レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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月永「………」
朱桜「返事をいただけないなら、勝手にそうだと決めつけます
振り返ってみれば、あの『”Judgment”』を経て我ら『Knights』は強靭に生まれ変わりました
あなたという王を得て、そしてずっと紡お姉さんが築こうとしていた団結力を……絆を生じさせて
その結果、我ら『Knights』はこうして誰もが認める強豪”Unit”として返り咲きました
皆さん、異論はありませんね?」
月永「………」
司くんが続ける言葉を誰も否定せずに黙って聞いている。それを肯定と認め、司くんは話を続ける。
朱桜「結構。だからこそ今、卒業というどうしようもない節目を前に……あなたは再びご乱心したふりをして、刃を片手に暴れ回って我らをむやみに傷つけているのです
本当は守るつもりだったお姉様にまで、刃が掠めていることにも気付かず。愚かにも見えますが、死にさえしなければ、傷は塞がり瘡蓋ができます。どんな害毒にも免疫ができて、さらに強く生まれ変われます
私の父も、一時は危うかったものの……。若いころに得ていた免疫によって、一命を取り留めました
人間は、我々は、そういうふうにできています
あなたが、教えてくれたのです。無菌室のような箱庭で、大事に大事に育てられていた私に……だからこそ。もう経験した、知っていることだからこそ……今度はあなたが面倒くさそうに真相を語り出す前に、この朱桜司が私見を申し上げましょう
片手袋を投げつけましょう。ええ、これが我らに再び必要な通過儀礼だというのなら……。喜んで、決闘をいたしましょう
我らの王よ、我らだけではなく人類の歴史にも残るかもしれない偉大な天才児よ。あなたの突然の乱行に、我ら、そして貴方の大切な女王陛下は心を痛めています
今のあなたに、税金を受け取る資格はありません
そういう時代でもありません、時代錯誤の封建主義の君主に……その物言いに不満を述べましょう
我らは、私はあなたを弾劾する。これ以上の無法は認めません、今すぐ刃を下ろして神妙にお縄につきなさい
断頭台まで連れて行ってさしあげます、それが私の……あなたへの最後のご奉公
決闘いたしましょう、我らが王よ!いいえ、久方ぶりの内紛を……我らが再び前へ進むための『”Judgment”』をいたしましょう!それがあなたの望みだと、私、勝手に決めつけました!」
司くんは長く語り、だんだんと気が入ったのか。最後には少し肩を上下に動かしながらレオを睨みつける。
それを聞き終わったレオは、少し沈黙したのちに「…ふぅ」と軽く息を吐いて一度ゆっくり目を閉じてから開いた瞳を司くんに再度向ける。
月永「……ほんとに勝手だなぁ?
わはは!でもまぁ、そんなおまえだから愛してるよ……♪
でも!残念なことに、今の『Knights』には『王さま』を弾劾するための仕組みがない!『デュエル』は他の国を攻めるための代物だし、『ジャッジメント』は同じ国の有力者同士でどっちが正義か決めるための決闘裁判!どちらも女王様が優しい心を削って、作り上げた争いの仕組みだ!大抵、おれが勝ったからいつでも内部粛清っていう結果になったけど!
それと今はどいつもこいつも慌ただしくて、傭兵を雇おうとしても無理っぽしなぁ?あきらかに『王さま』より下に属するおまえら平の騎士が、王座にいるおれに一方的に挑戦する権利はない!そんなのはもう決闘じゃない、軍事クーデターだ!
ううん、革命だ!それを望んでもいいけど、おれたちが築きあげた旧態依然とした仕組みのなかにはその方法がない!だったらどうする、そこの誰かわからんおまえ!」
朱桜「ですから、私の名前は朱桜司です。………存在しない仕組みならば、今この場所で新たにつくるしかないでしょうね
あぁ、まったく残念なことに………。こういうのって、我らの宿敵たる『Trickstar』のやり口ですよね
何度も刃を交えるうちに、悪影響を与えられてしまったのでしょうか?」
月永「わはは!悪い影響なんてあるわけないだろ、どんな刺激もおれたちを進化させてくれる!
革命!それはおれたちを一度は滅ぼしかけた、つまりおれたちにとっての宿敵である『fine』とかのやり口でもある!わははっ、勝利するためには敵手を真似るのも一興!
安心しろっ、わざわざ新しく仕組みをつくらなくても大丈夫!読みが浅いなお子ちゃまがっ、何のために紡のもとで学び続けたあんずをこの場に呼んだと思ってる⁉︎」
みんなが一斉にあんずちゃんに視線を向ける。あんずちゃんはここまでの流れをわかっていたかのように自信に溢れた表情をしていた。そして、私と目が合う。
月永「こいつは何者だ?おれが名前を覚えてるってことは当然、こいつが何者か知ってるってこと!
おまえらもご存知だよなぁっ、こいつは女王様無しにすればおれたちの唯一の『プロデューサー』だ!年度が切り替わり、『プロデュース科』が増員される寸前のこの瞬間だけは!こいつがおれたちを支え導く唯一の存在、法を司る女神であり人民を加護する天使だ!
こいつに、おれは頼んでおいた!こいつとの利害の一致もあり、ちゃんと期待に応えてくれた!ううん。それ以上に面白い返答だった!
たっぷり返礼をしないとなぁっ、耳かきだけじゃ足りなすぎる!
ともあれ!あんずにおれたちの新たな決闘、その仕組みをつくってもらった!王を弾劾するための、革命するための新たな『デュエル』………その名も『レクイエム』!」
『レクイエム……?』
朱桜「………鎮魂、歌?」
月永「うん!決してモーツァルトの遺作に準えたわけじゃないぞっ、おれはあいつ嫌いだし!断頭台に送られる王と女王へ捧げる鎮魂歌っ、それをおれたち全員で奏でよう!
響かせよう!おれたち『Knights』のアンサンブルを……!
嫌ならべつに良いぞ!おれは紡を連れてこのまま消え去ってやる!二度とおまえらには関わらないっ、紡のおうちに帰ってごはん食べて、お風呂に入って、二人でぬくぬく寝る!
おまえらを傷つけたのに、そんなふうに安穏として一日を終える!むかつくよなぁ、気にくわないよなぁ?そういうとき、おれたちはどうする⁉︎もちろん、決闘するしかない!さぁ始めようっ、剣を抜け!騎士なら戦え!『王さま』だって殺してみせろっ、おまえら男の子だろ⁉︎
めそめそ泣きながら、花束とか渡したりして辛気臭くお別れするのか?そうじゃないだろう、おれたちは⁉︎『Knights』は戦う集団だっ、最後もやっぱり戦場で花と散ろう!わははははははは☆」
レオの高笑いが、スタジオに響き渡る。
その声は、清々しさと楽しさが含まれている気がした。
王の乱心の理由
『私たちの最後になるかもしれないensemble』
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