レクイエム*誓いの剣と返礼祭
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
月永レオという男は
夢ノ咲学院の門をくぐる前は『アイドル』に大変憧れていた。かつての『チェス』というユニットのライブを目にした後の彼がキラキラした目で私に言ったのは「夢ノ咲に行こう!」だった。
そのまま、流されるままに入学したは良いものの思った通りにはいかなかった。
彼は一年から二年にかけて、憧れを崩され夢をボロボロに砕かれた。友人だと思っていた人達はレオと曲を天秤にかけて曲をとった。レオは限界を迎えていた。
『ずっとずっと…わからなかったの。』
あんず「え?」
『なんでレオは泉に質問しなかったんだろう。だって、レオのそばにいたのは泉だったのに…
私だったら、まず泉に聞いてた。…でもきっと、怖かったんだよね。だって、レオは泉のこと大好きだったもんね…。だから、自分を悪者にしたんだって…。』
あんず「どういう…?」
『……幼馴染の恋の話』
泉もとんでもない化け物に愛されちゃったもんだ…。鈍感なヒロインは恋になかなか気づかない。ほんと、鈍いっていうか…なんていうか。レオもレオだ…。いつもいつも素直でいてそうじゃない。きっと、他の方法がわからなくて空回りしたんだと思う…。
月永「ごめんなさい……。ごめんなぁ、おれは他の方法を知らないんだよ…いつもいつも『アイツ』が教えてくれてたけど…こればかりはなぁ…それに、天才だからさぁ、まともな青春を過ごせなくて。ちゃんとした人間関係の築きかた、学んでこなくて
でも。そんなの、言い訳にならないよな。ごめんなさい、傷つけて…
酷いことをいっぱ言って!でもぜんぶ嘘!大嫌いなんて嘘!みんなみんな大好きだ!ばらばらに砕けたおれを拾い集めて、、再び生かしてくれた『Knights』!そして、『アイツ』とちゃんと向かい合わせてくれた『Knights』!恩人だし家族みたいだし、友達で大事な仲間で……ああああ!言葉が出てこない!セナぁ、おれはおまえたちをどう表現すればいい?メロディは思い浮かぶけど言葉が出てこないんだよぉ、教えてくれよ!どうすればいい⁉︎」
瀬名「……!な、何でもかんでも俺に聞かないでよ…あんたにはもっと言葉のプロがいるでしょ……俺なんかに
俺も、わかんないよ。ちゃんとした友達って、あんたと『アイツ』が初めてだったから聞かれてもわからない!『アイツ』の方が理解してるかもしれない!どうしたらいいかわからない!あんたこそ教えてよ、俺はどうすればよかったのかなぁ⁉︎」
『ヒェっ…!』
泉が、レオ越しに私を睨みつける。その顔には全てを理解した上で後悔と悲しみが滲んでいた。「助けてよ」そんな顔でこっちに訴えかけていた。
瀬名「あんたの笑顔が大好きだった!それを見る『アイツ』の顔も大好きだった!でも、世界がそれらをあんたらから拭い去った!どうすれば取り返せたの?俺にはわかんなくて、何もできなくってさぁ…⁉︎無力感にへし折れそうだったのに、最後の最後にあんたと『アイツ』がそれぞれのやり方で守ってくれた!それは今、ようやく気づいたけど……遅すぎたよねぇ?
