レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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『返礼祭』当日ーー
本番まで時間もあるので、音楽室に篭ってピアノを鳴らし続けていた。
『〜♪〜♪』
歌を口ずさんでは音符の下に詞をつける。最後の日だからか、新たな始まりだからか…、今日は調子がいい。いつも以上に作曲の進みがいい。
『ふふ〜♪ふふふ〜ん♪』
月永「ノリノリだなぁ〜」
『レオ!お疲れ様!』
月永「そろそろ始まるから迎えに来た!調子が良さそうだなぁ〜」
『うん。いい感じ、3曲くらい書けた!』
先生に渡せるように曲ごとに楽譜をまとめていく。それをカバンにしまって、入り口にいるレオの元へいけば手を差し出される。
『…なに?』
月永「エスコートしてあげるよ、『女王様』。お前のとっておきの処刑台にな」
『……そう……ふふ、じゃあ一緒に行こうか『私たち』の処刑台に』
レオが差し出した手に手を重ねれば彼はそれを強く握って、歩き出す。ショコラフェスの結果を踏まえた前半戦のステージでは『Knights』はそれを踏まえてかなりいいステージが用意されている。
『レクイエム』の順番としては、ナルちゃん、司くん、凛月の順番で三回繰り返す。
誰がどこに新曲を加えるかは不明だが、それもまた楽しみの一つだった。
月永「紡は誰が『王さま』になると思う?」
『わからないよ。だからゲームは面白いんでしょ?誰が勝つかはわからない。板の上で何が起こるかわからないからこそ舞台は楽しい。それはアイドルも変わらないでしょ?』
月永「その通りだ!どうなるかわからないから面白い!どんな結果でも笑顔で過ごせれば儲けもんだ!」
『儲けもん…、そうだね。この三年間の全てがそうだったかもしれないな…。宝物みたいな時間をいっぱいもらった。ありがとうレオ』
月永「…え?急になんだよ〜」
『あはは☆感謝しかないなぁ…大好きだ』
月永「…もっと言って」
レオは歩みを止めて、私を振り返らせる。いつもとは違う真剣な表情が私を貫く。驚いた顔をするが、レオの表情が真剣でそれでいて優しい感じに口が滑ってしまった。
『レオくん。卒業おめでとう…、一緒にいてくれてありがとう!今日という日が君にとって最高の『一日』になりますように!…大好きだよ!』
月永「紡ちゃん、卒業おめでとう。ずっと待っててくれて支えてくれてありがとう。色々伝えたいことがあるんだけどそれは全てが終わった後に伝えるよ。でもこれだけは、言わせて。
大好きだ」
『…うん、ありがとう。』
月永「絶対、最後まで袖で見てて。俺から目を離さないで」
『…ちゃんと見てる。レオを、『Knights』を…どんな結果になっても、この三年間は私にとっても宝物だ。だから、エンディングまでしっかり見届けるよ』
レオはまた私の手を取り歩き出す。私は黙ってついていく、これから起こる返礼祭はどうなっても私にとっての最高の『オペラ』になるように祈りを込めてーー。
そして、始まった。『返礼祭』前半戦ーー。
『返礼祭』としては現時点でもかなり好成績を収めている。それぞれのやり方はあるとはいえ、その気迫は鬼気迫るものがある。王さまと女王様を処刑台に送るために…。いや、みんな揃った『Knights』を取り戻すためにみんな命がけでライブに取り組んでいる。
ファンは時に愛しく、時に残酷だ。『Knights』のマンネリ化をいち早く察するのは紛れもなくファンのみんなで、この『レクイエム』はそれを切り替える大きな変革の一歩になるだろう。
ナルちゃんのステージは、まさに嵐のようなステージ、意外なほどに激しく荒々しい。いつもは優しく微笑んで、誰かが喧嘩してると「まぁまぁ」って宥めてくれるナルちゃんが、今回は積極的に前へ出て、衝突も厭わずに全力で自己主張している。それに合わせてみんなも我々もと前に出て莫大な推進力を発揮している。魂を燃やして、貯めこんで宝物を全部放出して戦費に変えて………どんな敵にも負けない、そう伝えてくる感じがした。
司くんはナルちゃんとは違う。恥知らずで向こう見ずな、末っ子らしい舞台だ。レオの大量に作った新曲、そして頭から私の作った新曲。彼にとって、どの曲も我ら『Knights』にとっての『Air』であるのだと訴えかけてくる。当然みたいな顔で、小生意気に…。『王さま』と『女王様』の作った新曲は、『Knights』の最大の武器。それを、作らせて、毎回の舞台で新衣装やお金のかかった演出を惜しみなく入れてきてる。「お金ならあります!」といっているのが見てわかる。御曹司らしい、しかしそれが彼の生まれ持った武器でもある。でも、新しい武器は馴染むのに時間がかかる、加えて未熟な司くんには手に余る代物だ。だからこそ、与えた一曲の『Air』も思ったパフォーマンスになっていない。機能しない武器でも集めれば、城壁となる。司くんも必死というのはヒシヒシと伝えてくる。
凛月は…、他の様子を見てどうなっても臨機応変に対応できるように練られた戦略。機能はしていないが、彼との関係からか…。わかるのは身内の争いに乗り切れていないのが伝わる。彼がゆっくりと眠ることのできる居場所が、内乱によって荒らされている。でも、『永遠』なんて言葉は存在しない。変化が怖いのはみんな一緒…、でも生き物は常に変化していくんだよ。
そう思いながら凛月を見つめるとふと目が合って「助けて」と訴えかけてきた気がした。ごめんね、凛月。勝負の世界は常に非情だ。
戦場では、どんな大切な人でも勝利のために捨てなければならない時がある。
愛も、友情も、何もかもを捨てて救わないといけない
鎮魂歌を届けて
人間とは希望を持ち続けないと死んでしまう生き物
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