祝福!騎士達の微笑み
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お色直しのドレスを着るために、控え室に戻ればそこには最初来た時のようにトルソーにドレスがかけられていた。でも、その色は今日ずっと着ていた純白のドレスとは違う、ずっと私の隣にいた彼と同じ色のドレスだった。ベルラインのそのシルエットにバーミリオンが綺麗に乗っていて、お花が散りばめられていてまるで絵本に出てくるプリンセスのドレスのように美しくそこに鎮座していた。
『すごい…綺麗…』
スタッフ「新郎様がお選びになったんです」
『…レオが?』
だからナルちゃんが言っていた意味がわかった気がする。自分のファッションにもあまり興味がなく、時間をさく比率としてはファッションの分野はかなり低い彼が私のために悩んでくれたこのドレスを自分の疲労を言い訳に着ないわけにもいかないだろう。
少し深呼吸をして「お願いします」と言うとスタッフさんに純白のドレスからバーミリオンのドレスへと着せ替えられる。先ほどとは違い全体が少し床につく位の長さで本当にプリンセスにでもなったような気分だ。自分の心が少女の時のように浮き足立つ感じがした。髪の毛を直されている間に自分の顔をジッと見る。
そういえば、昔…
まだ私がお姫様に憧れていた頃、母にワガママを言ってお姫様体験をさせてくれるところへ月永家と一緒に旅行へ行ったことがあった。好きなドレスを選んで、子供ながらに豪華な装飾をつけて髪の毛にメイクに……綺麗な靴を履かせてもらえば、それはもうお姫様そのものになった気がした。
それを見たレオがポツリと呟いた
月永「こんにちは、『お姫様』」
……そうこんな風に呟いて、レオママでもルカちゃんでもなく私に手を差し伸べた。……?今、現実と脳内での妄想がリンクして話出した…?
そう思って顔を上げると、紺色のタキシードを着たレオが手を差し出していた。
『なんか、小さい頃と同じだ』
月永「あれだろ?小さい時に行った……洋館…お城?だったっけ」
『うん、それそれ』
月永「あの時、おれがルカを優先しなくて何故か紡に怒られたんだよなぁ…」
そう、あの時何よりも自分を優先した彼に嬉しさを覚える前に可愛いルカちゃんを「ひとりぼっちにするなー!」とレオに怒ったのも記憶にある。
月永「でも今日は許されるだろう?」
『そうだね……こんにちは『王子様』』
そう言って彼の手を取ると、彼がその手を引っ張り立ち上がらせる。ジロジロと私の全身を凝視して彼は満足そうに「ふん!」と息を吐く。
『なぁに?その自信満々な顔』
月永「いや、さっきのドレスも素敵だったけどやっぱりこっちのがいいな!おれの色!」
『…おれの色?』
月永「うん、おれの『紡』」
自信満々に笑う、彼にもう何も返すことができずにいると周りにいたスタッフさんが笑う。
スタッフ「お二人は今まで見たご夫婦のなかでもかなり幸せオーラ満載でこちらも幸せな気持ちになります」
スタッフ「はい、参列されている方々もお二人を見て幸せそうですのでみなさんお二人のことが大好きなんだなと感じます〜!」
『ありがとうございます…』
あはは、と苦笑いしながらまた二人で手を繋いで案内されるままに進んでいく。先ほどはまるで撮影スタジオのようなところだったけど、今度は教会っぽく大きな扉の下にある階段へと案内された。階段をあと少しで降りきれる。というところで、履きなれないパンプスがコロリと落ちてしまい、レオに体重をかける。
『…っ…ごめん…』
月永「大丈夫、足…怪我してない?」
『私は大丈夫』
レオはそう言って私の手を手すりにおいて転がったパンプスの片方を取りに行く。そして、戻ってくると私の足元に跪きパンプス を履いていない私の足をとる。
『レオ……あの…』
月永「ピッタリはまった…!」
『そりゃ、さっきまで履いてたから…』
月永「シンデレラ!」
『…えぇ…』
レオは嬉しそうに履かせた足を私に見せる。なんだか、小さい頃から変わらない笑顔に私もスタッフもカメラマンも絆されていることに薄々気づいていた。
『レオ、お姫様抱っこ』
両手をレオに伸ばすと嬉しそうに「任せろ!」と私の腰と見えもしない膝裏に手を回す。言ったは良いもののまじで⁉︎と焦る気持ちもあった。でも、彼の首に腕を回すもちろん信じているから…それに抱えられたこともあるしきっと持ち上げる力はあるはずだ。
月永「よいしょっ!」
『うわっ……すごい!』
その細い腕や体にどうしてそんな力があるのか不思議なほどレオはいとも簡単に私の体を持ち上げた。
月永「意外と重いな…ドレスって結構重たい!」
『いや…私が重いだけじゃ…?』
月永「おれ、お前のこと重いって感じたことないからドレスの重さだろ!」
『…?そう…』
レオは私のことをギュッと抱きしめる。その姿をカメラさんが何も言わずにカメラにおさめていく。ゆっくりと降ろされてからもずっとその手は離される事もなく和気藹々とした雰囲気で撮影は進んでいく。
そして、全行程が終わったのか控え室へと案内されやっとドレスから解放された。衣装製作に携わっていた身からすると直しもなしによくここまでぴったりのものが用意できたなとあらためて感動した。
スタッフ「どうかされました?」
『いえ、よくここまでピッタリなものがあったなぁ…と』
スタッフ「…それはとある方が修正してくださったんです。お二人のお知り合いと伺っています」
『二人の…ああ……そういうことか』
二人の知り合いでここまでのクオリティ、そして私の体にぴったりの衣服を作れるのはきっとあの人しかいないけど…、よくお許しが出たものだ。きっとレオがまた取っ組み合いをしながらお願いしたのだろうと想像できるあたりが面白くてクスクス笑う。
スタッフ「お選びになった時から思ったのですが素敵なドレスですね」
『…えぇ…天才が作ったものなのであの人も納得したんでしょうね』
笑みがこぼれるのを隠す事もできずスタッフの方は頭に?を浮かべていた。帰ってきたときに写真でも見せてあげよう、彼もきっと感想を待っているはずだろうし…
天才の贈り物
『ほんと…先に言ってくれればいいのに』
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