再構築*涙と誓いの戴冠式
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*あんずsaid
『Knights』のみなさんが出ていってから数時間は経過した頃、待っている間に行っていた作業も終わって一息ついていると、お姉ちゃんと司くんがスタジオに帰ってくる。
鳴上「あらァ?あんずちゃん、ずっとここにいるの?」
あんず「うん、私の指定はここみたいで多分最後だからずっと待ってるの」
朱桜「その間に、お仕事をなさっていたのですね?さすがお姉さまです」
鳴上「でも、なんでここなのォ?」
お姉ちゃんの疑問に答えるべく、紡先輩からもらったメッセージカードをふたりに見せる。ふたりはメッセージカードを覗き込み。文字を目で追った後に首をかしげる
朱桜「『女神たるもの、堂々とその玉座に座れ』…?どういう意味でしょう…?」
鳴上「女神、っていうのはあんずちゃんのことだと思うけど…玉座がなんでこの『セナハウス』なのかしら…?」
あんず「ハロウィンの時に、紡先輩が座っていた玉座があったのがこのスタジオで…だから、玉座に座れっていうのはこのスタジオにずっと居座っていていいよ、ってことなのかなって…」
鳴上「なるほど…それはふたりしかわからない思い出ねェ…」
朱桜「私のも紡お姉様とふたりの思い出がキーワードになっていました!」
鳴上「アタシもよ…。うふふ、そうやって思い出を大切にしてくれるのが紡ちゃんのいいところよねェ…」
あんず「すごく大切にされてるって感じがして、心があったまるよね」
そんなほのぼのと話していれば、凛月くんが帰ってきて、さらに遅れて瀬名先輩も帰ってくる。みんなにお茶をいれて和なお茶会を楽しんでいると月永先輩と紡先輩が帰ってくる。
『あんずちゃん、みーつけたっ!』
あんず「紡先輩!おかえりなさい!」
月永「あんず!おれもいるのに紡だけってどういうことだ!おれは無視かっ!」
『うん、お待たせしましたっ!そして、全員お疲れ様でした!』
瀬名「その前に、女王様の可愛い後輩に言いたいことがあるんでしょ?」
『うん!あんずちゃん、この夢ノ咲学院にきてくれてありがとう。私の後輩になってくれてありがとう。それと『Knights』を再構築してくれてありがとう…。』
あんず「えっ…そんな私は何も…」
『ううん、あんずちゃんは私たち『Knights』の救世主だよ。ボロボロになった『Knights』を再構築して、こんな素敵な『アイドル』にしてくれた。ありがとう、そしてこれからもよろしくね…』
あんず「先輩…?」
紡先輩は、少し疲れた表情で私に笑いかける。それはまるで肩の荷を下ろそうとするように何かを私に託そうとしているような気がした。みんなもそれを察したのか、月永先輩と瀬名先輩以外は紡先輩を凝視していた。
『…ごめんね、何かを投げ出すような情けない先輩でごめんなさい…。かっこ悪いところもいっぱい見せたよね?私はあんずちゃんにかっこいいところを見せたいって頑張ったけど、全然見せられなかった』
あんず「そんなことないです!紡先輩は私の憧れで…情けないところなんて…」
『だから、次会うときはもっともっと成長して会えるように頑張るね』
あんず「先輩…?どうして、そんな別れの挨拶みたいに…」
『あなたに出会ったこの一年間、私は新しい自分をいっぱい見つけられました。あんずちゃんはこれから…もっともっと成長するんだもん。だから、私も負けてられない…そう思ったの』
凛月「ちょっと待って、本当に別れの挨拶なの?紡は『Knights』のプロデューサーのままなんでしょ?だったら、会う機会なんていっぱいあるでしょ…?」
朱桜「そうです…。お姉様の発言はどういう意味を含んでらっしゃるのですか?」
紡先輩は一度、月永先輩と目を合わせてから私たちの方へと向き直る。そして、深呼吸をしてから口を開く。
