レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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また、数日の時間がすぎた。
あと一週間で『返礼祭』と迫ったある日レオは朝から我が家にいた。
月永「紡、おはよ!」
『え…おはよ。…え?なんで』
月永「ちょっと付き合ってほしい!早く着替えて!」
『いや、朝ごはん…』
紡母「あら、紡ちゃんのご飯レオくんが食べちゃったわよ?」
『…はい?いや、なんで?』
月永「いいから早く!」
『えぇ…』
私はレオに言われるがまま制服に着替えて朝ごはんも食べれずに家を出る羽目になる。寄り道にコンビニでおにぎり一つ買ってレオに腕を引かれて走り出す。
気づけば、おにぎりは胃の中に…私は校舎の中にいた。レオはある部屋を目指してグングンと進んでいく。そして、目の前のドアをバァアアンと音を上げ開く。
月永「失礼しまぁああす!テ〜ンシくぅうん、遊びましょぉおおお☆」
『うるさっ…』
天祥院「……⁉︎あ、あぁ驚いた。心臓が止まるかと思ったよ、僕を死なせると高くつくからね?
何なんだい月永くん、こんな朝っぱらから……?」
そう返ってきたものの、天祥院くんの姿は見えず。レオはキョロキョロとあたりを見回す。どう考えても会長の席から聞こえてくるのだが、ともすれば彼は座り込んでいるのかと、少し焦って駆け寄る。
『天祥院くん…?大丈夫…⁉︎』
天祥院「おや…紡ちゃんもいたのか…静かだったから気づかなかったよ」
月永「おっ、発見!何で床に跪いてるんだテンシ、大丈夫かぁあ⁉︎何かの発作か?救急車とか呼ぶっ?」
天祥院「不要だよ。ちょっとね、床にお茶を零しちゃって」
確かに、彼の足元は少し湿っていて机にはポタポタと雫が落ちていた。私は彼から雑巾を取り机から拭いていく。
『普通溢れてる大元から拭くでしょ。もう、私がやるから座ってて倒れられても困るし』
天祥院「紡ちゃんは、僕のこと軟弱な男に見過ぎじゃないかい?」
『心配してるだけだから、ありがたく受け取っておくべきだと思うけど』
天祥院「…そう…じゃあお願いしようかな」
月永「ほんとに?大丈夫ったら大丈夫か?無理はするなよ?」
天祥院「……うん。無意味に飛びついてきて僕の肩を揺すらないでほしいな、月永くん
こういう触れあいに慣れてなくて、むしろ具合が悪くなってくるぐらいだから」
『ちょっと、レオ…天祥院くんの体調が悪くなったらどうするの。責任取れないでしょ。やめなさい』
天祥院「…ほんと君たちはカップルというより母と子のような関係だね…。」
私は雑巾でカーペットを拭きながらレオを注意する。天祥院くんの言葉にレオはムキになりつつも揺すっていた手を離す。
天祥院「君こそ大丈夫なのかな、『王さま』くん?何もかも忘れたような顔して、さも友達かのように僕を心配なんかして……頭でも打ったの?呼びかたも、いつの間にやら『テンシ』に戻ってるし」
月永「ん?うん、言われてみればそうだ!おまえは友達じゃなくて憎たらしい敵だった!でも今はそれどころじゃないんだよぉっ、助けてテンシ!一生のお願い!」
レオは手を合わせて天祥院くんの目の前にズイっと体をよせる。天祥院くんは頭に?を浮かべてたじろぐ。しかし、その珍しさからか友達だった頃の言動であるがゆえか…。それを了承する
月永「ほんと?ありがとうテンシ〜、おまえはやっぱり良いやつだな!愛してるよ〜☆」
天祥院「う、う〜ん?何だろうこれ、調子が狂うなぁ……?だいたい、愛の言葉はそこにいる彼女だけに言ってあげるものじゃないのかい?」
『……そういうのやめてよ…あくまで学校ではプロデューサーとアイドルだよ』
