レクイエム*誓いの剣と返礼祭
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
飛行機を降りると、日本とは違う世界が広がっていた。
『タクシー…と…あぁ。その前に荷物…』
大きな荷物を受け取るために、ベルトコンベアの前で流れてくるのを待つ。流れてきた自分の荷物を引っ張り、再度荷物を確認する。するとキャリーケースにつけた記憶のないタグがついていて「なんだろう?」と裏返すと名刺サイズの紙が中に入っていてそれを取り出す。その紙には乱雑に「Con amore」と書かれていた。
『愛を込めて…?なにこれ…?』
まぁいいやとそのメモを財布にしまい、キャリーを引いて歩き出す。
家に着いたら、両親に連絡をして急いで『戴冠式』の準備にうつらなければならない。
やることは山ほどある。約10日ほどでその全てを行わないと…
初めてのプロデューサーとして海外で行う仕事だ。手を抜けば『Knights』の名前に傷がついてしまう。日本でも海外でも『Knights』は世界トップ『アイドル』でいてくれないといけない。その印象はプロデューサーである私からもうはじまっているのだから…。
タクシーに乗り込み行き先を伝えれば、動き出す。そして、イアホンをつけて自分の入れた曲をかける…
瀬名「Ah…ah-ah-」
月永「Ha-ah-ah〜Ha-ah-ah-ah〜」
『♪〜♪〜』
どこにも公開していない私とレオと泉が歌った『Article of Faith』の仮歌…みんな用の仮歌だと言って録ったが結局二人が教えたのでこれはお蔵入りになって三人の音楽プレイヤーにだけ残っている。
『返礼祭』では最高の『アリア』を聞かせてくれたみんなに私からの最後の返礼は『戴冠式』という舞台を最高のものにすることだ。『Knights』のプロデューサーとしての最後の大仕事だ。私自身もこの三年間の集大成とも言えるステージになることだろう。
「Sei una buona canzone.」
『Grazie…まぁ、一緒に歌ってるう人の方が上手いんだけどね』
「……?」
『Non ti preoccupare♪』
タクシーの運転手が口ずさんだ歌を褒めてくれたが、私の耳に流れる歌声の方が明らかに上手い。
でも、そんなことはこの運転手には関係ないよね…。苦笑いして「気にしないで」といえば運転手は「わかったよ」と返事をする
あと10日…。彼も泉も、いったい日本でなにしてるんだろ…仕事あるのに、それよりも日本でやらなきゃいけないこと…とは?
というのも、私が日本を出発する前のある日レオと泉に呼び出されて喫茶店に三者面談状態にされてしまった。
窓際に私その隣にレオ、向かいに泉。つまり、私は逃げ出すことはできない状況にされてしまった。
瀬名「ほんとは同じくらいに出発の予定だったんだけど、ズラしてフィレンツェに行く予定。他の奴らも、悪いけど用事でズレちゃうからこの間のチケットは日時変更かけるから、そのつもりで…」
『えっと…ん?日付をズラすの…?えっ…』
瀬名「うん。とにかく、稽古はこっちでやるけど向こうではゲネとリハだけする。」
『舞台だよ?今までと全然違うのに大丈夫?』
瀬名「そこを調整するのがあんたの仕事でしょ?できないわけぇ?」
『……いえ、調整させていただきます。』
瀬名「あとこれ」
泉が鍵を一つ私の前に出す。
すると私より先にレオが反応する。
月永「な、なんだこれ!なんの鍵だ!おれの紡になにする気だ!」
瀬名「なにって、俺の部屋の鍵だけどぉ…?あんたが、予定ずらしたせいで業者の工事に間に合わないから代わりにお願いしようと思っただけだけどぉ?」
月永「なんで紡に渡すんだよ!」
瀬名「仕方ないでしょ!両親にわざわざヨーロッパまで工事のために行けなんて言えるわけないでしょ⁉︎」
『いいよいいよ。そのくらい、工事の日程送っといてもらえれば』
瀬名「うん、頼んだ」
『でも、私みたいなのに部屋の鍵渡すの良くないんじゃない?スーパーモデルさん』
瀬名「…あんただからでしょ?」
『じゃあ…、私の鍵も渡しとく』
月永「なんでだ⁉︎」
『等価交換。あとレオにはこれ』
泉の部屋の鍵を受け取って、自分のカバンから鍵とレオのために用意した封筒を渡す。
『封筒は家に帰って開けてね?いっぱい妄想してくれていいから』
月永「……?うん!わかった!」
瀬名「じゃあ、頼んだよぉ?」
『じゃあ一足先にフィレンツェの劇場の打ち合わせする。その情報をあんずちゃんに回してできるだけ実寸サイズになるようなレッスン室を借りよう。』
月永「その辺の交渉は任せたぞ!あと衣装も頼むぞ!」
『衣装はもう向こうに届いてるんじゃないかな?完成してるはず、私的には『返礼祭』の衣装もう一回見たいんだけど…。
とにかく上手くやるよ!伊達にワガママ集団纏めてないしね!』
そう言って、引き受けた仕事をこなすためにみんなより一足先に飛行機に乗り込んだ。
そして、少しして泉とレオが、さらに後に凛月にナルちゃんに司くんがやってくる。その間に、みんながスムーズに本番を迎えられるように仕事をするのが私の役割。
キキっとタクシーが指定の場所に止まる。私はお金を払って、タクシーから降りる。運転手がキャリーを下ろして「上まで持って行くかい?」と問われるが「大丈夫」といえば優しく「良い旅を」と言い残し、タクシーは去って行く。私は自分の部屋の鍵を出して、鍵穴にそれを通す。
そこには、なにもない部屋が広がっていた。今日荷物が届くから…あれとこれとと考えながら、身軽にしてテキパキと準備をして行く。
ひと段落したら、作曲しよう。この空の部屋もなんだか新鮮で霊感(インスピレーション)が湧いてくる。携帯を録音モードにして、鼻歌を歌いながら掃除をして行く。
さて、新生活の幕開けだーー。
エピローグ
『ふあぁ…その前に寝るべきか…』
レクイエム*誓いの剣と返礼祭 end.
……To be continued