レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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最近の新曲作りはピアノよりギターを弾くのが、マイブームとなっていた。
ピアノという決まった場所でしかできないものよりギターのように持ち運びが可能なものの方が都合がいいからだ。
作曲におけるレオと私のようなものだ。私がピアノでレオはギター、それが最近レオと行動を共にするようになったからなのか。少し私にも変化があったのは事実。
『まったく…どうしてどいつもこいつも…先輩に心配させる真似をするわけ?私がレオみたいに暴君じゃなかったことに感謝しなよね』
凛月「ふぁあ、ふ…♪紡は暴君じゃないからこそみんな話しやすいんだよ」
『レオは暴君だけど、ちゃんと話し聞いてくれるし相談にも乗ってくれるよ?なんなの…私は『Knights』1人にひとつの便利ロボットじゃないんだよ?
実際、こうやって凛月が愚痴を聞いてくれるからいいけど、身が持たない。私もう少しで卒業式なんだよ?もう居なくなる人間に相談するのかな。』
凛月「1人にひとつとはいかないよねぇ…だって紡は王さまのになっちゃったし」
『…そうやってからかうのを怒る気にもなれない…。どうすんのさぁ〜民に押しつぶされて女王様は死んじゃうんだ〜。それを守るのが騎士でしょ?民の味方か凛月〜!』
凛月「俺は『お友達』の味方だよ」
『どうせなら…、私も問題を起こすべきだった。『Knights』の一員らしく私が戦いを持ってくればもっとみんな焦ってそれに集中してくれたかなぁ〜?』
凛月「物騒なこと言わないでよ。もう充分に問題しかおこってないのに」
『問題…?起こってるのか…?』
凛月「女王様のいない所で静かに始まってるよ。」
凛月は少し思いつめた顔をして下を向く。私の知らないところでみんなの想いが募っていく。ナルちゃんも、何か考えているところをよく見るし、それとは違う相談をよくされる。
みんな本質的なことは相談しないのに、違うところはよく相談する。まるで離れるのを嫌がって痛みを訴える子供のようにも思える。
『何が問題なの?凛月は何が不安なの?』
凛月「結局いやいや言っても紡は自分から相談ごとにつっこんでくるよね」
『え…?何、罠なの…?』
凛月「違うよ、問題はある。けど…、ただの俺の問題なのかもしれない…。
何もかもわかったような顔して、何もわかってない俺の…」
『…?』
凛月「なんだか、近頃違和感があるんだ。だから不安で怖くて、風邪ひいたときみたいに寒気がする
俺たち『Knights』は、確かに快進撃を続けてる。どんどんアイドルとしての評価を高めてるし、ライブ対決も負け知らず
ファンも急増してるしねぇ、未来は明るいよ」
『問題ないじゃん…』
凛月「去年までの殺伐とした雰囲気がぜんぶ悪い夢だったみたいに、みんなで集まれば笑いが絶えない…平和で幸せで、どんどん仲良くなれてる実感がある
何の不満もないはずなのに。たまに怖くなる、俺は何か致命的な勘違いをしてるんじゃないかって
また、破綻が近づいてるのに、それに気づかず見過ごそうとしてるんじゃないかって
たまに感じるんだ、変な軋みを。たびたび合わない予定、噛み合わない会話、共有されてない情報
仲良く寄り添ってるつもりで、どっかが擦れ違ってる
みんな同じ気持ちで笑えてるはずなのに、全体を遠くから見たら、ばらばらになってるみたいに思えて
今は上り調子だから、そういう違和感に気づきにくくなってる
たぶん、何事もなければ決定的な破綻は迎えずに……
セッちゃんや『王さま』…それに紡が完全に卒業する日ぐらいまでは、このまま済し崩し的に調子よく愉快に過ごせるかもね」
『……でも、いつかくるんだね。破綻する時が』
凛月「うん…いつか後悔するようなことが、何もかも壊れちゃうような悲劇が俺たちを直撃しそうで、怖い
それが明日なんじゃないかって思うと、夜も眠れない
…ねぇ、考えすぎだよね?これまで辛いことがたくさんありすぎたせいで、悲観的になってるだけだよね?ねぇ…俺たちは、『Knights』は大丈夫だよね?もう二度と、壊れたりしないよね?
適当でもいいから…うん、って言ってよ。女王様」
『さぁね…知ったことじゃない。』
凛月「…え、意外と真剣に悩んでるのに返答が荒いよ…」
『…みんな、いつか来る別れに備えてる。私たち卒業生ができることは在校生が生き抜くための知恵をあげることだけ。それをうまく使えないとして、それで壊れたらそれは守らなかった先輩のせいなわけ?
違うでしょ、これからの『Knights』を守るのは凛月…、君ら在校生なんじゃないの』
凛月「…先輩ぶらないでよ。紡のくせに」
『失礼な〜!…私だって、壊して欲しくないけど私にできることは…正直ないよ。無責任に大丈夫って言わないこと知ってるでしょ?』
凛月「…じゃあ紡も同じように不安?」
『もちろん、不安!ていうか常に不安と背中合わせ!
レオがいつか居なくなるんじゃないか。『Knights』が解散するんじゃないか、明日には音楽を作れなくなってしまうんじゃないか。
常に考えてる、それでも私にできるのは今目の前にあることをやって守っているつもりにならないと…それこそ夜も眠れない』
いつ、何が理由で世界が滅びるかなんてわからない。いくら『Knights』が人気でも一度綻びを知ってしまえば、いつまたあの苦しみが来るかと怯えてしまうのはしょうがない。
そんな話をすれば凛月はさっきより不安な顔をして私を見る。
『凛月、騎士なら自分の大事なものを命懸けで守るべきでしょ。いつかを考えるよりも今できることに立ち向かってみればいいんじゃないかな?自論だけど』
凛月「…紡は今できることをしてるの?」
『もちろんだよ〜、『Knights』のために女王様は働くよ〜。あはは☆まぁ今凛月のせいでしっかり手が止まってるけど!』
凛月「本人の前でしっかり悪口」
『気にしない気にしない。……さて、凛月!暴君には気をつけて!私は君の…騎士達の味方だ!でも甘やかすのはよくない!どうやら君らは私を暖かく送り出してくれないみたいだから!私もそれに受けて立とう!』
凛月「…?なんの話?最近王さまにより似てきた感じがする…」
『ふふ。ま〜だ内緒!早く『返礼祭』終わってほしいって思ってたけど、まだまだ時間がある!悩め少年!
悩みを乗り越えた先に、素晴らしい未来があるだろ〜!アディオス☆』
私は座ったままの凛月を置いてその場を去る。天祥院くんが言っていた依存というのはこういうことも入ってくるのかもしれない。順風満帆だったからこそのその感覚に甘えて、危機感が薄くなっていた私たちには多少の試練では足りない。きっと、大きな壁が必要でそれをきっと彼は成長痛と例えたのだろう。
『だったら、私も大きな花火を最後にあげてやろうじゃないか!あはは☆素晴らしい曲が書けそう!』
君の不安
『不安があるのは悪いことじゃないよ』
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