天祥院「月永くんは、そう思ってないみたいだけど?」
レオは私の肩口に頭をグリグリとして、私は天祥院くんをジト目で見つめる。天祥院くんは苦笑いして肩を竦める
天祥院「とりあえず、目の前でされると『ムカつく』から謎の愛情表現は止めてくれる?どうも大事な用件があるようだし、ちゃんと椅子に腰を据えて話そうか」
月永「うん!ごめんな〜、おまえが何か知らんけど忙しそうなのに?」
天祥院「もう慣れたよ。それに卒業間際だしね、身辺がバタつくのはお互い様だろう
立つ鳥跡を濁さずで、心残りのないように今できることを必死にやるしかないからね
これから旅立つ卒業生たちは、誰もが走り回っている。僕だけ楽隠居を気どってはいられないさ、むしろーーーここからが本番だしね」
『…??』
月永「あぁ、何かまた悪巧みしてるんだって?ちらっとそういうことを言ったら、セナが何か嫌そうな顔をしてたぞ〜?」
天祥院「……彼に話したの?」
月永「え?う〜ん、テンシが何か企ててるっぽいことは言った!あれっ、むしろ言っちゃ駄目だった感じ?ごめんごめん、おれそういうの本当に気が回らなくてっ♪」
『待って待って、どういうこと…?』
天祥院「それは構わないよ。紡ちゃんもいずれ知ることになる。ううん、瀬名くんも含めて誰もが知ることになるしね
これから先も、アイドルとして生きていくなら
まぁ瀬名くんの場合、卒業後は半ばアイドル活動を休止してモデルの仕事に集中するようだから………知るのは、ずいぶん先のことになったのかもしれないけど」
月永「……えっ、嘘?なにそれ聞いてない!」
レオは天祥院くんの方を見ていた顔をギュインと私の方に向ける。私はその勢いにビクリと肩を揺らす。確かに、泉はアイドルの活動を控えてモデルの仕事に集中したいと言っていた。結局行き先も決まっているわけだが…まさかレオに言ってないのか。人のこと言えないぞあいつ…
『まぁ…あくまで休止で前も言ってたけど『Knights』は脱退しないから…』
月永「あいつめ〜っ、ひとにはさんざん『アイドル辞めないよね?』みたいに怖い顔して言ってたくせに!」
『それは…言うでしょ…』
天祥院「いつも思うけれど。君たち、親密な相手に限ってなぜか大事な話をしてないことがあるよね……
絆なんて簡単に壊れる、大事な相手だからこそ心配りを忘れてはいけないよ、もちろん紡ちゃんもね?
それが三年間、夢ノ咲学院で過ごして得た教訓のひとつだ」
『…はい…』
私たちはみんな言葉足らずにもほどがある。みんな遠回りだ…。私とレオは泉を介して、泉は私を介してそれぞれ伝わる謎の構図がレオが帰ってきてからの癖になりつつあった。それは、今後バラバラになる私たちにはできなくなってしまう。天祥院くんの言う通り絆なんて簡単に壊れてしまう…
天祥院「閑話休題。大事な話をする前にお茶を入れ直そうか、だいぶ発酵しちゃってお茶というより血みたいな味がするけれど……
さんざん民草を苦しめてきた『皇帝』と『王さま』…それから『女王様』には、むしろ相応しいだろう?」
『うん…じゃあ私が入れてあげるよ。給仕は男より女の方が向いているしね…?』
月永「紡が入れてくれたってだけで、どんなお茶も最後の晩餐に相応しい♪」
天祥院「恋は盲目、とはよく言ったものだね…」
天祥院くんは苦笑いして私を見るが、彼のその揶揄いを受け入れることはできないので目を逸らす。
最後の晩餐に、お茶というのはいかがかと思うが…それにしてもこの茶葉…開けて少したったのか。駄目になっている気もする…。
まぁ…飲むのはこいつらだしいっか☆
貴方のお願い
『絆が壊れないで』
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