崖っぷち!続かない五線譜
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検査入院の三日間を終え、私はついに我が家へと帰宅した。
今更だが、我が家の主である父は有名なピアニストで母はフィレンツェの教会でオルガン弾きをしていた。とどのつまり、音楽一家だもんで…、家の中には何かしら音楽関連の品が多い…。おかげで今の私があるわけなのだが…
『かといって…BGMが常にかかってるわけじゃないんだけどねぇ…
ピアノ…弾けるかなぁ…』
地下にある楽器部屋にはピアノにギターに…様々な楽器がある。メンテナンスもしっかりしている…私の子供の頃からの遊び場だ。その中でも特に愛用しているのがホワイトのグランドピアノである。その前にたって”ド”の音を鳴らす。
聞き慣れた音階を徐々に鳴らしていく…。
『いい音…久しぶりの楽器…』
紡父「ここにいたのか…、やっぱり…というかなんていうか」
『お父さん…どしたの?』
紡父「何かあったわけじゃないよ…紡がどこにいるかな〜って」
『ふふっ♪じゃあ今お父さんは、暇してる?』
紡父「暇…ではないけど…、娘に使う時間は無駄とは思わないかな?」
父は私の前にゆっくりと近づいてきて私の頭を撫でる。
父も本当ならコンサートやその打ち合わせに追われてたりするが、こんなずっと家に止まっているのは珍しい。まぁ、私のためってことで勘違いしておこう。
紡父「紡ちゃんは、何かご依頼かな…?」
『…プロピアニストの曲聞きたいなぁ…』
紡父「…そ…それは、高くつくぞぉ…」
『…あっはは☆じゃあ前言撤回!パパの『ピアノ』聞かせて!』
紡父「紡のお願いなら…なんでも弾くよ」
なん年ぶりくらいにパパと呼んで抱きつくと父は嬉しそうに私の頭を撫でててから私の手を引きピアノの椅子に座る。
すると、私が小さい頃に大好きと言った父のピアノが流れてくる。
父のピアノが私の頭の中も、心も満たしてくれる有意義な時間だった。少しすれば、帰りの遅い2人を不思議に思った母がやってきて、母が父と同じ椅子に座り連弾の曲を弾いてくれる。
こうやって私たち家族の団欒の時間はゆっくりとピアノの曲と共に流れていった。
久しぶり実家で食べる母の手料理はそれはそれは体に染みるわたった…食卓は入院中の話やご近所さんの話で盛り上がっていたのだが、食事を終えてデザートのプリンを食べていると母が真横に座ってウキウキと話し出す
紡母「紡ちゃん!曲は…⁉︎どうなの⁉︎」
『え…試したないけど…』
紡母「嘘よ!パパが「紡はもう曲作ってる…顔してる…」って言ってたもの!」
『ふふっ…何それ…お父さんの真似…?』
母は父の真似をして自分の顎を撫でてこちらをチラリと見る。「真似?」と聞くと「似てるでしょ?」と母は無邪気に笑う
『でも、まさかバレてるなんて…』
紡母「あら!パパとママをなめないで頂戴!紡ちゃんをここまで立派に育てたのは誰だと思ってるの?」
『んふふ…間違えなく目の前のお母さんだね…』
紡母「そうよ♪それで?いつから書けるようになってたの?」
『ん〜、いつからかぁ…次の日には書けるようになってたかなぁ…?2日目の朝から外の音がやけに聞こえるようになってて…いい詞が浮かぶようになってたの…
お母さんに言われてあのオルゴールを久しぶりに聞いたら、いいメロディーが浮かぶようになってた…
でもペンを持つのが怖くて書けなかったんだけど…『Knights』のみんなが帰ってからは普通に書けるようになってた…。自分が一番ビックリしてたり?』
紡母「あらあら♪じゃあいつも通りね♪…ふふっ、やっぱりレオくんのおかげかしら?」
『お母さんはいつもそうやって…まぁいいや…』
返す言葉も見つからないので流すと母は「やっぱりね」という顔でニコニコとこちらを見続けてくるので居た堪れなくなり、食べ終わったプリンの容器をキッチンの流しに置いて先ほどの楽器部屋へと向かった。
『もう…お母さんは恋だの愛だの…そればっかり…』
好きとか愛してるとかは難しい…レオも私も小さい頃からお互い好きと言い合っていたし、レオは今でもいろんな人に「大好きだ」「愛してるよ☆」と言ってることだろう…それに含んだ意味はないと思うけど…
けど、お母さんの言う「好き」はお母さんがお父さんに向ける「好き」の話なんだと思う。その感情は、まだ理解できてない…今はこの状況が落ち着く。
両親とペットのいるこの家が、泉や凛月…『Knights』のいる学院が…レオが生きてるこの世界が私を満たしてくれる。
それだけで、十分だ…なんてもう十分欲張りなんだけどね…
そんな思いでピアノの前に座れば、いつも以上に音楽が私を満たしてくれた。
それを見守るようにあのオルゴールが私を見守ってくれていたーーー
愛しい時間を唄にする
『呪いじゃなくて…、あれはこの愛しさを曲にするための”魔法”』
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