レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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『レクイエム』のゴールっていったい、何だろう…。
先代の『王さま』の死…?だって、王を殺す前提の戦いってただの自殺を促しただけではないのだろうか…。
そんな悲劇を新しい『王さま』は望んでいるのだろうか。
ううん…アイツはただの作曲バカのクソガキだ。殺すとか生かすとか…そんなものはきっとどうだってよかったんだ。
朱桜「”leader”……!」
月永「おお⁉︎いや今はおまえが『王さま』なんだから、その呼び方はおかしいだろ?どうした、何か涙ぐんでない?辛いことでもあったのか〜?泣いてる場合じゃないぞ!見ろ!」
朱桜「……⁉︎」
レオが指した客席は歌が始まってから、ひとつも消えないサイリウムの綺麗な海が広がっていた。
月永「ほら、見えるか?歌が始まってから、ひとつでも消えたサイリウムがあったか?涙を拭って見ろよ、ほらぁ!世界中がキラキラ輝いてるぞっ、わはははははは☆
おまえの望みは果たされた!『レクイエム』はおまえの勝ちだ!最後の最後に無理やりだったけど、おまえはおれの胸元にきっちり刃を届かせた!いつも綺麗にしてるおまえらしくもなく、無我夢中で玉座のもとまで這って!見事、こうして本懐を果たした!おれたち全員が証人だっ、わははは……☆
おまえは求められてる!望まれて玉座を手に入れた!でも、そこに座り続けるかどうかはおまえの自由!おまえが『王さま』だっ、あとは好きにしろ!いやぁ、さすがにちょっと感無量!おまえは、かわいい我が子みたいなもんだしなぁ……♪」
朱桜「……あなたの子供では、ありません
私の名前は、朱桜司です、誇り高き武門の家柄、朱桜一族の一人息子です」
司くんはそう呟けば、下を向き。不安そうにこちらを見る。
目があった気がして「前を見ろ!」と合図すれば、驚いた顔をして客席に向き直る。
朱桜「皆さん!ご声援ありがとうございます!私を支持していただいて、本当に何と言ったらいいか……この感謝を表現する語彙もありません!せめて、私は行動で応えようと思います!あなたがたの愛に!そこで、唐突かつ無関係な話に思われるかもしれませんが発表いたします!
このたび私は、誇り高く由緒正しき朱桜一族の新当主となりました!」
司くんの高らかな宣言で会場から拍手が起こる。体調が思わしくない司くんのお父さんを思っての措置とはいえ、いつかきちんと当主になるという宣言にも聞こえた。徐々に事業を受け継いでいく…さらに高みにいくように…
と宣言するも、ファンにはとっては何のことやらという感じでもある。しかし、朱桜一族は今後アイドルという部門にも注力して一大事業に着手する。それはきっと、前に天祥院くんが言っていたことと関係があるんだろうけど…。
その自信溢れる姿が…何だか夢を叶えた少年のようで、輝いていた。
朱桜「最悪の場合は、私個人でもやろうと思っていましたが……
こうして望まれて王になったからには、もちろん『Knights』の皆さんにも手伝っていただきます!私の手となり足となり働いてくださいね、先輩がた!」
瀬名「いやあの……。ほんとに勝手だよねぇ、ご存知のとおり俺はしばらくモデル稼業で忙しいんだけど?もちろん、あんたが望むなら、いくらでも手を貸すけど」
朱桜「はい!どうか可能な範囲でお願いします!私もまだまだ未熟者!当主としての役割も”idol”としての仕事も、どちらも完璧にこなせるなどと自惚れてはいません!
けれど!私はふたつの未来を提示され、どちらも手放すことはできませんでした!
私は、『Knights』のことが大好きです!先輩たちと過ごした一年間、ほんとに一秒たりとも退屈せず……幸せいっぱいでした!
たくさん泣いて笑って怒って、くだらないことを言い合ったり、かと思えば命懸けで舞台に立ったり!あなたたちと過ごしていると、どんどん私は知らない私を見つけられた!充実した青春を、人生を……あなたたちが与えてくれたのです!
けれど同時に、私は家族のことも愛しています…」
大事に大事に育てられた朱桜の愛息子は、誰が何と言おうと家族を愛し、その環境を悪とはしなかった。彼はそれを誇りだと思っているし、間違っているなんて感じもしなければ考えもしなかった。だからこそ、お父さんに跡を継げと言われても迷いなく「はい」と返事したそうだ。
しかし、その返事と同時に彼を襲ったのは『アイドル』としての自分だった。アイドルとしての仕事と当主としての役割の両立は並大抵の努力では補えない。それを「自分にはできない」と思ってしまうのは誰もが仕方ない。と言ってくれるだろう。
朱桜「悩んでいる私のもとに寄り添ってくださった『あの方』は仰ったのです。
彼や、皆さんご存知であろう天祥院のお兄さま……私と似た立場の方々は、己の家と”idol”の仕事を、公と私を見事に両立させています。もちろん苦労はされているのでしょうが、やってやれないことではないのです。それは決して、夢物語ではないはずです
『司くんならもっと完璧にできるよ』……ならば私も、やってやろうじゃありませんか!
そう思えたのは、『あの方』が言ってくれたからなのです!死ぬ気でやれば何だってできます、私は優秀ですから強くて賢いのですから。そのようになるようにと、愛されて育てられましたから…
そんな自負と誇りにかけて、きっとやり遂げてみせます
誓います。不遜な物言いに思われるでしょうが、ええ、私はそういう子です
そして。きっと『Knights』のお兄さまがたはご存知でしょうけど、私は欲張りなのですよ
何かを得るために、大事に抱えてきたものを捨てようとは思いません
ひとつだって捨てずに、ぜんぶ抱えたまま前へ進みます
けれど。やっぱり、たった独りでやろうとしても難しいと思いますから
どうか『Knights』の皆さん、そしてお集まりの方々……。何卒、今後もご協力と応援をお願い申し上げます
……『あの方』も、そしてあなたも。月永、レオさん」
お客様に一礼したのち、私の方に手を差し出してその手をそのままレオの方に差し出す。
レオは少しムスッとしていた顔を深呼吸と同時に笑顔で目を閉じる。その口角は上に持ち上げられていて、嬉しそうにも見えた。
貴方の為に
『ムスッとしてたな…なんだ』
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