レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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月永「……さぁ、最初に何の話をする?おれたちがずっと繰り返してきた、名前の話か?
今回のおれたちの決闘を、『レクイエム』って命名した根拠とか?それとも、やっぱり自己紹介が先か?なぁ、まだ誰だかわからないおまえ?」
朱桜「いいえ
まずは、いいかげんお喋りが長引きすぎですし……お集まりの皆さんは我らの内輪揉めやお喋りを観に来たわけではないのですから、歌いましょう
お客さまという君主に仕え、その望みを果たすのが騎士の本懐
そして、”idol”の使命でしょう
あなた、これから玉座を降りるあなた……。あなたも未だ”idol”だと仰りたいのなら、ともに歌いましょう
独りぼっちでは、寂しくて歌えないというのなら……お手をどうぞ
私はあなたに傷のひとつもつけられていませんから、誰かを背負う余力ぐらいあります
踊りましょう、あなた」
月永「……うん。歌おうか、おまえ」
司くんが差し出した手をレオが取る。完成した新曲を、司くんに差し出す。新しい曲ができた、おまえが歌ってみろ。みんながついてくるから、と
司くんは笑って「はい」と楽譜を受け取り、歌い始める。レオが続けて歌いだす。凛月がナルちゃんの背中を叩いて一緒に歌いだす。
『みんな…綺麗だね。世界は……あ…あんずちゃん……紙……紙とペン…!』
あんず「は…はい!すぐに!」
泉は並びかねているけど、幸せそうに歌うレオの顔を見ると歌詞が浮かび上がる。書き留めて行かないと湯水のように湧き上がる。
あんずちゃんが持って来た紙を少し乱雑に奪って、思いつくままに書き殴る。私の目から水が溢れ落ちるそれを制服の袖で豪快に拭う、何度こぼれ落ちても気にしない。とにかく、この頭を流れる音楽を描き続けないと本当に世界的損失だ…。
『う”…こういう時に限って…目が足りない…あんずちゃん…代わりに私の代わりにしっかり見て?レオは…レオは笑ってる?』
あんず「はい…すごく笑っています…幸せそうに…」
『う…ううぅ…そう…そう…』
あんず「司くんも、凛月くんも…お姉ちゃんも…幸せそうに歌っています…」
『……そう…。…よかったねぇ…』
鳴上「ごめんなさいね、『王さま』ーーーー」
月永「うん?何が?いいから歌えっ、いま王冠はそこのそいつがかぶってるからおれには命令する権利はないけど!
だから、普通に願って祈ってやるよ!手ぇ繋いで歌おう鳴上嵐っ、ようやく肩を並べられる程度には近づけたみたいだし!わははははは☆」
鳴上「………ええ。お望みのままに、月永レオちゃん♪」
月永「レオちゃん言うな!あっ、うっかり心の中身をつぶやいちゃったのを誤魔化してるな!照れ屋さんめっ、このこの〜♪」
鳴上「え〜?照れ屋さんなんて言われたの、生まれて初めてだわァ?アタシは常に大胆不敵で、誰に恥じることなく開けっぴろげにーー」
ナルちゃんはそこまで言って、黙る。
どんなこと考えているかわからないけど、きっといいことなんだよね。幸せそうな顔をしてる。
朱桜「鳴上先輩。あのう……ご機嫌麗しそうなところ、非常に申し訳ありませんが先ほど手渡された王冠、”performance”の邪魔なので一時的に返却しても宜しいでしょうか?」
鳴上「えっ?あァ、アタシたち踊りながら剣とか振るうしねェ……
確かに片手が王冠で塞がると煩わしいかも、頭から落ちないようにするための処理もしてないし
でも。アタシだって歌って踊りたいから、それは隅っこで途方に暮れてるあのお馬鹿さんに投げつけちゃいなさい♪」
瀬名「………」
朱桜「ふむ?確かに妙案です、受け取ってください……瀬名先輩!」
瀬名「えっ?うわっ?ちょっとぉ、あんまり粗末に扱わないでよねぇ⁉︎これ選ぶのに苦労したんだから……
お店とかまるで知らないそこのアホをふたりで案内して、ちょっと高校生には手が出ないのを選びやがるからアイツと値段交渉までしてさ?勘弁してよねぇ、こっちは新生活の準備をしたら貯金すっからかんになっちゃったんだから……仕事で失敗したとかならともかく、金欠で帰国〜って格好悪すぎるでしょ?」
鳴上「んもう。愚痴ばっかり零してないで、泉ちゃんも歌いましょ?早くしないとぜんぶアタシたちが持ってっちゃうわよォ、いつか後悔しても知らないんだからねェ?」
朱桜「あのう。持て余すようでしたら、やはり私が王冠を預かっておきますよ……?あくまでも、『預かる』だけですけど。労なくして、そのような重要なものを自分のものにするわけにはいきませんし『王さま』の命令には逆らえませんので、いちおう受け取っておきますけどね
いいえ。その権利を、王冠をかぶる資格を得るために……。今、こうして私は歌っています
無理やり『”Requiem”』の延長戦を求めたのは、そういうことです
皆さん!歌の途中ではありますが、ここで私から提案があります!差し出がましいことかもしれませんけど、聞いていただけますか?」
司くんは、王冠を授与されて自らが『王さま』に相応しいか、今見ている『Knights』を率いているのか、と観客に問いかける。
もしも、相応しくないと思えばサイリウムを消してくれてかまわないと…、それが会場の三分の一を越えれば自分に王たる資格はない。と自分で判断する。
朱桜「いくら身内が認めたからといって、皆さんが求めていないものに玉座を得る資格はありませんから
試すような真似をして申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いします
私は座るなら、納得して座りたいのです、『あの方』が愛した……玉座に
我らが先代の王は、与えられた王冠の重みにずっと苦しんでいました
当然でしょう、みんなの人生を預かるというのは人間には耐えがたい重責です。納得して『それ』を手に入れたのでなければ、私もいつか必ず同じ悩みや憂いに支配されてしまうでしょう後悔や不安、苦痛に耐えかねて、愛した友すら傷つけるかもしれません」
月永「………」
朱桜「私は、先代の二の舞を演じたくはありません。どうせ玉座に座るなら、その地位を受け継ぐなら……より前へ、より高く、より広い世界へ進んでいきたい‼︎‼︎
無限に広がる大宇宙の彼方まで!うっちゅ〜……!」
『ブフ…っ!……あぁ…!手が止まっちゃった…!』
月永「………」
朱桜「……と、このように!先代の真似をしようとしても無理なのでっ、恥を晒すだけなので!どうかお願いしますっ、これ以上の羞恥を受けるぐらいならいっそ殺してください!」
月永「わはは!盛大に自爆して逆ギレ気味に叫ぶって、すでにだいぶ正気には見えないけど〜♪生真面目なおまえが形振り構わず勝負を仕掛けてきたんだ、受けてやらなきゃ男が廃るよなぁっ?」
朱桜「はい!どうかお願いしますっ、これが私からあなたに捧げる鎮魂歌です!『”Requiem”』の、最終楽章です!
あなたが途中まで築き上げたものに、余計な付け足しをしただけ……と思われないように努力します!誓います!」
月永「うん、その誓いを受け取った。これで先代の『王さま』も…そしてアイツも、ようやく安心して死ねるよ
〜……♪」
アイツ、といった瞬間。レオと目があった、目から溢れる涙に気づいたのか一瞬目が大きく開かれる。
求める声を聞かせて
『処刑台に上がって王さまと女王様はどうなるの?』
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