レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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朱桜「……」
『……』
朱桜「……はいぃ?申し訳ありません、ちょっと聞き間違いをしたようなのですけど?
どうも私、先ほどからずっとボケ〜っとしていますよね?ふふ♪念のため、繰り返しますよ。ええ、その必要があります
”leader”。あなたは今、この私が次の『Knights』の王だと仰った……のですか?」
司くんは驚いた顔でレオを見る。私もあまりの驚きに開いた口が塞がらなかった。ナルちゃんが「開いてるわよ」と顎を上に持ち上げて私は口を閉じる。
みんなが黙っているので、私も大人しくふたりのやりとりを見る。卒業するから、レオが『王さま』を譲る…在校生にリーダーを譲るのは当然と言えば当然だ。しかし、『Knights』にとっては王様が変わるというのは当然のことではすまないのだ…
月永「音楽の話より重要なことがあるのか?ん〜……まぁ、あるんだろうなぁ人によっては!大丈夫大丈夫、おれも最近はそういうのもちゃんと尊重することにしてるから!
大人になるんだからなっ、これから!月永レオ、『王さま』の座をスオ〜に譲って普通の男の子に戻ります!
どこにでも社会人に、おれはなる……☆」
瀬名「……ちょっと。『普通の男の子』って何なわけ、不穏な響きだけど
もしかして、あんたまたアイドル辞めたい〜みたいなこと考えてるんじゃないよねぇ?」
月永「ん?そう聞こえた?どいつもこいつもお耳の調子は大丈夫ですか!っていうか……この場合、おれのコミュニケーション能力に難があるってことなのか〜?」
『…難があるのは間違ってないけど…。えっと…どういう状況何だろこれ』
鳴上「んっと。王冠の授与とか、大事な思い出になりそうな儀式だから口を挟まず見守ってたけど……紡ちゃんも理解してないみたいだし、どうも様子が変だからちょっとアタシから一言だけ良い?
もしかして『王さま』、司ちゃんに何も説明してなかったんじゃない?」
月永「ん?何についての説明⁉︎だいぶわかんなくなってきた!」
レオはわからないという顔をして凛月とナルちゃんのところへ行く。ふたり曰く、先日レオから司くんに今後の『Knights』を任せることを告げたらしい。わざわざ一人一人別室で真面目に話をしてくれた。そう話す2人に嘘偽りもないだろう。
みんなは次の『王さま』について話し出す。
『王様が変わっちゃうんだね…』
瀬名「まぁ俺らは卒業するわけだしねぇ…いつまでも卒業生が王様やってるユニットなんておかしいでしょ」
『うん…そっか…』
『Knights』というグループは名前を変えていくことにはなれていた。鎧を何度も着替えその姿を変えてきた。しかし、本当の代替わりというものを味わったことがないのだから不思議だ。
去年は三年生はいなかったし、戦い続けて衰退し持ち直してこの5人で山を乗り越えてきた。そのおかげで司くんという今後生まれることのない、宝物を見つけたのだから戦いも捨てたものではない。
みんなもきっとそう思っている。汚れを知らない、今後の『Knights』にはその美しさこそが必要だ。それを持って導いていけるのは他でもない司くんだと考えている。
瀬名「これからの新しい『Knights』を率いていくのはーーーーかさくんが相応しいと俺も思う
なるくんもくまくんも、偉そうに君臨するのは性に合わないだろうしねぇ……かさくんは実力的には不安があるけど、それこそ他の二人が万全なサポートをするだろうから大丈夫でしょ
ま、俺には次のリーダーを選ぶ権利は特にないから……あくまでも個人的な意見だけど」
月永「わはは!この民主主義の現代においては、『個人的な意見』は『王さまの意見』と等しい重さだぞ!『Knights』は個人主義の集まりなんだろ、おまえら?
おれは『王さま』とか、めちゃくちゃ偉そうな感じに呼ばれてるけどほんとに中世の封建社会の君主ってわけじゃない。一票の重みはみんなと同じ
だからまぁ、また叱られる前に話を戻すけど。おれが次の『王さま』にスオ〜を選ぶ、っていうのも絶対に逆らえない命令ってわけじゃない
おれが、おれ個人がそう望んだだけだ。嫌なら拒否すりゃいいけど、どうする?実際、ナルやリッツだけでなく……ちゃんとスオ〜にも事前に相談しとくべきだったな」
それでも、今までの司くんの言動のせいで彼なら二つ返事で引き受けると思っていた、信じ込んでた、とレオはこぼす。確かに、今までの言動からずっとレオは司くんに期待をしていたようにも思う。それは私も同じだけど、まさかこんなすぐにそんな時が来るとは正直思っていなかった。
ずっとずっと、司くんが騎士になったその時から昔のレオに似ていると思った。未熟で、無垢で、傷も汚れも知らない尊い私たちの末っ子…レオも同じように思ったから継いでほしいと感じたのだろう…。
レオは司くんを愛しい表情でみる。
月永「あっ、この場ですぐお返事ってのは難しいかもしれないな?持ち帰ってじっくり検討してくれてもいいぞ、せっかく演劇部から紡が借りてきてくれた王冠が無駄になっちゃうけど!そっちとは別に、適当に話しあっとかなきゃいけないこともあるしな
『おれたちらしく、ちゃんとやる』としか決まってなかった、二週間後の『返礼祭』について詳細を固めとく必要があるし
いったん、そっちの課題に移るか?といっても、それこそ『返礼祭』からは下級生が主体になるっぽいし……舞台のことに関しては紡がもう動いてくれてるし…。おれが、こうやって偉そうに仕切るのはお門違いだと思うんだけど」
『……レオ、いったん休憩にしよう。整理が追いつかない』
朱桜「……」
月永「スオ〜?どうした、紡の言う通り休憩にするか?それかせめて相槌ぐらい打ってくれる?寂しいだろ〜?」
朱桜「あ、頭を王冠でガンガン叩かないでください。それお姉様が借りてきたものなのでしょう?壊したら大変ですよ。休憩も大丈夫です…。
それよりも。あのう、こういう大事なことについては……。
返事を先延ばしにするのは失礼だと思いますので、この場で私の意見を表明いたします」
司くんは、強い瞳でレオを見つめ返す。レオは少し茶化すが本題に戻す。司くんは『Knights』の王冠を受け取るのか、受け取らないのか……スタジオ全体に緊張感が走る。
朱桜「……受け取れません」
月永「…………はい?あれ、スオ〜やセナの耳の遠さがおれにも感染した?聞き間違えか?『受け取れない』っていったのか、スオ〜……?次の『Knights』の王にはなりたくない、ってこと?」
朱桜「……はい。ええ、決めました。せっかくのご提案ですが、辞退いたします。
私、朱桜司は、我ら『Knights』の王に相応しくありません。自分の大事な、生まれ育った家すらも、守れないような弱い男ですからーーー」
その言葉はスタジオをシーンとさせるには十分な程、悲しく苦しい言葉だった。
君の答え
『事情を知る私には否定も肯定もできない』
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