あんたには何度も馬鹿だのアホだの言ったけど、それは俺だよねぇ?あのとき、どうすれば良かったのか今でもわからない!今も、どうすればいいのかわからない!どうすれば笑ってくれる?何でもするから教えてよ、言いたいことがあるなら言ってよ……れおくん?」
泉の心からの叫びだった。レオは少し苦しそうな顔をする。でも、それもお門違いですと言いたげに司くんが遮る。
朱桜「周りをご覧ください。私たちがいます、そして何より急に始まった”Melodrama”じみた寸劇に戸惑い気味のお客さまたちがいます。全員が味方です、あなたたちの”Fan”であり”Family”です!なぜ、それを見ないふりして二人だけ…いえ、三人だけの世界に閉じこもっているのでしょう?『あの方』が自立して、自分たちが孤独で可哀想だと主張されたいのなら、まぁ構いませんけど
それは年長者としては情けない態度だとしか評せませんし、あなたたちに今も寄り添っている私たちに対しても礼を失してます
だから。謝罪ならあなた方を支えてきた『あの方』と私たちへどうぞ、瀬名先輩」
瀬名「……?えっ、ごめんね……?ちょっと待って、どういうこと⁉︎」
『ふふふ。泉、可愛い…あははっ』
あんず「可愛いって…」
司くんに説教された泉が戸惑いながら謝る。先ほどまで涙ぐんでいた目が驚きのあまり綺麗なアイスブルーがまん丸になっている。
凛月「ふふ〜。時計の針を進めるときがきたんだよ、セッちゃん
偉いね、ス〜ちゃん、ス〜ちゃんは、きちんと遠慮せずに踏み出した
その時点でもう俺より勝ってる、心から次の『王さま』に相応しいって認めてあげられるよ」
鳴上「右に同じ。ねェ、どうすれば笑ってくれるのかって言った?馬鹿じゃないのォ、あんたそんなことも知らずにずっとアイドルをやってたわけ?誰かに笑ってほしいなら、まずは自分が笑うのよ
求めよ、さらば与えられん……っていうのは神さまの話。アタシたち人間は、愛してほしいならまず愛するのよ。『あの子』がそうであるようにね♪アタシも、いつもそうしてる
今もね!みんな〜っ、愛してるわよォ……☆
司ちゃんも泉ちゃんも、凛月ちゃんもレオくんも!そして『あの子』もみんなみんな大好き!
いつも口癖みたいにそう言ってるレオくんも、ご両親からたっぷり愛されて育った泉ちゃんも……物心がついたときにはもう、それを知っていたはずでしょ?忘れちゃったなら、アタシたちが思い出させてあげる!そうでしょ凛月ちゃん、司ちゃん♪」
凛月「うむ。そういうことなら、怠け者の俺も全力を尽くしてあげるけど笑って笑って!レオくん、セッちゃん!とっても簡単だからねぇ、こうやるの……にっこり♪赤ちゃんにだってできることだし、人間だったら誰にでもできる!だから人間が滅ばないかぎり、ひとを笑顔にするアイドルも消え去ったりしない!
ずっと求められて必要とされるからねぇ、そういう意味での永遠はここにある…♪
俺も、そういうアイドルになりたい!お兄ちゃんの真似がしたいわけじゃない、そういう人間になりたい!みんなと一緒に笑顔で歌って踊って笑って生きたいっ、もう我慢できない!
♪〜♪〜」
凛月は、いつもとは違う。弾けたような笑顔で笑った。流れるように曲に歌声をのせる。それに合わせて、司くんもナルちゃんも歌い出す。
すると、レオが泉の肩をポンっと叩く。
月永「……どうするセナ、出遅れたぞ」
瀬名「ん……。あと、いいかげん長引きすぎなのにまだ歌う気満々なのがどうかと思うけどねぇ
まぁ好きにさせてあげよっか、『返礼祭』の主体は下級生だし俺たちが出しゃばっちゃ駄目なんだよねぇ、本来」
月永「うん。でも、引っこんでるのはもっと駄目
『アイツ』が見てる、一緒に歌おう、セナ
あいつらと一緒なら、おれたちが喪っちゃったはずのものも取り戻せる気がする
ううん……たぶんもう、いつの間にかそれはおれたちの胸のなかにあったのかも
あいつらが与えてくれて、一緒に育ててきた尊い絆がそれがあるかぎり、おれは生きられる
もう、どこにも絶望なんてない。探しても見つからないよ、キラキラ輝く光だけがある。『Knights』と『アイツ』が守ってくれた。この宇宙を……おれの世界のぜんぶを、輝かせてる
セナ、最後にひとつだけ教えて。……おれは、ちゃんと笑ってる?袖にいる『アイツ』は笑ってる?」
瀬名「うん。『アイツ』もあんたも笑ってる。そしてあんたらが笑顔なら、俺もたぶん同じだねぇ……♪
♪〜♪〜♪」
五人並んで歌い出す頃には、先日三人で作った新曲に切り替わる。全員が歌えば客席のサイリウムが波のように揺れる。
彼らを彩るように、今この瞬間は彼らが世界そのもののように感じた。
もう一人で彷徨わない
『私の世界はこんなにも美しい』
→