レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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駐輪場でレオとふたりで月を見ていると、偶然通りすがった真くんが話しかけてくれた。
遊木「あぁいや、僕は単なる通りすがりです。こういう大規模なライブの日は仕方ないけど、校門前でダフ屋が商売したりしてるから注意しに行ったりとか
ついでにゴミ拾いをしたりとか、色々とお仕事があるんです」
月永「ふぅん?大変だな!まぁでも来年度以降は、そういう面倒くさいことまでアイドルがやる必要はなくなるっぽいしーーー
だからこその貴重な経験だと思って、がんばれ!どんなことでも芸の肥やしになる!」
遊木「はぁ……。どうも、貴重なご意見ありがとうございます」
月永「わはは、他人行儀すぎる!何かおれ警戒されてない?怖がらなくていいのに〜、べつに取って食ったりしないから!な?」
『…いや、う〜ん』
遊木「あ、いや……。ごめんなさい、失礼でしたよね」
月永「いいけど!おまえ、おれのこと嫌いなんだろ?できれば好きになってほしいけど、無関心より嫌いなほうがいい!むしろ!もっとおれを嫌ってくれよ、遊木真くん♪」
レオはにんまり笑って真くんを見る。レオと真くんの過去のやり取りを考えれば、毛嫌いする理由も理解できる。しかし、それでも話しかけてくれる真くんは本当にいい子だなと思う。
遊木「んっと。どうでもいいですけど、そろそろ『Knights』の出番なんじゃないですか?紡先輩もですけど、せめてもう楽屋に入って、仲間に顔を見せないと心配されちゃいますよ?先輩はたぶん自分で思ってるよりずっと、みんなに愛されて必要とされてますから
あなたがいない間、泉さんがどれだけ不安定になってたか……教えてあげたいぐらいです
僕もそのせいで迷惑を被りましたし、文句ぐらい言う権利ありますよね」
月永「うん。セナの罪はおれと紡の罪だ、そう言えるぐらいにはあいつはもう他人じゃない
だからこれからまた離れなくちゃいけないのが、自分の身体がちぎれるぐらい痛くて辛い」
遊木「離れる……?月永先輩と泉さん、進路は別々なんですか?意外だなぁ……。泉さん、独占欲が強いのに」
月永「わはは☆ほんとに知ったようなこと言うよなぁ、家族か⁉︎
……まぁ、いったん離れとく必要があるよ。出会うのが早すぎた気がするもん、おれたちは」
レオは悲しそうに私の目を見る。月を写したその瞳には涙は流れないにしろ水々しくこちらを見つめていた。
私たち三人は未熟で不安定な中、盲目的に支えあうように抱き合って脆くも崩れて行った。それが許されるの完成された一人前の人間だけなのに、人生の経験は足りていなかったんだ…。
月永「おれも紡も…あいつも一旦、ちゃんと自分だけの人生を経験して一人前になるべきだ。その後……どうしたって、おれたちはまた巡り会う
運命的に。それから、改めておれも自己紹介から始めるよ
朱桜司、鳴上嵐、朔間凛月………
あいつらにも『おまえは誰だ?』って尋ねたけど、意外と、おれがいちばん知らないのは…ううん、おれらがいちばん知らないのは瀬名泉とかいうやつだから」
レオは、純粋に瀬名泉という男を愛していたのだ。その見た目や仕草に惹かれて寄ってって、そのまま寄り添い合っていた。レオはそんな泉を私に紹介してくれた、きっと共に愛する対象にしたかったんだ。レオはいつもいつも私と好きを共有することを好む、それを私も受け入れていたけど…結局ふたりとも瀬名泉を理解できなかったんだ。
月永「ちゃんと出会い直して、一からあいつのことを知っていきたい
これからも永く一緒に過ごすなら、急ぐことはない……段階を踏みたい。あいつのことも、他のみんなのことも……『Knights』のことも一から知っていく
鎮魂歌を聞きながら、今日、おれもそうして生まれ変わって人生を新しく始める。紡と一緒に」
遊木「……よくわからないんですけど。何で、そんな話を僕にするんです?」
月永「わはは。お月さまに向かって独り言をするより、有意義だろ?紡はずっと黙ってるからさぁ〜。
よぉし、がんばろう。大丈夫、大丈夫、大丈夫……。今度こそ、大丈夫。信じる、おれが大好きなあいつらのことを」
遊木「……?あのう、もしかして体調が悪かったりします?あれなら保健室に運ぶなり、誰か呼んでくるなりしますけど?」
月永「ん〜……いや、大丈夫!余計な心配すんなよ、生意気だぞ〜♪見てろ!おれらはおまえの大好きな『お兄ちゃん』の生涯の戦友で、仕えた『王さま』と『女王様』!格好よくて頼もしい、歴史に残る大天才……おれの名前は月永レオだ!
