで急に敬語…?まぁいいけど、5分だけ…紡は静かでいいや♪小声とかなら喋っててもいいよ…声も嫌いじゃない…ふぁあ、ふ♪」
『え〜…あの〜…うそ、寝た…?』
凛月くんは膝の上で寝息をつきはじめ、私はポツンとひとりぼっちにされてしまった…。再びメモ帳を持つがこの状況で頭が混乱しすぎて何も考えられないようになってしまった…。
そうしてるうちに5分はあっという間にすぎていった。
凛月くんに時間がたった事を伝えると、ゆっくり膝から顔を上げて目をこすりながら立ち上がった。
凛月「じゃあ行こっか、女王様っ♪」
『えっ…うん…』
はじめまして、吸血鬼さん
『待って、足が痺れた…』
→