崖っぷち!続かない五線譜
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* side
意識を失うように、紡は眠りへとおちていった。
それと同時に、紡がいる病室の扉をある人物が静かに開ける。その人物は、彼女にゆっくりと近づいて自分の荷物を椅子に置いてから、紡の頭を撫でる。
**「久しぶり…なんか前より細くなってないか…顔色も悪いし…まぁ人のこと言えたもんじゃないんだけどさ…」
彼はつぶやきながら彼女のベッドに腰掛ける。窓を背中にした彼を月明かりがうっすらと照らして綺麗なオレンジ色の髪の毛に特徴的なパーカーが見えてくる。
片手は紡の手を握り、もう片方の手で頭を撫で続ける。
**「倒れたって聞いて、心臓が止まるかと思ったぞ…急いで日本に帰って来たんだからな…
しかも、帰る飛行機で変な夢も見るし…、まったくなんてことしてくれるんだ。うちの女王様は…
騎士たちもお前がこんなになるまで放っておくなんて…って俺はアイツらのこと悪く言えないよな…お前を1番放ったらかしにしてるのは紛れもなく俺だしなぁ…」
彼はそう言って苦笑いし彼女を見つめる。月明かりに照らされた紡の顔は青白く、顔色がいいとはとてもじゃないが言えない。
しかし、その寝顔はまるで白雪姫が寝ている姿を形容する言葉がピタリとあうほどに美しい。
すると、寝ていると思った紡の瞼がゆっくりと開き、彼を見つめる。その目は完全には覚醒しておらず、どこか夢見心地といったような表情だった。
少年はまさか起きると思っていなかったようで驚いた顔で彼女を見る
**「起こしちゃったか…?悪い…」
『レ…オ…?レオ…!?』
月永「ぬぁっ!急に起き上がると体に悪いぞ…」
『本物…?なんで…?』
月永「妄想してみろ…!想像力を働かせて!俺は夢か現実か、自分で考えて!」
『…夢でも現実でもいいよ…レオだ…顔を見るのは…久しぶりだね』
紡は月明かりに照らされながら、綺麗に笑った。レオもそれにつられるように笑う。久しぶりの幼馴染との再会に2人とも笑い合っていた。
月永「あぁ!久しぶり、倒れたって聞いて心配したぞ…!無理は禁物だ!」
『レオが言うの…?無理は禁物だって』
月永「それはそれ!これはこれ!紡のことは心配!」
『私もレオのことは心配。最近は…?元気?何してるの…とか聞いてもいいのかな…』
月永「昨日まで海外にいた!みけじママが外に連れ出してくれて色んなところを回ってはたまに作曲の仕事を少しだけやってる!」
『作曲…してるの…?』
紡はレオが作曲をし始めていると言う事実を知った瞬間、だんだんと目が潤んでいき瞬きをすればダムが崩壊したように涙がボロボロと溢れていき2人の繋いだ手の上に落ちていく。
レオは紡の潤んだ瞳をボーッと見つめていたが、涙が手に落ちて初めて紡が泣いていることに気づいたような反応をする。勢いよく手を離す、あまりの勢いに紡は目を大きく開きレオを見る。大きく開かれた瞳からは止まることなく涙が溢れてゆく。
月永「わわわわ!な…泣くなよぉ…紡に泣かれると困るぞ…」
『だって…レオが作曲してるって…嬉しくて…レオの頭の中には音楽がまだ聞こえる…?』
泣きながら、紡はレオに問いかける。すると、レオは焦ったような顔から微笑み顔に代わり紡の目から落ちてきそうな涙を手で拭う
月永「まだ元通りとはいかないけどさ、でも海外ってすごくてさ!俺は俺と俺の周りしか見えてなかった!だから出て初めてわかったぞ…!世界は広い!紡にもいつか見せてやる!俺の傑作と一緒に!」
『…うん…いつか一緒に見てみたいな…』
月永「でも…まだ…学校には帰れそうにないや…行こうと思ってもさ、行こうとすると音楽が消えちゃうんだ。」
『大丈夫…待ってるよ。私も、泉も、…騎士達みんな王さまを待ってる。』
月永「あんまり期待するなよなぁ…勘違いが過ぎる王さまなんてさ」
『それでも、私の王さまはレオだけだよ?』
月永「ありがとう…いつかまたお前の最高の詞に見合う曲を書けるようになるから…」
そう言って潤んだ瞳のまま紡はレオに笑いかける。レオは少し悲しそうな顔をして紡の頭をゆっくりと撫でる。
レオの言葉に紡気まずそうに自らの手元を見る。手をモジモジとする。そんな様子をおかしく思ったのかレオは自分の不思議な話をし始める。