よろしくな、遊木真くん!わはは、予行練習も完璧……!あとは思い描いた夢を、理想を現実にするだけ!そういうのは大の得意だ!ううん、あいつらと一緒なら簡単にできちゃう気がする!わははは☆」
レオは高笑いするなか、「はぁ…」とため息をつく。
『真くん、ひと段落してるから行っていいよ。レオは私が連れていくから、声かけてくれてありがとう』
遊木「…あっ、はい。」
『うん、ごめんね』
真くんはぺこりと頭を下げて、校舎の方へと走り去って行った。レオはうんうんと唸っている様子が見える。
『レオ、そろそろ行こっか。』
月永「大丈夫…大丈夫…」
『レ〜オ!』
私は、レオの手を取る。レオは迷子みたいになっている瞳を私に向ける。その目は不安を抱えているのか、それとも希望に溢れているのかわからない表情をしていた。
『首を切られるまでは君は『王さま』だ。格好悪い姿を見せないで?』
月永「……うん。」
『私は信じてる。レオも、泉も、凛月も、ナルちゃんも……司くんもみんなを信じてる。『返礼祭』の大トリなんて、最高じゃない?いいステージになるよ』
月永「…うん…うん…。」
『レオ!私を見て!』
レオの両頬を手で挟んで下を向いた顔を私に向ける。レオは驚いた顔で私を見つめる。
『私を『Knights』に誘ってくれてありがとう!最後まで最高の『オペラ』を響かせて?あなたの声で私を殺して?』
月永「…殺すって…」
『…な〜んてね。ほら、笑って。小さい頃みたいに笑って見せて?』
月永「笑ってって言われて笑うのは難しいぞ…」
『じゃあ…魔法でもかける…?』
月永「…?」
『……ん、』
私はレオの右頬に軽くキスをする。レオは、目を大きく見開き私を見つめる。みるみるうちにキスした頬が真っ赤に染まっていく。
『伝えたいこと、私もある。終わったら話そう』
月永「…ぁ…うん…え…?」
『……え?』
月永「キス…された…」
『…、奪っちゃった〜☆』
月永「今まで、自分からしたことないくせに!何でこういう時だけ!」
『だって、レオ面白い顔してる。ほぐしてあげようと思ったのに…』
月永「ぎゃ…逆に…緊張してきた…」
『…え⁉︎何で⁉︎』
月永「…だめだ…緊張だ…あっ…これは口にしてくれないと死んじゃう…」
『はぁ…そっか。ふざける元気があるならいいね』
月永「…えぇ〜…ちょっとくらいいいじゃん」
『調子乗るな『王さま』』
そうやって、先を歩けばしょんぼりしてレオはついてくる。ほんとに調子乗りやがって…なんて落ち込んでる相手にいうべきではないか。
そろそろ『返礼祭』の最終章だ、最後の最後まで…頑張ってもらわないと新しい物語はかけないのだ。
さぁ、奏でてくれ。『Knights』のensembleをーーーー。
貴方にかける魔法
『キスなんて、そんな簡単にするわけないでしょ』
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