レクイエム*誓いの剣と返礼祭
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約一年間愛用していた作業部屋を今日解約するーー。
この部屋は短い間ではあったが何年も住んでいたかのように、濃い思い出が詰まっている。様々な楽曲がここで生まれた。
事件が起きれば、ここで何時間も1人で悩んだ。両親はこの場所を知ってはいるが来ることは片手で数える程度だった。『Knights』のメンバーもここには来たことはない。レオや泉はこの部屋の存在は知っているが来ることはなかった。私だけの場所、私だけの私の城だった。
ーーしかし、今ここにはレオがいる。
業者が入って、部屋に不備はないかと一つ一つ確認していくのをレオの隣で見守る。
業者「終わりました。綺麗に使っていただいてありがとうございます。この後のお支払い先を変更する、とお聞きしたのですがこちらがその書類になります。」
『ありがとうございます…。えっと…これで…お願いします』
業者「…こちらですね?こちらは…?」
『私が日本を離れるので…確認できる銀行に』
業者「左様でしたか!」
『とてもいいお部屋でした。変な話ですけど、次使う方に大事に使ってくださいって伝えてください。』
業者「はい!ありがとうございます」
談笑しながら三人で、玄関を出て鍵を閉める。業者の人が「それでは、ここで。」と一礼して去っていく。ずっと黙っていたレオが私の手をとり私はそれに合わせて振り向く。
月永「綺麗な部屋だったな」
『うん、綺麗で眺めも良かった。月が綺麗に見えるの、5階なのにね…?それと505…レオの誕生日』
月永「それ、入るときに思った。おれのこと好きだなぁ〜ほんと」
『うん、大好き』
素直に返せば、レオは顔を真っ赤にして「そこは違うって否定するところだろ〜」と照れ隠しをするけど、それを微笑ましく思う。
月永「そろそろ、行こっか」
『うん、遅れちゃうしね。』
月永「荷物持つよ」
『大丈夫、このままでいいよ』
そういうとレオは「重くなったら言って」と手を引いた。マンションの前に頼んでおいたタクシーが止まっており車に2人で乗り込む。レオが運転手に行き先を伝えて、タクシーが動き出す。その間は、ずっと離れることない手を強く握りしめた。
この一年様々なことがあったけど、また新しい一年が始まる。私は、ギリギリまで悩みに悩んで、今日新しい新天地へと旅立つ。
日本を離れることは寂しいけれど、新しい場所への期待で胸はいっぱいだ。
月永「卒業旅行楽しみだなぁ〜」
『でも、卒業旅行ついでに戴冠式ライブを行うとか無茶振りだよねぇ〜』
月永「いいだろ!最後の『王さま』命令だ!紡が完全プロデュースするライブだと思うとあいつらもモチベーション上がるだろうし…!」
そう、向こうに着けばすぐに卒業旅行と称して『Knights』のみんながやって来る。それと一緒に『戴冠式』が行われるのだが、そのライブのプロデュースを全て一任されている。
だから、私は息つく暇もない。それでいいと思うから不思議だった。
空港に到着したのか、タクシーは止まってドアが開く。お金を払って、降りると先に降りたレオがキャリーケースとカバンを持って、待っていた。
『ごめん、ありがと。』
月永「ん…いこ、時間迫ってるから」
『カバン…』
月永「い〜から、いこ」
『うん』
レオは再び私の荷物を持ち直し、私の手をとり歩き出す。入り口にあるエスカレーターを上がれば、広いフロアが広がっていた。人が行き交い、みんな大きな荷物をガラガラと引いて歩いていた。
私たちはその中を同じくらいの大荷物で進んでいく。
月永「えっと〜…ん、荷物預けてゲート行けそうだな」
『ほらレオ、カバン貸してチケット出さないと』
月永「はい、これ!」
『あ…ありがと…』
レオは私にチケットを渡して、重たい荷物は預けるところまで運んでくれる。キャリーを預けてチケットを持ってゲートの方面に向かう。繋いだ手をグイッと後ろに引かれてレオの胸板にトンっと倒れる。そのまま、レオが後ろからギュッと抱きしめる
『ぃったい…なに?』
月永「…向こう行っても浮気しないで」
『…はい?』
月永「向こうの人に比べたらおれなんて子供っぽいし、魅力的じゃないかも」
『…急に何の話?』
彼の顔を見るために身をよじってもレオは離すことはない。一度落ち着いて、首元に回った彼の腕をポンポンと叩けばやっとその腕が緩む。緩んだ腕を解いてレオの正面に向き直る。
『浮気って…そんな暇あるわけないでしょ?戴冠式もあるし、他の仕事もあるんだから』
月永「うん…けど、紡と会えない距離になるのって正直初めてで…」
『……寂しい?ふふ、大丈夫だよ。約束したでしょ?私は約束は守るよ。いってきます』
月永「うん、いってらっしゃい」
私は今日、日本を旅立つ。大好きな彼を置いて、遠い海の向こうに…。もう一度レオをギュッと抱きしめてから、静かに離れて行く。背を向けた私に彼はそれ以上声をかけることはなかった。
ーー飛行機に乗り込めば、すぐにヘッドホンをして目を閉じる。そして、向こうについてから…、について頭を働かせる。そして、ここに至るまでの話にだんだんと頭がシフトして行く。
そう、私たち『Knights』の卒業イベント『返礼祭』へ
プロローグ
『やっと落ち着ける』
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