MainStory〜第一部〜
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あれから、白熱した対決はついに投票の集計が開始された。
会場はスタンディングオベーション、拍手喝采…今まで私が見たライブでこんな光景を見たことあっただろうか…。片手に入るかどうかくらいの回数だ…
集計が大変なのか、ステージ上の佐賀美先生が苦笑いしている…それでもどこか懐かしむようなそんな視線だった…。
『零さん、勝てるかなぁ…』
零「さぁのう。でも、もうできることはやった。結果を待つだけじゃ…」
『椚先生は焦っていらっしゃる…』
零「おぉ…♪年甲斐になくワクワクするのう♪」
『私は年相応にワクワクしてるよ』
零さんは、ワクワクと身振りするので私もそれに習ってワクワクと身振りで現す…。
三年生2人で何をしているのか…、って思うけど革命を目の前にふざけたくもなるだろう…。
舞台上にいる先生たちを見つめる…。
『Trickstar』も『fine』も疲れは見えるもののしゃんと立っている。アイドルだもの、観客の前では弱った部分を見せはしない。天祥院くんはまさにそれだ…。
流石、トップアイドルと言われているだけである。涼しい顔で、『Trickstar』を見ている。本当は体力は限界倒れる寸前といったところだろうに…。
健闘を讃え合うかのようにスバルくんが天祥院くんに肩を貸そうと寄り添う。
会話は聞こえないものの…、なんとなくわかるのは…
天祥院くんは、自らが何もせずに『SS』の代表になるのではなく『DDD』を開催することで運命を覆すことや希望や夢があるならば…奇跡が起こるのならば…それを起こしたい…もしくは見てみたい…。そう思っているんだろう…
一年の頃からみている彼の変わっていないところ、それはただただ『アイドル』が大好きなところ。
それだけは知っている。『アイドル』になりたかった少年だったんだ…天祥院英智って人は…みんなと、このアイドル科にいるみんなと同じで…『アイドル』を目指す1人の少年だったんだ…。
椚「投票数の集計が完了しました
『DDD』決勝戦の結果発表をいたします
結果はもちろん、順当ですが……、『fine』の勝利です!」
『…え?』
遊木「え……?ぼ、僕たち負けちゃったの……?」
明星「嘘だ!信じないぞっ、俺たちは全力を尽くした!それ以上のちからをだしたっ、それなのに…⁉︎」
衣更「けっきょく、俺たちには分不相応な望みだったってことかよ。ちくしょうっ、悔しい!俺がフラフラせずに、もっと一生懸命に『Trickstar』のために頑張ってたら…!」
氷鷹「今さらいっても遅い。俺も、同じ気持ちだが『fine』の壁は高く、分厚く、俺たちには覆せなかった
それが結果だ…受け入れるしかない。……くそったれが!」
悔しがる『Trickstar』のみんなの姿を私も零さんも悔しげな表情で見る。…あの氷鷹くんさえクールな雰囲気を保てなくなっている。
明星「ごめんよホッケ〜、ウッキ〜、サリ〜!それに転校生と紡先輩…!勝てなかった〜!うわあああああん…!」
『……椚先生…』
天祥院「…椚先生。差し出口ですが、意地悪が過ぎますよ
僕も僕なりに、それぞれの『ユニット』の得票数を計算しましたが…先生が僕や、生徒会を贔屓目に見てくれるのはありがたいのですが。逆に、残酷ですらあります
きちんと、公正に、結果を発表していただきたい」
天祥院くんの発言に佐賀美先生が茶化すと椚先生が先ほどの発言に修正を入れる
椚「本来ならば、この『DDD』決勝戦を制したのは順当に『fine』でした
投票結果が、それを物語っています。『fine』の得票数は、『Trickstar』を上回っています
舞台上のスクリーンに得票数のデータ…内訳などを表示いたしますので、ご確認ください
ご覧のとおり、わずかな差ですが『fine』の得票数の方がおおいでしょう?
当然の帰結です。『fine』は我が校の誇り!学院を騒がす問題児どもとは、比べるべくもありません!
