崖っぷち!続かない五線譜
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久しぶりに彼の夢を見た。
今は行き慣れたアイドル科の中庭…私と彼と…泉と…よく『Knights』として集まった場所…
2年生の制服姿で止まっている彼の姿をぼーっと見ていると彼はこちらを振り返ってニコリと笑った。
そのまま大きな口で話し出す。ここ最近の”聞こえない”というのが嘘のように彼の声は私の耳にスムーズに入ってきた。
**「紡!やっときたな!名曲ができたぞ!この曲に素晴らしい詞を付けれるのはお前しかいない!」
『レオ…声が大きいよ…聞こえてる…どんな曲なの?』
月永「俺の冴え渡る霊感(インスピレーション)が告げた『Knights』を勝たせ続ける曲だ…!…この曲で『Knights』はまた高みに…」
あの時のレオは曲を作るたびに完成した楽譜を私の手に握らせどんな思いでどういう曲にしたくて、熱く語ってその手を離した…
その思いを私に託すように…、しかし今回の彼は違った…。また私に手渡すのかと思ったら、私の顔見て語ることをやめる。
ズンズンと近づいてきたレオは私の顔の目の前に自分の顔を近づける…
あまりの顔の近さに目を瞑ると…何も起こらず目の前の顔が喋り出す。
月永「お前…。なんか変だ…熱?でもないし…お腹痛い…?も違うな…」
『レオ…?あの…』
月永「あぁあ!待って言わないで!妄想するから!」
『いや…顔が近いから離れてくれると…』
月永「…ん?そんなの今更じゃないか?」
今更、というのもおかしいがいくら幼馴染とはいえ異性の顔が目の前…しかも鼻と鼻がぶつかりそうなほど近くにあれば流石に照れる…。
そう思い、レオの肩を掴んで顔を離すと「ヌァあ!何するんだ!」と文句を言われる。しかし、離れたレオはニヤリと笑って話し出す
月永「わかったぞ!お前無理してるな!俺にはわかる!お前の気持ち!」
『…レオ?』
話し出すレオの背景が学校から真っ暗な泥に包まれていく…
驚きを隠せずあたりを見回す私にレオは容赦無く言葉を続けていく。
月永「お前は俺より断然繊細なタイプだ…
その繊細でナイーブな自分を守るために、俺と違ってなんでも作曲するんじゃなくて創るものを選んできた…
でも天才ってのは困ったもんだよな…!やろうと思えばできてしまうし、音楽は俺らを襲うかのように脳内に流れてくる…!
音楽に愛されてるってのも考えものだ!
お前は天才だよ!本当に!けどその才能が今お前を苦しめてる!そうだろ…⁉︎」
『レオ…いったいなんの話を…』
月永「言わなくていい!大丈夫だ!俺がお前を守ってやる!
俺がお前の脳内を襲う音楽を全て消してやるよ…!」
真っ暗な世界に包まれた…と思えばレオの声を合図にしたかのように黒い液体が私達を飲み込んでいく。
レオは汚れることも気にせずズンズンとこちらに近づいてくる。そして、黒い液体で汚れた手で私の頬を撫でる。
月永「音楽が聞こえないってのは、辛い反面楽なもんだよ…紡…少し休め…」
『レオ…?』
そう言ってレオも私も…黒い液体に飲み込まれいった…。
飲み込まれた瞬間から…私の脳内は無音になってしまった…けどこれはきっと夢の中…、だけだよね…?
黒い液体に飲み込まれてから少しした頃、
誰かの話し声が聞こえるような気がして声を出せないかと頑張ってみる…、
『…んん…』
凛月「つぐみ⁉︎」
凛月…?の声かな…もう1つ駆け寄るような足音が聞こえる。重くなった自分のまぶたを持ち上げると…そこにいたのは見知った銀髪と黒髪だった…。
夕方くらいだろうか、外は夜と夕方が混ざったような色をしていた…。
心配そうな顔をしている2人にあけきらない目を向けて話しかける…。
『りつ…?いずみ…?ここは…?』
凛月「ここは病院…女王様、あのあと倒れて心臓止まるかと思った…」
瀬名「丸一日寝てたんだよぉ…心配かけないでよね…」
なんとなく、話している声が聞こえるのだが…何を言っているかはよくわからない、もしかしたら聞こえるかもと思い「…もうちょっと大きな声で喋って…」というと凛月がすぐによってきて耳元で病院であることや倒れたこと、一日経ってることを聞き…聞こえてるよ、理解しているという意味を込めて頷くと正面にいる泉が安心した顔をするので声をかける。
『えっと…心配かけてごめんね?大丈夫だよ…』
瀬名「もう…そんな顔で安心できるわけないでしょぉ?」
凛月「セッちゃんが大好きな女王様が倒れて心配したよぉ、だって」
『えぇ…大好きだなんてそんな…照れるなぁ…』
瀬名「ちょっとくまくん!言ってないこと吹き込まないでくれる⁉︎」
『あぁ…今のは聞こえた。言ってないのね…凛月、嘘はつかないで』
相変わらずの凛月のお茶目が炸裂して、私は苦笑いするしかなかったけど、こんな日常的な会話が心を暖かくしてくれる…。けれど、目が覚めてから1ついつもと全然違う点があって胸がモヤモヤしていた…
その気持ち悪さから下を向くと、凛月が「どこか痛い?大丈夫?」と聞くので首を横に振る。
『なんか…静かだなって…』
瀬名「病室なんだから当然でしょぉ?」
凛月「なんか違和感を感じることがあるってこと…?静かなのは普通だと思うけど…」
2人は私の言葉に、不思議そうな顔をする。するとふと…夢の中でのレオの言葉が頭に流れる。「大丈夫だ!俺がお前を守ってやる!俺がお前の脳内を襲う音楽を全て消してやるよ…!」彼は夢の中でそう言ってた。彼の言葉が頭の中でリフレインして…口から言葉がこぼれる…
『音楽が聞こえない…』
「「…え?」」
『詞もメロディーも何も聞こえない…!どうしよう!曲が…何も浮かばない!』
凛月「それは起きたばっかりだから…落ち着いたらきっと」
『そんなはずない!何も浮かばないなんて…!今までなかった…』
起きて少しすれば、何かしらは浮かんで音楽が脳内を満たしてくれる…そんな日々を過ごしていて。倒れたくらいでそれは変わらない。風邪ひいても作曲しているような私が…こんなに頭の中が空っぽなんて…
『レオのせいだ…』
瀬名「…え?王さま?」
『レオが夢の中で「音楽を全て消してやる」って…「きっと楽になる」って…』
瀬名「……」
『でも…何も聞こえない…本当に音楽が聞こえない…苦しい…苦しいよ…助けて…………………………………………レオ…………』
凛月「女王様………」
苦しい気持ちを楽にするように枕を抱きしめると、凛月も泉も苦しそうな顔をしながら私を見ていた。
窓の外は完全に真っ暗になっていた…それはまるで夢の中のレオと私を覆った黒い液体にそっくりだったーーーーーーーーーー。
彼の呪い
「この呪いは誰なら解けるの…」
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