鏗鏘のStar Light Festival
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夕方、陽の光が傾いて光と闇が入り混じり美しい色が空を彩る。そんな空を「綺麗だなぁ」とぼんやり見つめる。私は劇場を後にして朝と同じようにタクシーに乗って学院への道のりを走る。
『Knights』はどうなったかな…。無事に前半戦を勝ち残ったかな、後半戦のライブは何番目になったのかな…。間に合うかな…。
心配で不安な思いが胸を駆け巡るが、そこには勝ち残っている『Knights』のイメージしか湧かない。
少しすれば、学院付近の光景が広がる。学院の門の目の前でタクシーは止まる。お金を払って、降りると朝よりも減った白色が夕焼けのオレンジに色を変えていた。
雪解けの道を足早に進む。その中で携帯を開き、みんなからの連絡を確認する。すると、トップにレオの名前がありそれを開くと「後半戦あるから舞台袖に行ってるな」と珍しく、内容だけのメールに驚きつつもレオからの連絡に微笑んでしまう。
迷うことなく、後半戦の行われるステージへと向かう。約束どおり1番最初に君に会いに行かないと、間に合え間に合え…!と思うたびに足の速さが上がっていく。
袖につけば『Knights』のみんなが袖で最後の確認を行なっていた。そして、その中心にいる彼を見つけてそこに向かって走り出す。
『レオ!ただいま!』
月永「うぉっ!びっくりしたぁ〜!おかえり紡!」
『ちゃんと約束を守りに来たよ!1番に会いにきた!』
月永「あぁっ!嬉しいぞ!」
何も考えずレオに飛びつけばレオはそれを容易く受け止め持ち上げる。喜びなのかそのまま2人でクルクルと回っていると隣にいた泉が不機嫌そうに話し出す。
瀬名「ちょっとぉ〜女王様?俺らに言うことないわけぇ?」
鳴上「やだ!泉ちゃんったら邪魔するなんて野暮な事するのねェ」
『泉!みんな!ただいま!前半戦お疲れ様!』
朱桜「紡お姉様、おかえりなさいませ。お姉様もお疲れ様でした」
凛月「おかえり、女王様。俺たちの出番はこれからだから間に合ってよかったねぇ…」
『うん!みんなのライブに間に合って何より!あはは☆今回の衣装もいいね!』
『スタフェス』をイメージしつつも新曲に準えるように雪の白と星空が映える紺色をモチーフに星を散りばめたような衣装にしたのだが、配色も満足できるレベルだ。我ながら完璧な仕事…とみんなの衣装を見ながらウンウンと頷く。
『順位はさておき、なかなかに快勝を重ねてきたみたいだね。お疲れ様!』
鳴上「それより、紡ちゃんはどうだったの…?結果聞いてきたんでしょう…?」
少し気まずい様子でナルちゃんは聞いてくる。みんなもやはり気になっていたようで視線が私に集中する。もったいぶってみんながライブに集中できないと言うのは、馬鹿らしいのではっきり話してしまおうかな…。そう思って、私が自信満々に笑うとみんなは安心した顔をする。
『ダメだった!専属脚本家にはなれませんでした!あはは☆』
Knights「…はぁあ⁉︎」
瀬名「ちょっと!今の笑顔は合格ですって感じだったじゃん!」
鳴上「なんなの⁉︎なんでそんなに笑顔なの⁉︎」
朱桜「お姉様…悲しすぎて、壊れたのですか…?」
『ひどいな末っ子!私はいたって正常だ!悲しかったらここにいない!』
鳴上「じゃあなんでそんなに元気なの…?」
『それは置いておく!ライブが終わったら話します!ただ、私は仕事した!だから、次は『Knights』の番!お姫様に素敵なライブを届ける番!』
瀬名「なんか元気すぎてビビるんだけどぉ…本当に、大丈夫なんだよね?」
『おやおや、騎士たちは私の言うことが信じられないのか…?仕方ない…!そこになおりなさい!』
号令をかければ、騎士達は背筋をピンと伸ばす。私は横一列に並んだ『Knights』を見て笑う。気づいたら、本当に騎士のように美しい立ち姿で真っ直ぐ前を見つめている。その目線の先に輝かしい未来があるように小さくてもいい少しでも手助けができるのであれば、こんなに誇らしいことはない。