技術も才能も経験も、何もかも上回っています!」
『なっ…!あのメガネ!贔屓教師〜〜〜!!!』
守沢「うるさいぞ眼鏡〜!引っこめ〜!ていうか余計なことは喋らずに、さっさと『どういうことか』説明しろ〜!」
椚「いま観客席から野次を飛ばしたのは三年A組、夜永紡、守沢千秋ですね?私の目と耳は誤魔化せませんよっ、あとで反省室に来なさい!」
『地獄耳なの⁉︎はぁ⁉︎』
零「紡ちゃんは感情を出しすぎじゃ…大人しくしなさい…」
椚「雑談は慎むように!あ〜、おほん!気を取り直して!
我が校の伝統行事、ドリームアイドルフェスティバル……通称ドリフェスには、規定のルールがあります
そのルールのひとつに、『得票数に規定値以上の差がない場合、延長戦を開催する』というものがあります
今回の『DDD』でも何度か、延長戦が開催されたのはみなさんご存知でしょう
配布したパンフレットにも、そのルールは明記されています。校則にもね。皆さん、ご確認ください
今回の決勝戦における、『Trickstar』と『fine』の得票数の差は……
惜しくも、ほんの一票ぶんのみですが、この延長戦開催の規定値に達しています
あとひとり、誰かが『Trickstar』ではなく『fine』に投票してれば…、延長戦とはならずに、『fine』の勝利が確定していたのに…!
残念ながら、不正はできませんからね。ルールに従って、延長戦に突入するしかありません」
『…ってことは…』
零「あぁ…天祥院くんの返事次第じゃ」
佐賀美「ど〜する、天祥院?おまえ次第だ。延長戦、するか?」
会場の全員が天祥院くんに注目する。一応保険医であり、教師でもある佐賀美先生はやめるように言うが、全ては天祥院くんの言葉次第だ…
天祥院「いいえ。自分のことは、自分がいちばん理解しています。これまで『fine』のみんなは僕の我が侭に付きあってくれました
無理をさせ、酷使して、全校生徒からの憎悪を僕と富に浴びてもらいました
これ以上は、僕の誇りが許さない。それに、佐賀美先生はお察しでしょうが…もう、恥ずかしながら立っているのも難しいんです
…ここが、潮時でしょう
それに、彼女も…心配してくれていた。それだけで、僕は少し救われたんだ…延長戦は、棄権しましょう」
『天祥院くん…』
私のいる場所を知らないはずの天祥院くんがなんとなくこちらを見た…。そんな気がした…。零さんは何か気づいたのか私の腕を掴む。天祥院くんの言葉に『fine』のみんなも棄権することに同意する。
日々樹「Amazing☆おめでとう、あなたたちの……『Trickstar』の勝利ですね!」
明星「えっ…?えっ、と?嘘っ、どうしてそうなるの?誰か説明して!」
氷鷹「聞いてのとおりだ。説明する必要などない、俺たちが勝ったんだ。俺もまだ、夢を見ているような気分で、信じられないが…『fine
』が延長戦を棄権するなら、自動的に『Trickstar』の勝利が確定する。俺たちが、『Trickstar』が、あの『fine』を打ち負かしたんだ」
衣更「そうなるな。うおぉ、ぞわぞわってする!マジかよ、やったなっ☆」
明星「ほんとに?」
氷鷹「嘘をついてどうする。しっかり、明星。俺たちはやり遂げたんだ、ついにこの夢ノ咲学院の頂点に立ったんだ!夢にまで見て瞬間だぞ、もっと喜べ!」
明星「お、おう…?ほんとに?それでいいのか、生徒会長?」
天祥院「うん。もちろん、僕だって悔しいけれどね?」
もしも…他のユニットに体力を削られることもなければ、『Trickstar』が本当に解散させられていたら…『もしも』の話は尽きないが、そのもしもが重なったからこそ起きたーーーーーー奇跡だ。
あんずちゃんのことを考慮しなかった。素人だからと侮った。でもそのあんずちゃんが、スバルくんが諦めなかったからこそ…輝きを失わなかったからこそ起きた奇跡の瞬間。
天祥院「存分に感謝しないさい。あの特異で、奇跡そのもののようなけれど平凡な少女に」
奇跡
『それは”もしも”が重なる運命』
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