轗軻の恋と、親友との約束
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
泉に言われた土曜日、私はジーンズに黒のハイネックとグレーのスカジャンを羽織って家の外で泉を待っていた。
すると、数分もしないうちに家の前にバイクが止まり、その人物がヘルメットから顔を出す。
瀬名「お待たせ〜10時まで家の中にいればよかったのに…。」
『あ…そっか。』
瀬名「まぁ、いいけど。ほら乗って」
『え?後ろに?』
瀬名「そうだけど…、何今更そんなの気にしてんの?」
『えっ…いや…』
瀬名「じゃあ早くしてくれるぅ?俺の貴重な休みなんだから」
泉は早くと自分の後ろを叩きそれに従って後ろに座ると、泉は私にヘルメットをかぶせて前を向いて自分もヘルメットをかぶる。少し後ろを向いて泉は「しっかり掴まってないと、振り落とすからねぇ」と言ってまた前を向く。私は前向いた泉の腰にひしりと抱きつくと、それを確認したようにバイクのエンジン音がかき鳴らされる。どこへ行くかはわからないけど、何も聞かずにいよう目を閉じて泉の背に体を預けて泉がいいよというまではヘルメットのせいで聞こえもしない彼の鼓動に耳を傾けよう、妄想して彼の鼓動を創り出そう…。
瀬名「紡、ついたよ〜起きて」
『…んっ…いずみ…?ここは……海?』
瀬名「ほら、降りて。浜辺歩こう」
『うん…』
泉の指示でバイクからのそりと降りる。どうやら、泉の背中で爆睡していたようで家から少し離れた海へと着いていた。降りてからただ海を眺めていると、泉もバイクから降りて自分のヘルメットをとりボーっと立っている私のヘルメットをとってバイクに仕舞う。
そして、「行くよ」と私の手をとり引かれるままに浜辺へと降りて行く。砂浜を歩けば涼しくなった秋の風が私たちを包む、乱れる髪の毛を手でなおしていると泉がクイと手を引いて先をいっていた私が振り返る。手櫛で髪をなおしてくれた、その隙間で見えた泉の顔は少し悲しそうにも見えた。
瀬名「ほんとあんたら幼馴染は手がかかるよね…バカみたいに出たり入ったり…ほんとの気持ちはいってくんないし…。俺はおいてけぼり…」
『泉…?』
瀬名「ほんとチョ〜うざぁい」
そう言って泉はまた私の手を引いて歩き始め漂流した大きな木に腰を下ろす。私もそれにならって隣に座る、少し沈黙してから泉は口を開いて話し出す。
瀬名「前に、ハロウィンが終わった後に話してたアレ解決したわけ?」
『アレ?』
瀬名「将来の悩み、ってやつ」
『ああ〜…あの時とは違うことを悩んでるっていうか…そっか、何も言ってなかったね。ちゃんと相談してもいいかな…?』
瀬名「え…?俺に相談するの…?」
『え…いやダメならしないけど…』
瀬名「そういう意味じゃないから…早く聞かせてみなよ〜…」
泉はそういうとこっちに向けていた視線を海の方へと向ける。私はハロウィンの時に『Knights』を抜けた理由、それからハロウィンで経験したこと…それを踏まえて脚本家や作家を目指そうと決めたこと、それで『Knights』じゃないところで忙しくなっていることを泉に話した。
『だから、今自分の将来の夢か今自分が『Knights』にできることで悩んでるの…どっちを選ぶべきか悩んでる…。泉ならどうする…?今の自分か将来の自分か…』
瀬名「それは、どの瀬名泉に聞いてるの」
『どのっていうのは…?』
瀬名「『Knights』の瀬名泉?モデルの瀬名泉?クラスメイトの瀬名泉?あんたの友達の瀬名泉?……それともあんたの『騎士』である瀬名泉?」
『難しいこと聞かないでよぉ………』
瀬名「だいたい、女がそうやってどっちがいいか、って聞いてくるときは自分の中で答えは決まってんだよ。
わざわざ聞くのはその答えに肯定してほしいだけ。もしくは新しい選択肢がほしいかのどっちか…」
『返す言葉もない…』
瀬名「どんだけ、あんたのことみてきたと思ってんの?」
『じゃあ、そんなに私をずっと見守ってくれてる瀬名泉はどう思うの?』
瀬名「はぁ?あんたその言い方チョ〜ずるい。
…でも、俺の知ってる『夜永紡』なら天秤にかけることはしないんじゃない?
俺はどっちも取ると思うし、あんたにはそれができる。『Knights』のプロデュースもあんたの将来の夢のためのことも両立する。
あんたにはその力があると思うよ。
どっちかしかできないって決め込んでるのはただの怯えじゃないの?どっちかを疎かにしたら、また何かを選んで捨てて誰かに嫌われたり失ったりそれが怖いだけ…そうなることは確かに怖いかもしれない。俺も何かを失うのは壊すのは怖い。
けど、あんたはそれができる子だよ。それに『Knights』は多少あんたが疎かにしたところで壊れない。むしろカバーしてあげるから…。
今は、あんたも王さまもいて、そこにくまくんやなるくん……かさくんもいる。今の『Knights』はそう簡単に壊れてやんないし、壊してやんないよ。
だから、やりたいこと全部やりなよ。あんたはわがままな『Knights』の女王様でしょ?それに、胸張って『Knights』の一員って言えるように修行したんでしょ?だったら、その成果見せてみなよ、女王様?」
泉は饒舌に話した後にどうだと言いたげな顔でこちらを見る。私は、今まで考えていたことがアホらしく思えてしまった。ずっとこんなに頼もしい騎士が私の近くにいたのに、私は何に怯えていたのだろうか。そっか…、『Knights』は私が多少目を離しても立っていられる立派な騎士団だ。レオがいなくなった時のようにフラフラの集団ではないのだ…。
『泉…、できるって言ってもらってもいい?』
瀬名「あんたならできるよ。後悔しないように頑張って、俺らの時間はもう限られてるんだからさ」
『うん…ありがとう。できる気がする…。頑張るよ…』
泉は「うん」と頷くとゆっくりと砂浜へと向かっていく。もう泣かない、強くなる…そう決めたんだ。なのに、どちらかしか選ばないなんて逃げだったのかもしれない。こんなにも自分を信じてくれてる人間がいるのにその期待に答えないなんて、バカだ…。彼ができると言ってくれるならきっとできる…。いや、やってやる。
『泉、私やるよ!ほしいものもやりたいことも全部やって全部手に入れてやる!第三者がいくら『傲慢』だと言っても、私は私が決めたことを貫く!
それが『Knights』の女王様である夜永紡だ!あはは☆さいっこうの解放感!霊感(インスピレーション)が湧いてくる!』
瀬名「あはははっ!何それ、馬鹿みたいっ…!
でもやってみなよ。サポートは任せて?馬鹿な女王様を守るのも『騎士』の仕事だからねぇ…」
君をずっと見てた『騎士』
『あははっ!泉ありがとう!』
→