崖っぷち!続かない五線譜
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そんな、穏やかだが忙しい日々が1週間ほど続いた。
家に帰っては曲を作り、デモをあげて、ユニットに渡す。打ち合わせをしてイメージを固めたら修正を行い、完成へともっていく。
1週間を過ぎれば、”書ける”と仕分けてものはほとんどが終わって”書けそう”の分類に入っていく。
完成した曲はどんどん生徒会に渡していき、完成品を聞いたユニットメンバーがたまに感想を言いにくる…。
「よかった」とか「ここをもう少しアレンジしてもいいか」とか感想や言ってくることは様々だった。
特に印象的だったのは25曲目を提出した時に蓮巳くんが「お前は…本当に何時間作業したらこんなスピードで曲ができる…度し難い」と眉間にシワを寄せて言ってきたことだ。
いつもあんな顔をしているが、なんだか文句ありげな物言いに少し苦笑いをしてしまった。
学校生活としては変わりなく順調に…いや授業をサボることが増えてしまった。
行き詰まる、とは言わないがフラ〜っと外に出て噴水広場にガーデンテラス…厨房に入って何か作ってみたり飼育小屋にいって1時間うさぎを眺めていたこともあった…。
何か変化を求めて授業時間にうろつくことが増えてしまい、その度に蓮巳くんや泉に怒られる。
それでも5月というのは外に出るにはちょうどいい季節だから好奇心は止まらず、詞を書いたメモを一日でいっぱいにしていくことも多々あった。
たまにお腹が減って行き倒れているとなんの因果か『Knights』の誰かしらに見つかってしまう。
先日は庭園で倒れているところをナルちゃんに見つかり「女の子が道端に倒れちゃダメよォ!」と叱られてしまった。
それでも庭園の綺麗な花を背景にしたナルちゃんは相変わらず綺麗で創作意欲を掻き立てられた
「霊感(インスピレーション)が湧き上がる…」とダイイングメッセージのように道に書こうとすると、呆れたナルちゃんがおんぶしてガーデンテラスまで運んでくれ軽食を与えてくれた。
そんな生活も2週間目に入った頃には目標である45件を目前にしていた。けれど、無茶をしているのを感じないフリをして、誤魔化していたのだが身体は確実にそれを表に出し始めていた…。頭の中を流れるメロディーとは裏腹に完成した曲の感想を目の前で喋る彼らの声が何となく…遠くに聞こえるように感じはじめていた。そんなある日のことだった
羽風「紡ちゃん…紡ちゃんっ!」
『…なに…?薫くん…』
羽風「大丈夫?なんか…様子がおかしいけど…」
『…?え?ごめん…もう一度言って…』
羽風「えぇ〜?俺今そんな変なこと言った?」
『いや…なんか聞き取れなくて…』
隣の席の薫くんが、肩を揺すって初めて話しかけていることに気づいた…。頭の中がうるさすぎて…なのか…?最近はこういうことが多くなってしまった。人の声が聞こえにくい。もしくは全く耳に入ってことないことがある…。
学生としても、作曲家としても耳に異常が出るのはあまりよくはない。
羽風「俺結構声は通る方なんだけどなぁ…」
『本当にごめん…、私読唇術使えないから…』
羽風「そんなに聞こえないの⁉︎ほんとに大丈夫…?病院とかさ…行ったほうがいいんじゃない…って聞こえないのかな…?」
気を使ってくれた薫くんがおそらく話した内容をLINEで送ってくれる。病院に行かないのか…か
『ん〜、曲が完成してないし…目標超えないと…『Knights』のみんながボランティア頑張ってるのに私だけ、サボる訳いかないし…曲は頭の中で流れてくるから、大丈夫!』
羽風「"でも…授業の内容とか私生活的にさ…"」
『授業は蓮巳くんにノート見せてもらうし!私生活も基本部屋にこもってるから今の所支障ないし…いや…今支障が出てるのか…』
羽風「紡ちゃん…」
心配そうな顔で薫くんがこちらを見てくるので大丈夫だよという意味込めて笑う。
大丈夫、曲が完成して1ヶ月の目標さえ超えれば病院にでもどこでも行ってやる。ただ、今は頭の中を流れ続けるメロディーと詞を完成させないと気が済まない。
2週間をすぎた頃には、作った曲は40曲を超えていた。同時進行で約10曲をこなしている、ここまで大量の曲を同時進行で作ったことはないが、彼のおかげで鍛えられていたのか何とかこなしている自分がいた。
それでも身体は異常を感じてなのか、その音を私の耳に入れないようにし始めていた。
羽風「無理しないでね?紡ちゃんに何かあったら俺も…みんなも悲しいんだよ?」
『聞こえないよ…薫くん』
薫くんはまた悲しそうな顔でこちらをみた。
なんて言いたかったかはわからないけど、心配してくれているのは伝わってきて、申し訳ない気持ちになってしまった…
しかし、目標まであと少し…
ここで止まることは私が許してくれなかった…
このあとどうなるか…、私には考えることなんて出来なかった。
異変
『耳が聞こえなくても作曲はできる…』
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