再構築*涙と誓いの戴冠式
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
行き交う人々はみんな日本語ではない言語を話し合っている。多少慣れてきたものの、ヨーロッパはアメリカ圏の発音とはまた違って聞き取りに苦労する。
日本を出る前にもう少し、ネイティブの世界に触れておくべきだったと後悔する…。
覚えたての単語と身振りでステージの調整をお願いしていく。
『戴冠式』その言葉は私たち『Knights』をまた一つの区切りに導いた。『返礼祭』を終えて、勝敗を決したあの日新しい王さまが誕生した。『Knights』の王さまは月永レオから朱桜司へと受け渡されることになり、このライブはそれをファンに形として魅せるライブになっている。
そのため、舞台は城内をイメージし少し入り組んだ仕組みにした。四方に広がった階段からアイドルが出入りしまるでお姫様が玉座に座り、その勇姿を見せるようなイメージする。
『返礼祭』でできなかった分こだわった作りにしたせいで、スタッフと連携が取れないのが難点だった。
『でも、上出来じゃん。うんうん、あぁっ!そろそろお迎えの時間じゃん!』
私は、スタッフに断りを入れてからレオたちと待ち合わせをしていた場所へと向かう。車で少し行けば、その場所は割と近くてその集団は一目見ればすぐにわかった。
しかし、その光景はあまりに普通の光景とは言えなかった。
レオが楽譜をばら撒き、それを後輩たちが拾い集めている光景だった。
『レオ!またばら撒いて!迷惑になることしないでよ!』
月永「お〜!紡!残念だな!ライブは中止だっ、そこにいるワガママな赤ちゃんがグダグダうるさいからなっ!個人的な事情により中止で〜す!」
『はぁ⁉︎準備はもう済んでるんで、無理ですけど〜?!』
月永「解散解散っ、お疲れ様でした!一緒に帰ろ!」
『え?え?どういうこと⁉︎』
瀬名「紡!そいつ捕まえて!待ってて!」
泉の声で反射的に帰ろうとするレオの腕をギュッと掴む。レオはなぜか嬉しそうな顔で大人しく待っている。
みんなが楽譜を集める間に逃げ出さないように必死に掴む。
『いっぱい寝たんだから体力有り余ってるでしょ⁉︎ライブはやろう!』
月永「え〜?どうしよっかなぁ〜?」
『なんでそんなに嬉しそうなの…?』
月永「…言えない!もっとしっかり引きとめないと車に乗り込むぞ!」
『うわぁあ!そっち私の車だから!やめて!』
朱桜「ーーぜぇぜぇ、はぁはぁ!れ…レオさん!お姉様に不埒なことは許しません!…ようやく楽譜を拾い終えましたよ!ふふん、夢ノ咲学院でも何度も同じことを繰り返しましたからね!
すっかり手馴れたものですよ、参りましたかレオさん⁉︎」
月永「うん。参った参った〜、よくやるなぁ?ほぉら、お腹を見せて服従のポース♪」
レオは楽譜を受け取らずに司くんの目の前にゴロンと寝転がり犬のように服従のポーズをすると、道ゆく人がクスクスと笑う声が聞こえる。
『や…やめてよ!人がいるんだから!恥ずかしい…!』
朱桜「そ、そうです!公衆の面前で!あなたは恥という概念をどこかに落っことしてきたのですか…⁉︎」
月永「逆に考えるんだスオ〜、紡。お前らが人一倍、恥というものに敏感だからこそおれは恥知らずになってる
そうして世界のバランスは保たれてるって考えるんだ、わかるか?」
朱桜『「わかりません!」』
朱桜「『”Requiem”』ではあなたの内心にすこしだけ理解が及んだ気がしてましたが錯覚でしたっ、あなたのことは生涯……完全にはわからないと思います!」
月永「わはは!完全にわかられて堪るかっ、他人なんだから意味不明で当然!おれもフィレンツェでは朝昼晩と紡がいない間はセナと一緒にいるけど、次から次にわけわからんことばかり言ったりされて戸惑うもん!そのたびに、あぁ人間って面白いし世界は広いなぁって感動する!
紡もそうだ!長い付き合いだけど、わからないことだらけだし、それがまた愛しいよ!
