レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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時は戻り、『返礼祭』の二週間前ーー
『Knights』は今日も今日とてライブを行い、それも大盛況のうちに終幕した。みんなは根城であるスタジオに戻って、一息つき過ごし方はそれぞれだった。私は常に置いてあるホワイトボードに今後のスケジュールを書いていく。
月永「わはははは!みんなお疲れさまっ、今日のライブも大盛況だったな!」
瀬名「はぁ?大成功ってほどじゃないでしょ〜、良く言っても『いつもどおり』じゃなかった?ううん、平均以下かも。いくら俺たちの調子が良いって言ってもさぁ、それで慢心してケアレスミスが増えてるようじゃ先行きは暗いからねぇ?」
月永「ちがいます〜!『大成功』じゃなくて『大盛況』って言ったんです〜!ぷぷっ、勘違いして文句を垂れるセナかっこわるい♪」
瀬名「………」
『ちょっと、揚げ足取りって…そっちの方がかっこ悪いんじゃない?』
月永「揚げ足取りじゃなくて、事実を言ったまでです〜〜」
揚げ足をとるレオとそれに実力行使する泉、私は作業の手を止めてそれをなだめるように間に入る。しかし、泉はレオへの意地悪をやめない。
月永「痛い!痛いですセナさん!暴力はやめていただけます⁉︎」
瀬名「その敬語は何?他人行儀だよねぇ、チョ〜うざぁい!」
月永「わはは!近ごろ大人の前で喋る機会が増えたので!授賞式とか打ち合わせとか!紡に言われて言葉遣いに気をつけようと思ったんだけど、おれ切り替えが苦手だから普段から丁寧に喋るように心がけてる!」
『切り替えができるように訓練してるんだけどなぁ…』
瀬名「訓練って…あのねぇ…。それに丁寧なあんたは気色悪いんだけど……。まぁ、必要か」
『ずっと一緒にいるわけじゃないから、もう少し自立してもらわないとって思ってるもんで…』
月永「うむ!ずっと一緒にいるけど、紡の言うことには一理も百理もある!セナきゅんもおれを見習って、真面目な良い子になりまちょうね♪」
瀬名「……」
月永「痛い!だから痛いですセナさん!首筋に手刀を打ちこむのをやめてください!もぉ〜っ、知的生物なら物理的に痛みを与えず言語を用いろ
口があるのに喋らないのは剣があるのに鞘から抜かないのと同じっ、宝の持ち腐れ!」
瀬名「あんたは言っても聞かないでしょ〜?
あと、これは暴力じゃないからねぇ?乱れた髪をわざわざ俺が手で直してあげてるだけだし、人聞きの悪いことを言わないでくれる?」
泉はそう言ってレオにビシバシと手刀を入れる。じゃれているようにも見えるが、何か思うところもあるのだろう。そのイライラが伝わってくる。レオは、この3ヶ月自立できるようにと自主的に打ち合わせに行ったり、仕事を取ってきたりと大人にどんどん近づいていた。敬語はその一環な部分もある。たまに外れてしまうが、大人の前では多少続くようにもなった。
月永「いじめっこの常套句だ!実際は意地悪してるだけなのに、さも善行を働いているかのように美辞麗句で彩るな!助けて紡先生〜、このクラスでいじめが行われています!」
『だって〜凛月先生、ナルちゃん先生〜。早く止めてあげてください〜』
凛月「いえ、我が校にいじめなんてありません。仰る意味がわかりかねます、その子は普段は優しい真面目な子ですし……何かの勘違いでは?」
鳴上「あはっ、ちゃんとネタに乗ってあげる紡ちゃんも凛月ちゃんも優しい♪
ウフフ♪さしずめ、アタシは生徒を惑わす美しき女教師!椚センセェと同僚って設定でね、真夜中にこっそり二人だけの職員会議を…」
『すごいセクハラ発言だけど……』
すごい発言に振り返って見ると少し、神妙な顔をした司くんがそこに立っていた。「大丈夫?」と声をかけるとそれに合わせてナルちゃんも司くんの方へと体を向ける
