レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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鳴上「………」
ナルちゃんが黙ると、ステージ上…いや、会場全体がシンっと静まり返る。
いつかの夢見た話が現実となって、その重圧に足元が耐えられなくなっているのではないかと…、笑顔を絶やさないその顔が歪み始めている。
その向こう側で司くんがジッとナルちゃんを悔しそうに見つめる。なんだかんだ言って一番レオの跡を継ぎたかったのは、間違いなく司くんだ。いちばん『Knights』を愛し、大事に想っていた。きっと、私たちの誰よりも…、彼がいたからこそみんな、その憧れに見合う騎士になろう。そう想って今日まで戦ってこれた。
『Knights』というボロボロの集団をここまで光を集め、凛々しい姿にしたのは司くんだ。
あんず「紡先輩、お姉ちゃんは…あ、鳴上くんは…受け取るでしょうか…?」
『……ん〜や!ナルちゃんには、悪知恵の働く奴がそばにいるから』
ステージを見れば、凛月がこっちを見てにんまり笑う。なんだか、今日はみんなやたら袖を見る気がするけど…人が泣いてるの見て笑ってるように見えるからそろそろムカつく…。
人の顔見て笑うなんてなんて失礼な騎士達だ…。
『あ〜あ、せっかくの王冠が吸血鬼のせいで弄ばれちゃうよ』
あんず「…?」
『ほら、見てて?ナルちゃんが暴走するから』
鳴上「大丈夫。『Knights』は滅ばないわ、そんな可能性は一切ない。当然でしょ、こんなに頼もしく美しい騎士たちが守ってるんだから
ーー王冠、こっちに頂戴」
月永「あ、うん。どうぞ……。ほ、ほんとに大丈夫か?無理してないか?」
鳴上「そう見える?ちょっとは女心についても学びなさいよねェ、そんなんじゃ紡ちゃんとられちゃうわよ、坊や♪
よいしょ。うん、なぁんだ……こんな王冠なんて軽いじゃない。アタシたちが毎日毎日、紡いできた絆の、歴史の重みに比べれば」
月永「……?」
鳴上「はぁい、お待たせ!いま王冠を受け取りました!『Knights』の新しい『王さま』、鳴上嵐でェす!傅きなさいっ、女王さまとお呼び!おっほほほほほ……☆」
『私、あんなだったっけ?』
あんず「…いえ」
鳴上「な〜んて、ね♪そうよ、アタシは女王さまであって『王さま』じゃないの!みんな、『Knights』のファンならご存知よねェ?だから、この王冠は……『王さま』の座はほしい人にあげちゃう!」
ナルちゃんは高らかに言い放った。それをレオがツッコむ。ナルちゃんは悪魔の囁きに耳を貸してしまったんだ。同じくこの結果に納得できない私の『友達』がーー
鳴上「新たに『王さま』に就任したものは、他の騎士たちにひとつだけ命令を聞かせられるのよねェ?
アタシ、今からその権利を行使するわ!みんなも証人になってねェ、ちゃんと言うことを聞かない悪い子がいたらアタシと一緒にお仕置きしましょ♪
まずはどっかで見てるアタシの『親友』!」
その瞬間、会場がざわっとする。メンバーでもない人間を急に出せば、それはそうなって当然だ。でも、彼の指す『親友』が女である私だとは思わないだろう。
鳴上「まずは感謝を伝えるわ!友達になってくれてありがとう、親友になってくれてありがとう!アタシを受け入れてくれてありがとう!命令はただ一つよ!
『自分の幸せを第一に考えて幸せになりなさい』!幸せが訪れるその時なんて待たなくていいの!
コソコソと何考えてるかわからないけど、ファンとかメンバーとか世界とか…他より自分をいい加減大事にしなさい!それがアタシからの命令よォ!」
ナルちゃんはそう言って様々な方向に指を指しウィンクする。それはきっとファンサービスとどこにいるかわからない私へのエール。四方に指さしたあと、こちらを向いて指さしてからウィンクする。
それは「もう他なんて考えないで」そう伝えるように…私は受け取ったよ。という意味も込めて拍手をおくる。そしてナルちゃんは改めてメンバーへと向き直る。
鳴上「じゃあ、改めて泉ちゃん!ううん……一度ぐらいはこう呼ぼうかしら、瀬名泉先輩!」
瀬名「えっ?あぁうん、何?良いんだけどねぇ、べつにもう『泉ちゃん』でも?」
鳴上「んもう、言うこと言ったら満足して気が抜けちゃったのかしらァ?『しゃっきり』してよねェ、そんなんでこの先……大丈夫なのォ?海外で、モデルとして大成功するんでしょ?海千山千の世界中の猛者たちと争いながら勝ち上がっていかなきゃいけないのよォ、その美貌ひとつだけで!ちゃんと天辺を取って、笑顔で凱旋してきなさいよ。あんまり長くは待ちたくないから、大急ぎでね……
『なるべく迅速に華麗に、世界一のスーパーモデルになりなさい』それが、アタシからの泉ちゃんへの命令♪」
瀬名「ん〜……。命令っていうより祈りっていうか、激励って感じだけど
OK。俺を誰だと思ってるわけ、そのぐらい余裕だし」
鳴上「あはっ、すっごい自信!でも、自信がある子がいちばん綺麗なのよねェ!たっぷり自分を愛して、世界中のひとからも愛されてね……先輩♪」
ナルちゃんと泉は、笑い合う。いつも美しさを比べてあっていたと言っても過言ではない二人は、心の奥底で繋がっている感じがした。
そんな二人の間を、凛月が割って入る。
凛月「ふふ。順番的に次は俺かなぁ、女王陛下……なんか、不思議な気持ちがけど……まぁいいや、俺への命令は?王冠を押し付けたいっていうなら、拒否るから
リーダーが留年経験者っていうのも対外的には問題でしょ、うちの兄者は恥知らずだから平気の平左で偉そうにしてたけど」
鳴上「ふふ。すべての問題が霞むぐらい、優秀だったっていうのもあると思うわよォ。そして、凛月ちゃんもその点では同じなんじゃない?
でも。本人にやる気がないのに、無理やり押しつけるのは非道だわ。アタシ、かわいい子には優しいの……ここは甘やかしてあげる
凛月ちゃん。あなたはとっても賢い子、いつでも全体を見て最適な手を打てる戦略家
今回は不調だったみたいだけどねェ、そういう日もあるわ
『雨の日も風の日もあるわ。けれど、どんな嵐の日でも笑顔で人生を楽しみなさい』
疲れたら休んでもいいから、何ならアタシが背負うから……一緒に進んでいきましょう」
凛月「それが、俺への命令?そんなことなら、言われなくても」
鳴上「ウフフ。あんたはさっきアタシに助言をくれたから、簡単な命令しかしないのはそのお礼とあの子の為の約束よォ……
今後もこんなふうに、互いに与え合い支え合っていきましょ♪『友達』になりましょ♪」
凛月「はいはい。仰せのままに〜、女王陛下♪」
凛月は、笑顔でナルちゃんを見つめた。
『友達』と言っても、きっとただの仲良しこよしというわけではない。きっと、ナルちゃんの言う『友達』は…もっともっと奥底で繋がった意味があるんだろうと思う。
女王さまのご命令
『やっぱり凛月の知恵、か』
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