湧いてきて湧いてきてもう止まらないぞっ、霊感(インスピレーション)が……☆」
『あぁ…やめて、紙に書いて…車にあるから…!』
凛月「ねぇねぇ、そこ気になってるんだけど。月ぴ〜と紡はまだしも、ふたりとセッちゃんは一緒に暮らしてるの?結婚するの?」
瀬名「してないし、する予定もないからねぇ⁉︎あと一緒に暮らしてない!紡とは部屋が隣ってだけで、さらにこいつが紡の部屋に転がり込んで、俺の部屋にも毎日のように押しかけてくるようになってさぁ……俺のほうこそ『わけわかんない』って言いたい!」
『レオは今度こっちで大きな仕事があって、一時的に拠点にするから部屋を借りるのが勿体無いからって居候してるの。部屋に興味ないし、安宿で問題起こされても困るしね』
瀬名「紡が普段いないからって俺のとこくるのは勘弁だけど、ほんとの本当に、チョ〜うざぁい!
うちを溜まり場にしないでよねぇっ、あんたは印税でがっぽり儲けてるんだから勝手にどっかに豪邸でも建てて住めばぁ⁉︎」
月永「え〜?良いじゃ〜ん、友達だろ〜?見知らぬ異国で一からモデル活動ってセナ絶対に苦労してると思ったから手助けしにきてやったのに〜?おれと紡の口利きで何件、仕事をもらった?言ってみろよ?」
『そんな意地悪言わないの!ていうか、泉の家に入り浸ってたんだね〜通りで部屋が綺麗なわけだ。
でも、口利きをしたのは確かなわけだし?泉も口の聞き方には気をつけなさい。出資者を大事にするのも仕事だよ〜?』
瀬名「ぐうっ……。悔しいっ、卒業してから一気に力関係が逆転した気がする!紡はまだしも……、れおくんのくせに、れおくんのくせにぃ!」
月永「わはは。とまぁ、こんな感じに仲良くやってます〜」
レオは豪快に笑う。私はそれを苦笑いしながら見ることしかできない。レオは、泉が心配でフラッと仕事ついでに寄って私がいる間は私の部屋に、いない間は泉の部屋に入り浸っていたそうだ。入り浸っているだけかと思えば仕事を泉に回したりなど動いていたようで、しっかり泉のパトロンと化していた…。私も人のことは言えないのだけど…。だからこそ、泉はレオに強く言えなくってしまっていた。
月永「おれもべつにそんな長々と居座るつもりはなくてさ、最初はたまたま近所にきたから様子を見に行っただけなんだけど
紡のことも心配だったし、何かほんと、思った以上に苦労してるっぽかったし
……紡と仲良しこよししてるのムカつくし。セナのパトロンとなってる紡にもムカつくし…」
『おいおい、話が逸れてる』
月永「…セナは好んで独りになりたがるけど、それだと心を病んで潰れるってのはおれが実証してるから
放っておけなくて……。つい、ずるずる世話したりされたりの関係を続けちゃってる
っていうか!何かここまできたら一生、おれらから離れられないと思うし諦めたら?
おれらと出会っちゃったのが瀬名泉くんの運の尽きっ、わはははは☆」
『勝手に巻き込まないでよ。泉には私の方がお世話になってるし、今は特に助けられてばかりだから…。仕事まわすのは普通だし、それで有名になってくれればこっちも助かるからWinWinの関係なんです〜』
月永「なんだと〜!お前はセナなしでも仕事わんさかだろっ!じゃあ気にしなくてもいいだろ!」
鳴上「ウフフ。なァんだ、色っぽい話だと思ってたから残念。アタシの恋路は未だ長く険しいぶん、他人の恋バナを聞いて心に潤いを与えたかったのに」
月永「お?ナル、まだあの何とかっていう眼鏡の先生を追いかけてるの?何でみんなそんなに眼鏡が好きなんだ〜、おれも眼鏡をかけるべき?」
『…私はべつに眼鏡好きじゃないけど…』
問いかけるレオに答えれば、レオはなぜか満足そうに笑った。すると、少しボヤ〜っとしていた凛月が私の肩にポンポンと手を置く
凛月「ねぇねぇ、どうでもいいけど早く出発しないと駄目じゃない?たしか、かなり立派な会場を押さえてるんでしょ
こんな異国で日本のアイドルの公演だっていうのにチケット完売だっていうし、遅れたらなかなか洒落にならない大迷惑になるけど」
『…っは!そうじゃん!おしゃべり多すぎ!急いで車乗って!』
朱桜「そ、そうですよね!凛月先輩、近ごろどんどん頼もしくなってきて助かります♪」
そう言ってまた無駄話をしようとするアイドルたちの背中を押す。
急いで会場に向かわないと…
私たちの最後の…私たちが卒業する前に……。六人だった頃に企画した最後のライブ『戴冠式』ライブにーーーー。
プロローグ
『自由なところはみんな変わらない…』
→