レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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翌日、レオのご乱心騒動から一夜明けて私はまたギターを持って外にいた。先日とは違い凛月ではなく、私の隣には泉とリトル・ジョンがいた。
『…何か相談事でもありますか』
瀬名「…べつに」
『じゃあ何で約束の時間でも約束の場所でもないここに君はいるの』
瀬名「…べつに」
『……やめてくれない?その「…べつに」ってやつ。チョ〜うざぁい』
瀬名「…べつに」
どうやら、話を聞いていないようで泉はボーッと明後日の方を向いていた。その膝にはリトル・ジョンがいていつもなら嫌がるにも関わらず、気にすることなくその体を撫でていた。
『…はぁ〜、心ここにあらずだねぇ〜。そんなに昨日の『れおくん』がショックだったんだね』
瀬名「毎回思うけど、あんた切り替え早いよね…昨日はあんなにショックって顔してたのに今日はピンピンしてる。…なんなの」
『…なんなのって、見ればわかるでしょ?君らの大好きな『女王様』だよ〜。趣味は作詞、特技はピアノ〜♪『Knights』の従順なプロデューサーだよ〜♪』
瀬名「……ふふ。なにその曲」
『笑った!泉はやっぱ、笑顔が素敵!だから、笑って?私たちは卒業なんだし、笑顔が一番!別れは涙より笑顔の方が良いでしょ?
鎮魂歌ーレクイエムーだって〜、素敵なネーミングだねぇ。『Knights』にピッタリの名前だと思う。
私たち『Knights』の、第三の決闘形式…。今まではチェスに喩えた名前をつけてきたけど、今回は歩兵が王に成りかわるような…、詰め将棋みたいなものだと認識してる。
誰かが苦しんで、悲しんで、血まみれの戦いをしてきた『ジャッジメント』とも違うあたり、完全に『Knights』に染まった私じゃなくてあんずちゃんに任せて正解だと思う。その詳細を聞いてあんずちゃん『らしい』と思った。』
瀬名「まぁ…そうだけどさ、それでも『Knights』のお家芸は女王様の作ってきたようなものじゃん。
確かに、『七夕祭』や『ハロウィンパーティ』『スタフェス』……場合によっては、死ぬよりよっぽど残酷で過酷な展開になる…。」
『…ふふ。恐ろしい子だよねぇ…。生き地獄か明るい未来か…後輩たちは真剣にやらなければ、大切なものを失う。…でもそれを自分にも課してくるあたりあの子らしい…』
あんずちゃんは昨日『レクイエム』について解説してくれた。
『レクイエム』は、『返礼祭』と同時に行われる。しかし、『Knights』とあんずちゃん以外の人間には告知もせず密やかに行われる。流れは『返礼祭』の流れに寄り添うように進行する予定だ。前後半に分かれた中で、前半は『ショコラフェス』の結果を踏まえたうえで与えられた舞台でユニットが演目を披露していく。
『単独のパフォーマンス…その中にもお客様の採点で勝敗が密かに決まっていく。前半終了時に、得票数で序列がつく。』
瀬名「そこに目をつけて、裏でユニット内で勝敗をつけるってなかなか性格悪いことするよねぇ〜」
『そうかな?頭いい後輩じゃない…。『返礼祭』でいい点をとれば大きなステージで『Knights』を見せられる。先輩に甘えてばかりの後輩はもういらないの、ひとりひとりが成長する必要があるんだよね…。しっかり、そうやって舵を切れるのは敏腕プロデューサーのあんずちゃんらしいところだと思うけど』
瀬名「…ふ〜ん。だから、王さまが『レクイエム』なんてもの作っても怒りもしないわけぇ?」
『……怒ってるよ?っていうかずっと怒ってる。モヤモヤして、イライラして、呆れて悲しい。でもそれって、私が『Knights』のことを宝のように思ってて愛して、可愛がって甘やかしてるからだと思うんだ…』
甘やかしは慢心を生む、愛しさは油断を…隙を作り出す。『Knights』は実際そうだ。勝負をすれば、絶対勝てるという自信からミスが多々あった。それは彼らの慢心が生んだ見るに耐えない隙そのものだ。それを引き締めるのはいつもレオとあんずちゃんだ。私は、ただ見てるだけか一緒に対抗する側だった。
『レオが不意に落とした爆弾はいつも爆発する可能性を秘めていて、油断する私たちを引き締めてくれている。今だって、後輩たちを見ればわかるでしょ?
去りゆく人間に…王さまに引導を渡して今後の『Knights』の行方を左右する権利を奪いあうための祝宴
そして、私への返礼なんて可愛い後輩がやりそうなことじゃん…』
瀬名「…あんずもすごいことするよね。
三人のそれぞれのステージのプロデュースも引き受けて『Knights』のプロデュースを引き受けるなんて、…それで成績が3番以内に入らないと、『Knights』のプロデュースはしない。入れば、革命と返礼は成功する。」
『返礼…と言えるのかはわからないけど、今後の『Knights』においては、私よりあんずちゃんの方が重要になる。
手を抜けば『Knights』は解散。成績が3番以下なら『Knights』はあんずちゃんというプロデューサーを失う。成績が3番以内ならみんな笑顔でハッピーエンド♪レオも私も普通の騎士になれる。『Knights』の返礼祭と同時にプロデュース科の返礼祭まで行っちゃうんだよ。発想豊かで私は嬉しい…!』
瀬名「…王さまの言葉信じてないの?」
『あぁ…『アイドルを辞める、解散する』って話?…あはは、う〜ん本心なのかなぁ?』
瀬名「でも、同意してたじゃん」
『……べつに、レオと隠居するのはありかなぁって?でも、みんなを傷つけるのは許せなくて…』
瀬名「結局、あんたって優先順位そんな変わってないよねぇ
付き合う前は王さまを優先しそうで、嫌だぁ〜とか言ってたのに」
確かに、前はそんなことを思っていたが結局レオも『Knights』の一部な訳だし。ある意味優先していることには変わりない。あの人は…『返礼祭』は『Knights』が愛する王と女王を人質に、みんなの士気をあげようとする意味もある…と信じてる。なんで、このギリギリで内輪揉めをさせようとしているのかはわからないけど…。
博愛主義者の『大嫌い!』にはどこかに本気の気持ちも篭っている気がした。
『そろそろ時間だね!行こう泉、何も言わない王さまは置いといて!私もやりたいことがあって!泉にしか頼めないのっ!』
瀬名「…はぁ…あんたの事見てたら落ち込んでる自分がアホらしくなってきた。わかったよ、女王様に付き合ってあげるぅ〜」
『よく言った!さて、ビシバシ行くぞ〜瀬名泉〜君の綺麗な歌声を響かせてくれ〜!』
瀬名「…?歌声?」
私は、泉の腕を引いて校舎の中へと戻って行く。レオが『レクイエム』を計画しているなかで、私だってただ見ているだけというのはつまらない。傍観者はもう辞める、何度そんな言葉をこぼした事だろう。もう本当にここの学生じゃなくなるのなら、最後くらい大きな爆弾をあげるのもいいだろう。
私の思惑
『一緒にその不安を吹き飛ばそう!』
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