MainStory〜第一部〜
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『S1』の勝利を見届け、私は1人外へと出ていった。
学院内がこの一大事を落ち着いて受け止めきるまで待つことにした。
すでに夜になっていた外は静かに月が輝いていた。涼しい風が泣いた後の熱を持った体を冷やしてくれる。夜遅くなったガーデンテラスにはガラス越しに月明かりが入っており、テラスの中を照らしていた。
そこには、シルバーブロンドの髪の毛が月明かりに照らされ、外を眺めている人がいた…
『天祥院くん…』
天祥院「やぁ、紡ちゃん。久しぶりだね。君ならここにくると思っていたよ。」
『戻ってたんだね。』
天祥院「そうだね、それに見に行かないとと思ってたんだ。今日の『S1』をね、思ってもみなかった結果だったけれど、あんな子達がうちの学院にいるなんて嬉しいことだね」
『じゃあ見てたんだ…。生徒会が、蓮巳くんが負けるところ』
天祥院「まぁね、美しい舞台だった。それに敬人の泡を食った様子といったら…ふふふ」
『相変わらず、趣味が悪い…』
天祥院「それに、彼らの曲に君が書いたものもあったんじゃないかい?」
『え…なんで…』
天祥院「やっぱりね、僕は君のファンだからね♪聞けばわかるさ…」
冷や汗が背中を伝う。天祥院くんと話す時はいつもこうだ。何を考えているか分からなし、逆にこちらの考えることはお見通しといった感じが苦手で仕方ない。
天祥院「これから毎日、楽しめそうだね…♪」
『何をする…つもりなの……』
天祥院「そうだね、とりあえず彼らと話してみたい。だからこうして、君がくるであろうガーデンテラスで休みつつ彼らが通るあの道を眺めているんだ」
『そっか…、』
優しそうな笑みで彼はこちらをチラッと見やるが『Trickstar』が通るであろう道にまた視線を戻す。
あの子達には休息の文字を渡すことすら許されないようだ。次から次へと事件は起こるものだ…。
彼の視線の先にどうか、あの子達がうつりませんようにどうか今だけは…あの子達には勝利したというその事実だけを胸に残して帰ってほしい。そんな祈りはどこにも届かなかった…
天祥院「おや…、来たようだね。それじゃあ紡ちゃん、気をつけて帰るんだよ。」
『まっ…待って……』
私の声を無視して、天祥院くんは遠目に見える『Trickstar』の方へと向かっていく。その背中は病人にはみえず、この学院のトップ生徒会長であり『皇帝』とも呼ばれる天祥院英智の背中だった。
月明かりがスポットライトのように彼を照らしていく。私はそれをただ見ていることしかできなかった…
『何が女王様だよ…皇帝の前じゃただの庶民と変わらないじゃん…』
私の体が疲れではない何かに震えているのを誰も知りはしなかったーーーー。
翌日、『S1』から一夜明け。
私は何故かアイドル達に囲まれていた。
語弊があると嫌なので、説明すると昨日の『S1』であんずちゃんのプロデューサーとしての活躍が噂として広まり、同じプロデュース科の私でもいいのではないか、と三年生のアイドルを中心に関わりがある人たちは私の元へと集まってしまった。というわけだが…
『私は、プロデュースできないし。噂はあんまり信じない方がいいっていうか…』
生徒「そんなこと言うなって!夜永もプロデュース科だろ?俺のユニットも頼むよ〜」
『あ〜…』
瀬名「はい、邪魔〜あんたも邪魔〜♪」
『あ”ぁ”〜』
瀬名「なに?ゴリラみたいな声出して」
周りにいた同級生を蹴散らしたのは言わずと知れた瀬名泉だった。邪魔〜♪じゃないんだよ。
あと、ゴリラみたいな声って女子に対して酷い言いようである。
『泉おはよ。どうしたの?あと、私ゴリラじゃないから』
瀬名「はい、おはよ〜。周り囲まれてるから助けてやったんでしょぉ〜感謝しなよね」
『ありがと』
瀬名「あと、あんたらに言っとくけど、こいつは『Knights』の専属プロデューサーだから他のやつに言ってくれる?」
泉がそう言うと多少の言い合いっぽくなった人もいたが最終的には泉の頑固な部分が勝利してみんな去って行った。
その通りだ、私は『Knights』の専属プロデューサーで、あくまでアイドルとの関わりは作曲面だけだ。周知の事実なのに、何故このようになったか理解ができていない。理解できていない状況でこうなってずっと囲まれてあ〜、う〜、と言葉を発するか。噂だから信じないでって言うしかなかった。
彼女も私も本物に比べればズブズブの素人だ…。でも藁にもすがる…というのなら、何かしたい気持ちがないわけではないのだが…、
きっとあんずちゃんもこんな状況なのだろうと…ここにいない後輩に思いを馳せていると、思わぬ人物が近づいてくる。
天祥院「やぁ、紡ちゃんおはよう♪」
『おはよう、天祥院くんと蓮巳くん』
蓮巳「あぁ…おはよう」
天祥院「早速本題なんだけど、今日の放課後生徒会室に来てくれるかな?」
『え…なんで…?』
瀬名「ちょっと、なんでこいつが生徒会室に行かないと行けないのぉ?やっと転校生から離れて『Knights』につきっきりになれるってなったのに」
天祥院「おや、瀬名くん。いいじゃないか、まだ一ヶ月の区切りは付いていないし。彼女にも聞いてもらわないといけない話だからね」
瀬名「はぁ?帰って来たと思ったら、どういうつもりなのぉ?」
『泉、いいよ。わかった、放課後ね。』
天祥院「ありがとう、じゃあ放課後にね」
そういって、天祥院くんは後ろを向き蓮巳くんと自分の席へと戻っていった。泉は不機嫌そうな顔でこちらを見ている。その視線が痛くて苦笑いで泉を見る
『泉はなんでそんなに怒ってるの?大丈夫だよ?私は平気だよ』
泉「…天祥院…何考えてるかさっぱりなんだよねぇ…それにあんたは平気じゃないでしょ?たまにあいつのことすごい目で見てるよ」
『すごい目…?』
泉「今も後ろ向いた天祥院を殺すんじゃないかって目で見てた。」
驚いた、そんな目で見ていたのか…。
確かに過去のことを考えれば天祥院くんがやって来たことを許せる気はしないが殺意をむけようと思ったことはない。
だが、心とは裏腹に身体は正直。目は口ほどに物を言う。
そんな所だろうか…
『大丈夫だよ、そんなことしたって誰も救われないし。罪人になったら作曲も作詞もできない。それこそ私が死んじゃう』
瀬名「…そうだねぇ…まぁ。何かあったら俺にすぐ連絡すること。いいね?女王様」
『は〜い』
そういって泉は私の頭を乱暴に撫でて、自分の席に戻っていった。
心配をかけてばかりで申し訳ないけど…これは私が勝手に乗った船だから、泉も『Knights』のみんなも巻き込むわけにはいかない。『Knights』のみんなには平穏にすごしてほしい。
どうかこの革命と言う嵐が過ぎるまでは…安全な場所で待っていてほしい…
『革命の嵐って歌詞になりそう…メモしよ』
→