MainStory〜第一部〜
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あれから天祥院くんは話続けた、
彼らに伝え甘い誘惑のように囁く。私には悪魔の囁きのようにしか聞こえないが、突然のことに北斗くんたちは突然の申し出や賛辞に固まってしまっている。
北斗くんの呼びかけに、真緒くんに言葉を濁す。情熱で物事の判断をできる北斗くんに対して広い視野の真緒くんは状況の悪さに気づいている。
しかし、天祥院くんはそれを許すことはない。
天祥院「返答を急かすのにも、理由がある。近日中に、あるイベントを予定していてね。そこに全てを間に合わせたいのだけど…
やりたいこと、やらなくてはならないことが山盛りなんだ
考えやすくするために、もう少しカードを切ろうかなーーーーーー遊木真くん」
遊木「えっ、僕ですか?なな、何でしょう?」
急に呼ばれた真くんが肩を跳ね上がらせて返事をする。その返事を気にせず、天祥院くんは話出す。
『Knights』は真くんの特性を、最大限に活かすシステムが備わっている。『Trickstar』よりも『Knights』の方が、真くんにはふさわしい。と…『Knights』のことなのに、私は完全に置いていかれているし、私自身が他人事のように受け止めている。
確かに、泉やナルちゃんがいる環境下で真くんがいれば魅せ方も変わるしもっと輝ける。けど…真くんがなりたい輝き方がそれじゃないなら、入ってきても無意味だ…。
天祥院くんが作っているのは才能ある輝きではない、オンリーワンのアイドルではない、人間ではない。
ーーーーーーーーー皇帝陛下に従う大量生産の『兵隊』だ。
天祥院「どうか冷静に、一考してほしい」
気づけば、天祥院くんの長話を終えたらしい。天祥院くんの甘い誘惑は『Trickstar』ひとりひとりにどう響いただろうか。誰がどんな感情を持って天祥院くんの言葉を聞いているのか、今の私には判断ができなかった。
天祥院「そうそう、この後僕の『fine』が参加するドリフェスがあるんだ
是非、君たちにも観てほしい。非公式の野良試合……いわゆる『B1』だから、チケットがなくても観戦できるよ
ちょっとした発表もある、観戦して損はないはずだよ
懸命な判断を期待しているよ、まだ何もでもない君たち」
天祥院くんは、また皮肉を言う。現実と向き合ってごっこ遊びをやめろ。そう伝えたいようだった。
天祥院「紡ちゃんも観においで、君の尊敬するものが間違っているか証明してあげる…」
『尊敬するもの…?』
天祥院くんは私の頭をさらりと撫でて真緒くんと蓮巳くん以外の生徒会メンバーを連れて生徒会室から出て行った。
彼が出て行った生徒会室はいつも以上にシンとしていた。それぞれの思いに襲われていることだろう。かく言う私も、頭が回りきってはいない。解散、移籍、革命をごっこ遊びと、夢を勝手に変えられ、最終的には兵隊になれと彼は言っていたが…それの何がアイドル業界の夢なのか、正しい未来なのか…私には理解できないことだった。
『Trickstar』のみんなと私を引っ張るあんずちゃん。会話はあまりなかったが足は確実に『B1』の会場へと向かっていく。
私の尊敬を壊す…みたいなことを言っていたが、天祥院くんが自ら動くなんていったいどちらに何をみせたいのか。彼の真意はわかったもんじゃない…
あんず「紡先輩、大丈夫ですか…?その…顔が…」
『大丈夫だよ…人ヤっちゃいそうな顔してた?』
あんず「っぅ…は…はい…」
『あはは、泉にも今朝言われた。気をつけないと、あんずちゃんもそばに居てくれてありがとう。もうちょっと付き合ってくれる?』
あんず「もちろんです!」
あんずちゃんと会話していると後ろから聞き慣れた声が聞こえる。
零さんだ。どうやら、野良試合の『B1』に天祥院くんたちが勝てるのか、と言う話を割って入ったらしい。
零「さて、どうかのう?
