崖っぷち!続かない五線譜
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この一週間で私がやっていたのは、あんずちゃんとの勉強会だけではない。
両親に無理を言って、自分が作曲して稼いだお金で近所のマンションの一部屋を借りたのはつい先日のお話ーー。
一度実家へ帰宅し、必要なものと親の許可を取って、新しい作曲部屋へと向かう。
オートロックをあけ、エレベーターを5階へあがり…手前から5番目の部屋へ入る。
"505号室"
執念深いというか…どう伝えていいかは分からないが、偶然なんです。本当に…と誰かに言い訳をする。
新しい作曲部屋は、その名に相応しく…
防音機能がついていて周りも音大生ばかりときたものだ。音楽環境としては、最高だ。普通の一人暮らしにしては少し大きいサイズのワンルームのど真ん中にグランドピアノを設置し、仮眠用のベッドと『Knights』のCDや曲の楽譜…他にも趣味で集めている音楽関連のもの…あとは、録音機材などが置かれた机。
ーーーまさに作曲部屋。
そんな部屋をついに完成させてしまった。生活感は皆無だが、居心地は最高。
この環境を作ったのにも理由がある。
この1年は夢ノ咲学院の作曲に魂を捧げようと思って、1年契約でこの部屋を作った。実家でももちろんできるのだが、没頭してしまうと、真夜中に家の中を徘徊し親を起こしてしまったり…迷惑をかけてしまうこともあるからだ。
それに彼の部屋が見えるあの家で作曲すると…なんだか彼に見られてる気がして変に緊張してしまうと言うのも理由の1つだ。
私だけの城ーーーー、
それがこの部屋となるのだった。
早速、学校から持ち帰った。"書けるもの"に手を伸ばす。簡単にしか見ていないので注意深く『依頼書』を読んでいく。
ユニット名、ユニットメンバー、何に使う曲なのか…イメージ…細かく記載されているものは、見ているだけでイメージが湧いてくることも多い。
大まかでも要点を捉えている『依頼書』は基本書きやすいもので、ピアノに触れなくても五線譜にメロディーを刻める。
1枚1枚大まかに楽譜を書いていく。
いつもならもっと時間をかけるのだが、今回はそうもいかない。
本来、『依頼書』の受諾率は半年単位で計算されていく。半年のうち総計何件の『依頼書』が提出され、そこから何件受けたかで算出される数値なので何時もは月に4,5件…多くても10数件をこなせば30%に到達するのだが、今回それを60%にするために1ヶ月に40件前後を受け入れなければ目標には到達しない…。
『んん〜…あの枚数でそのうち25件かぁ…いつも通りの量だなぁ…』
一通り確認した『依頼書』をまとめ直す。”書ける”と思い分けたものが25件…いつも通りと言った感じだが、できる限り進めて明日打ち合わせの予定を立てるとしよう…
開いた窓から吹き込む風が、新しい部屋の匂いを部屋の中に充満させていく。少し高めの部屋だからか、心地よい風が部屋の中に吹いてくる。
『涼しいなぁ…やっぱりここにいるだけで霊感(インスピレーション)が湧いてくる…』
5月になったばかりで暑さよりはまだ涼しさが優っているので、ちょうどいい季節だ。
頭の中で奏でられるメロディーを五線譜へ刻んでいく。ピアノは時間的に弾くことができないので、パソコンに繋がれた機材で音楽に変換していく。
イメージに合うように、歌ってる姿がイメージできるように…ユニットに合うように…と
夜が深まれば深まるほど、作業はどんどん進んでいき…丑三つ時と言われる時間になる頃には持って帰った『依頼書』の半分は完成していた。流石に寝ないと、明日に響くので仮眠ベッドに潜り込み明日に備えることにした…。
*次の日*
朝起きいつも通りの時間に起床し、朝ごはんも食べずに作曲部屋を後にした。
作曲部屋から向かう学院は新しい景色でそれもまた霊感(インスピレーション)を刺激する。
相棒のメモ帳に、作詞に使えそうなワードを残していく。
寄り道にコンビニで朝ごはんを買って、学院へと向かっていく。
すると見慣れたバイクが目の前に止まる。
『あれ…泉?』
瀬名「あんたの家こっちだっけ?いつもと道違くない?」
『あ〜…今日は作業部屋から初直行!』
瀬名「作業部屋…?まぁいいや…乗る?」
泉はバイクのヘルメットをこちらに投げ渡す。綺麗にキャッチすると泉は自分の後ろのところをポンポンと叩く。
座れ、ってことだとは思うけど流石に彼女でもない私が後ろに乗るのも申し訳ないし、まだ遅刻というには早い時間だ…。
『ん〜や!歩いていく!泉も歩こうよ』
瀬名「流石に大型を押していくのは面倒いからさっさと乗りなよぉ」
『彼女でもないのに、後ろ乗るのは申し訳ないし』
瀬名「そんなの今更でしょぉ〜早くしなってば」
『頑固だなぁ…そんなに一緒に登校したいのか、妄想殺しのせないず』
瀬名「省略するな、さっさと乗る!」
言うことを聞いてくれないみたいなのでしぶしぶ、と言った感じで泉のバイクに乗る。泉は満足そうに笑ってヘルメットの顎紐を閉めた「うぎゃ」と言う声が出てしまい、泉が「変な声〜」と笑って前をむくハンドルを握ってバイクは勢いよく学院に向けて走り出す。
バイクに乗ってもそれはそれで、霊感(インスピレーション)が湧いてくる…けどここでメモをするのは危ないので頭の中で忘れないようにメモしていくことしかできなかった。
新しい幕開け
『泉の腰ほせぇ…』
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