もう今年もわずかだ。きっと今年最後のイベントになる…。
『凛月、何も言わないの珍しいね。』
凛月「ん〜、聞かなくても大丈夫そうな顔してるし。大丈夫だよ、はい」
『ん。』
凛月は何も言わず、衣装の手袋を渡す。やはり、なんだかわかり合っているらしい。私がやろうとしてることを察してくれる。
気づけば、お約束になっていた儀式はもうただ言うだけのものじゃなくて、舞台に立てない私が唯一気持ちを一緒に持っていける願掛け…誓い。みたいなものなのだ。
私は手袋を凛月の左手から着け始める。
『女王様からの命令です。このライブを最後まで全力で』
凛月「紳士的に礼儀を尽くして」
『ありがとう、凛月。頑張って、いっておいで』
凛月「うん、紡こそよく頑張ったね。今度は俺らの番」
『うん、ちゃんと見てるから。』
朱桜「お姉様!次は私に…」
『はいはい…んんっ!…女王様の命令です。このライブを最後まで全力で』
朱桜「紳士的に礼儀を尽くして」
『よし、頑張っておいで』
朱桜「はい!お姉様、司のこともしっかり見守ってくださいね」
鳴上「はいはい、司ちゃん。どいてちょうだい!…紡ちゃん、大丈夫なのよね?」
『うん、ナルちゃんには心配かけてばっかりだけど。たぶん、いい話もできると思う。』
鳴上「…そう、じゃあ完璧なライブをして帰ってこないとダメねェ」
『と〜ぜんっ!ナルちゃん!女王様からの命令です!このライブ最後まで全力で』
鳴上「紳士的に礼儀を尽くして♪」
『頑張って、今日も世界一美しいナルちゃんをお姫様に魅せておいで』
鳴上「当然よォ、全世界を虜にしてみせるわァ♪」
瀬名「なるくんには無理だよぉ〜、なんたって俺がいるからねぇ〜!」
鳴上「あらヤダ!失礼しちゃう!」
『まぁまぁ…ほら泉もするんでしょ?』
瀬名「当然でしょぉ〜はい、ど〜ぞ」
『…ど〜も、女王様の命令です。このライブを最後まで全力で』
瀬名「紳士的に礼儀を尽くして」
『うん、頑張っていっておいで?』
瀬名「…うん、行ってくる。絶対後悔させないステージにしてみせるからあんたの『Knights』から目を離さないでよねぇ?」
泉は私と目線を合わせてから眉間を小突く「眉間にしわ寄せんな」と言いつつ、袖の方へと歩いていった。ボケっとそれを見てると後ろからポンポンと肩を叩かれて後ろを振り向くとキラキラした目でレオが私を見ていた。その手にはしっかりと手袋が置かれていた。
月永「おれもやる!みんなよりやったことないからなんだったら3回くらい繰り返してもいいぞ!」
『そんなにするわけないでしょ?ほら、貸して…?』
月永「はい!早く早く!」
『王さまに命令っておかしいな…ん〜』
月永「いいじゃん!気にすんな!おれもお前も騎士なのに変わりない!いつも通りで十分だ!」
『うん〜…女王の命令です。このライブ最後まで全力で』
月永「紳士的に礼儀を尽くして」
『いってらっしゃい、レオ』
月永「あぁ!いってくる!」
レオの掛け声で『Knights』は一斉にステージへと向かっていく。私が立つことのない煌めいたステージに立つ彼らはこの世界に輝くどのアイドルよりも華やかで、どの星よりも輝いていた。
私がずっとずっと探し求めていた『アイドル』がそこにはあった。彼らが歌えばファンの心を揺らし、彼らが踊ればファンが笑顔になる。
『レオ、『Knights』は最高のアイドルだよ。
でも、まだまだ素敵な将来が待ってるね。それには、レオが絶対必要だよ。だから、もういなくなったりしないでね…私がいてもいなくても…『Knights』はこの5人がいいな…
これからも『Knights』を…見守っていきたいなぁ…』
私のこぼした独り言は誰もいない舞台袖に儚く消えていく…。
『Knights』の時間が永遠に続けばいいのに…。なんて思ってるのがどうか私だけじゃありませんように
私の『アイドル』
『君たちは私の『アイドル』像そのものになってたんだね…』
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