月永「俺さ、ここに来るまでに変な夢見たんだ…」
『変な夢…?』
月永「紡が、今みたいに顔色が悪くて…、心配でさ。そしたら、お前の心の声が聞こえるんだ『曲を書かないと』『書き続けないと』『完成させないと』ってさ。昔の俺みたいに歯車が狂ったような…そんな感じがして
そしたら、夢の中の俺もそう思ったのか…気づけばお前から音楽を奪ってた。お前は夢の中で絶望した表情をしてさ、その顔を見てから目が覚めたんだ。」
『そんな夢を…』
紡は再び驚いた表情をする。それもそのはずだった、彼女が見た夢と同じような内容を同じくらいの時間にレオも見ていたことを知ったからだ。
月永「その夢を見てから、ずっと気がかりでさ…俺、本当にお前の音楽を奪ってないよな…?」
『レオ…』
月永「俺、お前の作る歌も…詞も…大好きだ。奪いたくなんてない、俺がどうなってでもお前を…、お前の音楽も守りたい…」
『…あなたが奪ったのに…
何も聞こえなくなってしまって…、メロディーも詞も…、全部レオが奪った…でも嫌な気持ちはない。レオがかけた呪いなら私は喜んで受けよう…。だって、私は貴方を守れなかった騎士だから』
今度はレオが驚いた顔をする。紡の顔は夢と同じで絶望を感じるものの…、どこか安心させるような笑みをこぼしていた。
『レオは私にとって裸の王さまなんかじゃない、私が忠誠を誓った大事な王さまだ。貴方が裸なら…私が身を呈して隠してあげる…貴方が音楽を奏でられる空間を創造してあげる…』
月永「流石に女の子に裸を隠されるのは…」
『…もう!いい話だったのに!』
月永「あはは☆やっぱり紡の笑顔が一番霊感(インスピレーション)を刺激するな!」
『…もう、レオったら…ふふ…ふふふ…』
月永「お前のその笑顔が…表情が言動が…いつだって俺に霊感(インスピレーション)を与えてくれる…お前はすごいな!百面相のプロだ!」
『…そう言ってくれるのは、レオだけだよ…貶されてる気もするけど』
悲しそうな顔をする紡にレオはぎゅっと抱きしめる。
久しぶりに鼻をくすぐるレオの匂いに安心仕切ったように目を閉じる。紡の手もレオの背中に手を添わせる。
月永「ごめんな?俺のワガママでお前の大切なものを奪ってしまった。呪い…じゃなくて魔法のつもりだったんだけど…、?紡…?」
『すぅ…すぅ…』
月永「ありゃりゃ…寝たのか…全く困ったさんめ…」
レオは抱きしめていた彼女を離して、見ると紡は穏やかな顔で眠りについていた。先ほどより幾分か顔色が良くなった気がするが、その美しい寝顔には変わりない。
レオはゆっくり紡をベッドに寝かせ、再びベッドに腰掛ける。
月永「お前を俺と同じ状態にしてさ…、同じ気持ちを味あわせて、それでいて夢の中の俺は勝手にいいことしたつもりになってた。魔法をかけてお前を苦しめていたなんて…全く…悪い王さまだよな…、だから自分でかけた魔法は俺がちゃんと解かないとな…
って言っても解き方がわからないんだけどな!あはは☆
でもやっぱり魔法を解くのは、真実の愛のキスだよな!王道オブ王道!妄想するまでもない!俺の紡への愛は本物に違いないな!あははは☆
でも、勝手にしたら怒るよなぁ〜、知ったらセナとかもキレそう。あとリッツもお前のこと大好きだしなぁ〜
お前に嫌われたくないし、そんなことはしないよ。大丈夫!キス…はおでこでとどめといてやる!それで、真実の愛のキス代わりに…これをやる…じゃあな、俺のお姫さま」
彼は、彼女のおでこにキスを落としベッドに備え付けられた机に荷物から取り出したあるものを置いて、病室を去っていく。
彼の歩く先には彼より幾分か身長の高い男が彼を待っていた
月永「おお!ママだ〜☆案内してくれてありがと〜!」
三毛縞「お〜!レオさん☆女王さまとの逢瀬は終わったのか?」
月永「あはは☆逢瀬ってやらしい響きだな!うん!元気そうだった!よかったよかった!」
三毛縞「ああ!それなら安心だ☆紡さんもレオさんに会えて嬉しかっただろうな!」
月永「…だといいけど、まぁ…きっと大丈夫!だからまたアイツに詞を書いてもらえるように俺も頑張るよ!行こう!ママ☆」
そう言って2人は夜の闇に消えていったーーーーーーーーーー
夢の中の逢瀬
「この夢がアイツにとって幸せなものでありますように」
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