鳴上「どうしたのォ、司ちゃん?最近たびたび暗い顔をしてるわよねェ、さっきのライブでも心ここにあらずって感じだったし…お姉ちゃんは心配よォ?」
朱桜「……え?はい、何か仰いましたか鳴上先輩?」
『本当に大丈夫なの?』
鳴上「んもう!……せっかく先日『姉妹』の契りを交わしたのに、どうして『お姉さま』って呼んでくれないのかって聞いたのよ」
『え…そうだっけ』
朱桜「いえあの、もっともらしい顔でデタラメを述べないでいただけると。ご存知の通り、私のお姉さまはあんずさんと紡お姉様だけです」
瀬名「そいつらもあんたの姉じゃないでしょ〜。……そのあんずも心配してたよ、かさくん近ごろ学校の授業も欠席が増えてるみたいだって
それで何か知ってるかってさ、わざわざ俺の教室まで聞きにきたぐらいだから上に気遣いさせんじゃないよ、末っ子が」
『泉、そんな言い方しないの。司くんにだって事情があるんだから……。』
朱桜「いえ、瀬名先輩の言う通りです…。先輩方は私の本当の兄や姉ではないのですから、ご機嫌を損ねないようにお行儀良く振舞うべきですよね」
…泉が言いたいのはそうじゃない。そう言うことじゃないんだよ。もっと先輩を頼って素直になって欲しい。お行儀良く他人のように過ごす、そんな関係じゃないよねって言いたいのに、遠回しな言い回ししかできない泉にはそれを司くんにストレートに伝える術を持っていなかった。
スケジュールを書き終えて、私はそんなもどかしい2人の間を取り持とうと一歩踏み出せば、それはオレンジ色に阻止されてしまう。
月永「とおりゃああ!今日はおれが炬燵に一番乗り!ここにおれの旗を立てよう〜☆」
凛月「残念。ここはすでに俺の領土なんだよねぇ♪そして、紡まで連れて来てくれて感謝〜♪」
『ちょっと!2人とも離して!』
月永「うおリッツ、いつの間に⁉︎くそ〜、猫みたいにすばしっこいな!つうか、紡にさわんな!」
鳴上「あはは。ふたりとも、そんなに早く飛びこんでも炬燵はまだ温まってないんじゃない?それに女王様が怪我しちゃうから離しなさい〜女の子は大切に扱うものよォ?ってか、これはいつまでスタジオに置いとくつもり?」
『そうだよ〜。このスタジオは私たちの個室ってわけじゃないんだし、授業や仕事で使うわけだから。今さらだけどすごく邪魔になってるよね?』
月永「それもそうだ!う〜、でも名残惜しい!もっとおまえと一緒にいたいっ、愛してるよ炬燵〜♪」
凛月「は?俺の炬燵に馴れ馴れしく愛を囁かないでくれる?」
月永「何ぃ?愛しきグネヴィア、またの名を炬燵を奪い取ったのはおまえだったのかリッツ!人呼んでサー・ランスロット、おまえだけはおれを裏切らないと信じていたのに!」
『ね〜、離して』
凛月「ふふ。アーサー王よ、男の勝利とは玉座を手にすることだけではないのだ」
『ね〜え〜〜!』
謎のごっこ遊びを始めるふたりとその間で何故かずっと腕を掴まれ、炬燵から出ることを許されない私。流石に呆れた泉が2人から逃がしてくれる。
瀬名「謎のごっこ遊びを始めてないでさ……。今日は舞台の後に何か打ち合わせをしたいって言ってたでしょ、『王さま』?
だから、こうして疲れてるのにおうちに帰らずスタジオに足を運んだわけだし?和んでないで、やることやっちゃおうよ」
月永「はいはい。わかってま〜す、セナに言われなくてもちゃんとやるつもりでした〜」
『じゃあ、早くやりなさい』
月永「はい。今悪いことしたみたいに叱られたから、やる気がなくなっちゃいました〜」
『月永くん、早く話しなさい』
月永「はい。もっとやる気がなくなりました〜」
瀬名「……。こいつ、もはや何もかもチョ〜うざぁい」
今回ばかりは、泉に同意だ。なんでこんなに、うざい感じになったのかよくわからない…。すると、後ろで司くんが「ふふっ♪」と笑って少しだけ安心する。事情はなんとなく聞いているけれど、少しでも笑える余裕があるのなら何よりだ……
君の笑顔
『綺麗な顔でもっと笑って』
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