『私、一年間フィレンツェに留学することになったの。だから、『戴冠式』が最後の仕事になる。そのあと戻ってくるつもりだけど一年間は『Knights』のプロデューサーとしての仕事はできないと思う…。だから、その間あんずちゃんに託したいの、私の居場所を…私の大切な『Knights』を…』
みんなが驚いた表情をする。そんな話は今の今まで聞いていなかったと表情に書いてある。
『実は『返礼祭』が開催される少し前に、お父さんの知り合いの舞台作家さんが偶然私の作品を読んでくれて、とても気に入ってくれたらしくて。
よかったら、こっちで修行しないかって…もし来るなら私が面倒をみようって声をかけてくれて…私も海外を経験してみたいとは思っていたし、現場を実際にみせてもらいながら舞台の勉強をできるなんて滅多にない機会だから、1年間フィレンツェに行くことにしたの…』
あんず「そんな…月永先輩はいいんですか…?」
月永「嫌だって言うほどおれも子供じゃないしな。それに海外での経験は芸術家にとっては大きなステータスでもある。おれは、縛りもないし…。それに会おうと思えば会えるし!」
あんず「瀬名先輩はこのこと…」
瀬名「さっき聞いた。驚いたけど俺も海外に行くし、人のことは言えないよねぇ」
『それに泉は同じフィレンツェ に行くから何かとお世話になるとは思うしね!』
その発言で、スタジオ内が氷点下のごとく凍りつく。そのことを月永先輩も知らなかったみたいで表情が一瞬にして消える。
あんず「えっと…お世話になるっていうのは…?」
『そのままの意味だよ。私の両親が心配性で安心させるために泉にはいろいろ協力してもらうことになるから…』
月永「おれはそれ聞いてないぞ!」
『今言ったもの…別に一緒に住むわけではないし、いっかなぁって』
凛月「待ってよ。ついていけてない…どういうこと?」
話がドンドンと進んでいき、ついに在校生組がストップをかける。凛月くんは頭を抱え、お姉ちゃんは顎に手を当て「ん〜」と唸っていた。
朱桜「つまり、お姉様は1年間フィレンツェに留学されるため、その間は『Knights』の"produce"には関われない。そのため、当面の間は『戴冠式』がお姉様の最後のお仕事になってしまう…という訳ですね?」
『さすが、司!よくできました!』
月永「待て待て!司ってなんだ!?いつから呼び捨てに!」
『もう司が『王さま』でしょ?可愛い司くんからかっこいい騎士に成長したことを考慮してチェンジしました』
月永「ナルはナルちゃんのままなのにか!?」
鳴上「レオくんったら、細かい男は嫌われるわよォ?」
あんず「ま、待ってください!話が逸れる前に確認させてください!紡先輩のいう託すっていうのは…」
『…私がいない間『Knights』を見守っててほしいの。もちろん彼らは自分で動ける優秀な騎士だけど、いつも暴走しがちだから…女神たるあなたに見守っててほしい。もちろん無理にとはいわないけど…お姉ちゃんからの最後のお願い…』
紡先輩がそんな表情をすると逆らうことは私にはできない。違うんですよ、先輩…私にとってはあなたの方が女神そのものなんです…。いつも自分より他人で誰かを思って行動できる。そんな先輩だから憧れてたんです。頑張れたんです。
そんな先輩のお願いを断れるわけないじゃないですか…
あんず「わかりました。精一杯頑張ります…そして絶対受け取りにきてくださいね?ずっとは預かりません…『Knights』に相応しいのは私じゃなくて紡先輩だから」
『うん、絶対返してもらうよ。戦ってでもね?』
紡先輩は私に近寄ってきてギュッと抱きしめてくれた。あぁ、きっと今日で紡先輩とは当分会えなくなるのだと思うと、この温かさを忘れないように身体に刻もうと私も先輩に抱きついてしまう。
この温かさがこの1年どれだけ私の支えになっていたかを噛み締めるようにギュッと…ギュッと…
その優しさに全て捧げよう
あんず「先輩、ご卒業おめでとうございます」
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