再構築*涙と誓いの戴冠式
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*瀬名said
『戴冠式』が終わって、数ヶ月が経った。季節も夏になって、日本同様に暖かい気候だが、ジメジメするのがいただけない。
…そんなことよりもあのあとの話、れおくんと紡は一時的に帰国し、籍だけを入れて帰ってきた。盛大に式を行わなかったのも、紡がれおくんや『Knights』というアイドルを思ってのことだそうで、れおくんはこっちに帰ってからも「式がしたい」や「事務所公認カップルにしよう!」とか言っていたけど紡が一言「離婚前提でいいなら公開しますけど」と言えば一瞬で大人しくなった。紡自身も隠し続けるのは無理だとわかっているけど、この一年はせめて『Knights』に迷惑をかける存在になりたくないそうだ。
まぁ、俺たちとしては二人が幸せで正しい道を選んでくれればどちらでもかまわないということに相違なかったので、そのへんは二人に任せるということで口出しはしないことに決まっている。
…そう、俺も二人のことに口出すつもりはない。
月永「なぁ〜セナ〜お前から説得してくれよぉ〜。紡の花嫁姿見たいだろ〜」
瀬名「れおくんさぁ〜、勝手に俺の家上がらないでくれるぅ?鍵渡してないいよね?」
月永「紡が持ってる合鍵借りてきた!」
瀬名「ってことは、紡いるんでしょ?いいのぉ?夫婦の時間大事にしなくて、もうすぐ日本に帰るんでしょ?」
月永「大事にはしている!だから、おれが居ない間にセナを牽制しつつ、紡が結婚を公表してくれるように説得してほしい!」
瀬名「会うなって言ってるのか会って説得してくれって言ってんのかどっち?」
月永「どっちも!」
瀬名「…チョ〜うざぁい」
俺は口出すつもりがないのに、隣に住んでいるせいでこの巻き込まれかただ…。れおくんは、こっちに来るたび紡の部屋に泊まり、俺のところに来て紡を説得してくれと頼んでくる。自分が言えないからって俺に頼まないでほしい…。
れおくんは俺のお気に入りのソファーの上で子供のようにジタバタする。埃立つからやめてほしいんだけど…。
瀬名「せめて、一年くらい待ってあげなよ。紡だって、れおくんのことを思って公表しないわけだしさ。」
月永「おれは何十年と待ったの!だから全世界におれの嫁って公開したいの!」
瀬名「はぁ…親の心子知らずっていうか…なんていうか。」
結婚を公表したいれおくんと、隠し通したい紡との間に挟まれた俺は正直、日本に帰りたい。けど、こっちでの仕事も少しずつだけど軌道にのっているし、『Knights』として活動するのも時間を見つけてになりつつある。この忙しい中でうまく活動できるのは、無理なく仕事を回してくれる月永夫妻のおかげだし、紡が俺が忙しい時に家事をやってくれるおかげでもある。
結局、この二人に甘えてしまっている部分があるからこそ俺はここを離れられないし。れおくんのこのくだらない牽制に付き合うことしかできないのだ。
瀬名「れおくん」
月永「ん?なんだ?説得する気になったか⁉︎」
瀬名「ちがうよっ!…せっかくさ、好きな子と結婚できたんだしさ…その…幸せになりなよ。」
月永「…あぁ!でも、もう死ぬほど幸せだけどな!」
そういって、れおくんは豪快に笑った。高校の時に、苦しんでた彼がこんなに幸せそうに笑うのをあの時の俺はきっと知らなかったし、思いもしなかった。あぁ、本当に幸せなんだなって見ている俺でもわかるほど、れおくんは綺麗に笑う。
ねぇーー、思った通りだ。俺の幸せはあんたらが幸せに笑いあってることなんだ…。だから俺はさぁ…
瀬名「れおくん、俺も今幸せだよ」
月永「…?まさか!おれから紡を奪う計画が着実に進んでいるのかぁ⁉︎いくらセナでもそれは見過ごせないぞ!」
瀬名「はぁ?馬鹿じゃないのぉ?ほんと、あんたら夫婦はチョ〜うざぁい!」
月永「…なぁ、セナ。ありがとな」
瀬名「?何が、ありがとうなのぉ?」
月永「内緒だ!あっ!紡がご飯できたよだって!行こう、セナ!我が家に!」
瀬名「あんたの家じゃなくて紡の家ねぇ〜」
月永「月永の家だから、おれの家だ!あははっ☆」
そう言って、れおくんはソファーから勢いよく立ち上がり、玄関へと走っていく。裸足でやって来た彼がフローリングを歩くたびペタペタと音がなるのがなんだか面白くって、笑いながら俺もその後を追う。
靴を履いてから玄関の鍵を閉め、隣の部屋に入っていく。すると、とてもいい匂いが玄関まで届いてくる。
後ろ手で鍵を閉めて、靴を脱いであがればエプロンをつけた紡がひょこりと顔を出す。
『泉、いらっしゃい!今日はシチューだよ!パンを出そうと思うんだけど、カロリー多すぎ?違うのにする?』
瀬名「お邪魔します。まぁ、明日は仕事だからカロリー消費するし問題ないでしょ。」
『じゃあ座って!早く食べよう!』
紡は、そのままキッチンに戻り盛り付けをする。それをれおくんが手伝っている。皿を出して、食器を出して…それを人数分並べていく。
なんだか、場違いな気がするけど…と何度も思って断ったこともある。でも、二人して「泉ならいいよ」と言ってくれる。なんとなく、大事にされるってこういうことなんだって思うと、悪い気はしなかった。結局、三人揃ってお互いがお互いのこと大好きってことなのかもねぇ…。なんて感慨深く思っていると、シチューを前に置かれて咄嗟に「ありがとう」といえば紡が「どういたしまして」と返す。
その様子を見たれおくんが「夫婦っぽいことは禁止!」と怒る。これがここ最近の流れ、みんなわかってるけどなんとなくそういうノリみたいなものが面白いんだと思う。
俺たちはきっと今、失った時間とこれからの大切な時間…その両方を得ようとしてるのかもしれない。
本当は学生の頃にしたかった、学生っぽいノリや馬鹿話…それから遊びや…いろいろ、本当はしてみたかったのかもしれない。『友達』らしいことを…。複雑に絡まったものがほぐれた今、それを素直にやってあの時わからなかった何かを取り戻そうとしてるのかもしれない。そして、ふたりはこの時間さえも自分の愛に昇華していけるんだろうね…。あんたら夫婦は本物の愛を知ってるもんね。
『泉?食べないの?』
瀬名「…あぁ、食べるよ。紡、俺は今幸せだよ。あの時見てた未来よりね」
『…?よくわかんないけど、私も泉が幸せなら幸せだよっ!あははっ☆変な泉〜』
月永「変なセナ〜!あははっ☆」
ほんっと、この夫婦はチョ〜うざぁい……
けど、これからも幸せで笑いあっててよねぇ…それが俺の…いや、きっと『Knights』の幸せなんだからさぁ。
エピローグ
王子様とお姫様は幸せに暮らしましたとさ
再構築*涙と誓いの戴冠式 end.
あとがき→