レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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あれから、数日…。『Knights』は少し不穏な空気が流れていた。
いや、訂正しよう学院全体が不穏な空気だった。来週には返礼祭に加えて卒業式がある。
こんな状態で、無事に卒業できるのか。笑顔で卒業となるのか。不安でしょうがない…。
『はぁ…なんで落ち着いて卒業できないのかなぁ…』
あんず「紡先輩も大変そうですね…」
『あれ…あんずちゃん……ちょっと、顔色悪すぎない?休んでる?』
あんず「あはは…、なんとかって感じです…」
ガーデンテラスで物思いにふけっていたらあんずちゃんが青白い顔で近づいてきた。またプロデュースに追われて自分を犠牲にして…。
そういうところはこの一年変わっていない気もする…
『あのねぇ〜プロデューサーも人間なんだから、定期的に休みなさいって言ったでしょ?なんでそんなに自己犠牲に走るのかなぁ〜?それとも先輩のいうことは聞けないのかなぁ?』
あんず「うっ…すみません。どうも熱中しちゃって…」
『気持ちはもちろんわかるよ?けどねぇ〜私も居なくなるんだし、先輩になるんだよ?あんずちゃんは後輩に自分みたいになれって教えるのかなぁ?』
あんず「はい…すみません…」
『私が教えられることってもう…そのくらいなの…あんずちゃんはすごいプロデューサーに成長したからさぁ…自分を大事にくらいしか言えないよ…
きっとこれからくる後輩はいろんな人が来るよ?ミーハーな子もいれば真面目な子にわがままな子。アイドルもプロデューサーも個性豊かな人間が増える。
けど、在校生は絶対あんずちゃん…あなたを頼る。そうしたら、もう助けてくれる先輩は居ないの。あなたが最上級生だから。
私も手が届かないところに行っちゃう。だから、せめている間はお姉ちゃんのお願いをちゃんと聞いてよ』
あんず「……はい…。」
『あぁっ、怒りたかったわけじゃないの!ごめんね?ちょっと八つ当たりかも…』
しょぼんっとするあんずちゃんをフォローする。なんと、情けないたった一人の可愛い後輩にモヤモヤをぶつけて本当に情けない。
『ごめんね…?ちょっと『Knights』もあまり良くない雰囲気で…、モヤモヤしてて八つ当たりしちゃった…ごめん』
あんず「いえ…先輩のいう通りなのでなんとも…ところで、雰囲気が良くないっていったい何が…?」
『最近、司くんが登校してなくて事情はなんとなく知ってるんだけど家の事情だから話していいのかもわからなくて…。
それに、レオや泉がちょっと過剰に反応してるっていうか。まぁ気にかけてるってだけなんだけど…はぁ…あとちょっとで卒業なのに温かいままいけないものかなぁ…でも痼を残して卒業するのは気持ちよくはないよね…』
あんず「家の事情だったんですね…卒業式間近で皆さん出し切ろうって感じなのでは?」
『返礼祭だしね、ファンにも、メンバーにも関わった人みんなに恩を返す。ありがとうって伝えるイベントだもんね…。いいよねぇ〜私には関係ないけど〜』
あんず「関係ない…ですか?」
『そう…返礼祭は私には正直関係ないって思ってる。アイドル科じゃないから返礼祭で歌うわけでもないし、下級生主体イベントだから三年の私には関係ないって感じ
先生からも、特にないって言われたから学校の指定曲を思いつく限り書き続ける生活だし。『Knights』の衣装と曲とステージ図だけ。これが私の仕事。』
あんず「返礼…先輩に…」
『私の後輩ってあんずちゃんだけなわけだし、あんずちゃんにプロデューサーとして教えられることなんてないし…私は心穏やかに卒業式を待っていたいのに、なんでうちの王さまは大人しく卒業してくれないのかなぁ…』
あんず「あぁ…月永先輩ですね…なるほど」
レオはまた何か考えているように思うけど、そのことについては何も話してくれはしない。それがまた私をモヤモヤさせるのだからしょうがない。
『秘密はやだって言ったんですけどねぇ〜…』
あんず「でも、紡先輩も秘密、あるじゃないですか」
『……え?』
あんず「卒業後の活動拠点、日本にするつもりでいるんですよね?」
『…あぁ…秘密にはしてないよ。聞かれないから答えないだけ。レオとは卒業後の話あまりしないの…お互い今を生きてるって感じで』
あんず「聞かれないからじゃなくて自主的に話すんですよ!月永先輩は絶対自分と一緒にいてくれるって思ってますよ!」
『えぇ…ついてきてとか言われてないし…』
あんず「なんでそういうところはクールなんですか!カップルなんですから!もっと言うべきです!」
『…ん〜、今はそれどころじゃないっていうか…。レオはどうやって次の王さまを決めるのか考えてるんじゃない…?今は私より『Knights』のこと考えていて欲しいし、そうであってほしいかも…』
けど、その話を私にしてほしい…だから私の心はモヤモヤとしていてイライラもしている。
そんな私とは裏腹にこの事情を聞いて、あんずちゃんは何かを思いつたような顔をして私の方をまっすぐに見る。
あんず「紡先輩、私やります!」
『えっ?うん…?』
あんず「紡先輩が無事に卒業できるように!もちろん笑顔で幸せに!」
『うん…無事卒業はできるよ?意外と模範生徒だったよ私…』
あんず「絶対!返礼祭見にきてください!」
『え?いや、当日もいるよ?』
あんずちゃんはそれだけ言って走り去っていった。別に返礼祭には普通に参加するのだが、私の話を彼女は聞いてくれたのか…。不明だけど、何か面白いことを思いついたのか、私のせいで彼女がこれ以上忙しくならないように祈ることしかできないわけだけど…
まぁ…あんなに輝いた笑顔で見られたら「余計なことはしないでいい」なんて言えるわけないよね…。
『ほんと、あんずちゃんは仕事人間なんだから…そこを治しなさいって言ってんのに…どいつもこいつも人の話聞かないなぁ〜…』
そうこぼしてもその言葉は誰も拾うことなくガーデンテラスに静かに響いた。
後輩の思いつき
『静かに卒業させてよねぇ〜…』
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