天祥院くんは病弱ゆえに、無駄な汗をかかぬ。体力を消費せず、カロリーを用いず、勝つべきときに最小のちからで勝つ
ひ弱な病み上がりと侮っておると、痛い目を見るぞよ?」
『零さん…』
氷鷹「『ユニット』専用衣装を着ているが……。まさか、この屋外ステージで行われるという『B1』で生徒会長と戦うのは、『UNDEAD』なのか?」
零「そうじゃよ。すでにドリフェスは始まっておる、『戦うのは』というより『戦っているのは』じゃのう?天祥院くんから名指しで挑まれてのう。血の気の多いうちのわんこが、何も考えずにその申し出を受理してしもうたのじゃよ
昨晩のドリフェスでは、我輩たちはおぬしら『Trickstar』の引き立て役じゃったからのう…」
『彼らの踏み台が気に入らなかったのね…』
零「あぁ…ストレスじゃったようじゃの
それに負けん気の強い子じゃから、おぬしらのへの対抗心を芽生えさせておるようじゃ」
『だから生徒会との対決を受けたんだ…いいとこでもあるけど、今回は悪い方向にいきそうな…』
零「あぁ…あの天祥院くんが、負ける戦いをするとは思えぬ」
万全じゃない状況で、パフォーマンスをした『UNDEAD』…、当然だ『Trickstar』と同じで昨日も『UNDEAD』はパフォーマンスをしていた。『B1』と同じ対バン形式で疲れていないという方がおかしい。
加えてこんな日が差している状況で…しかも薫くんもいない。それで全員揃った『fine』に勝つなんて…いくら零さんでも無理だ
零「紡ちゃんが来てくれるなら薫くん呼べたかものう」
『今はそれどころじゃないと思うけど、零さん…』
零「悔いが残るドリフェスになってしまったのう。見よ、観客も全然盛り上がっておらんじゃろう?」
氷鷹「ふむ。確かにな、観客もさっぱりテンションが上がっていない感じだ」
『…じゃあ『UNDEAD』が実力を発揮できない舞台を選んで、勝負を仕掛けられたわけだね』
氷鷹「生徒会長は、そういう姑息な策も弄するのか」
『そこが生真面目な蓮巳くんとは違うところだよ。』
零「天祥院くんは天使のようにかわいい顔をして、悪魔のようにエゲツないのじゃ」
そうだ、いつだって天祥院くんは笑顔でひどいことをやってのける。最初はそんなの気にせず他人事のように見ていたら気づけばそれは自分の周りにも被害を出していた…。今回だってそうだ。これは『公開処刑』だ。
革命の手伝いをした、反逆者…罪人としてこの皇帝陛下の国の名の下に『処刑』れたんだ。気づけば、零さんたちは断頭台に乗せられてしまった。
零「次はおぬしらの番じゃぞ、『Trickstar』……。首と胴体が泣き別れになる前に、逃げ出す算段でもしておくべきじゃの?」
『そんな無駄だった、っていうの…?零さんは昨日の出来事を…それまでの出来事を無駄だったって言いたいの…?』
零「無駄、というわけではない。じゃが、すでに策は成っておる、この将棋は詰んでおるよ」
零さんの言葉は私の身体を重くした。それこそ断頭台に頭を乗せるために地に跪かされた『罪人』のような思いだった。
天祥院くんが言った言葉が頭をよぎった…
零「見よ、夢ノ咲学院の王者が凱旋するぞ。学院最強の『ユニット』……『fine』が、間もなく登壇する。
もはや、こんなものは『対決』ですらない。天祥院くんの、高らかな勝ち名乗りじゃ
そんな舞台は見てられんわい、我輩は失礼させてもらう
気をつけよ。天祥院くんは、心を折りにくるぞ…
紡ちゃん、すまんが肩を貸しておくれ…」
『…うん…わかった。みんなごめんね、また』
そうだ、天祥院くんはいつもそうだ。人の心を見透かしてはその夢を、希望を打ち砕いて、喰らい尽くす。取り込んで自分のものにする…零さんの大切な仲間も、私の大事な友人も…彼も…みんな天祥院くんの被害者だ…
零さんに声をかけられて肩を貸してあげる。思った以上にしんどいようだ。ただでさえ白い顔は、青白い顔に変わっていた…。まだ眠っている時間だ…なのにドリフェスなんてハードなものに出て実力どころか体調の問題もあっただろう…
零「紡ちゃん…、失望したか?」
『失望なんてしないよ。晃牙のおいたがすぎたね…元気になったら晃牙に意地悪しようね』
零「あぁ…それもいいのう…」
そのあと零さんは静かになり、棺桶のある軽音部部室までノロノロと2人で歩いていった。
尊敬する人
『失望なんてしないよ』
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