轗軻の恋と、親友との約束
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学校へ行けば、朝から職員室に呼ばれて出向くと椚先生と知らない女の人がいた。
私がペコリとお辞儀すると椚先生が「座りなさい」と着席を促す。指示に従って「失礼します」と座れば、女の人は笑う。
女「そんなにかしこまらなくて大丈夫よ。私、演劇科の教師をしている。
『菅野先生…?』
菅野「ええ、よろしくね?先日の演劇部の舞台を見てからあなたとずっとお話がしたかったの。とても素晴らしい舞台だったわっ!
脚本も演出もあなたがやったんでしょ⁉︎素晴らしい才能の持ち主がいたものだわ!いつから脚本書いてるの?舞台の勉強は?演出については?」
『その、そういう勉強は最近で…知っていたのはアイドルのライブステージとかそのくらいだけです…すみません…』
菅野「あら…そうなの?じゃあ本当に天才現るって感じなのね…?」
菅野先生は近づけた体を力が抜けたようにソファーへと体を戻す。その顔は残念と驚きが混ざったような顔だった。
しかし、切り替えたように顔をあげて私の方をみる。
菅野「あなたに会いに来たのは、ぜひ脚本を演劇科に出さないかと思って声をかけに来たの。」
『脚本を…ですか?そんな…私素人ですし…』
菅野「素人だとなんの問題があるの?みんな昔は素人よ。私も、ここにいる椚先生もね?」
椚「私を巻き込まないでいただけますか。」
菅野「ほんっと!この人つれないのよ!面白くない!」
『あははは…』
菅野「とにかく!貴重な体験だと思って、脚本に挑戦してみない?今年の演劇科はかなりハイクオリティよ?」
『えっと…。噂は予々…でも、ごめんなさい。嬉しいお話なんですけど、実は他のところに脚本を出したいと思っていて…演劇科まで手が出せそうにありません。今回はお断りします…。』
菅野「そう…、それは残念だわ。でもよかったら演劇科にも足を運んで見てちょうだい?私の名前で入れるようにしておくから、きっと経験になるわ…?」
『はい、ぜひ伺わせてください。菅野先生のお話も聞きたいです』
菅野「もちろんよ。舞台のことならなんでも聞いて?あなたみたいな子がこの世界に入ってくれるなら嬉しい限りよ?アイドル業界には勿体無い逸材だわ?」
『そんな…ほめすぎです…。』
初対面でここまでべた褒めされるとは思わず、少し萎縮してしまう。菅野先生は満足したのか「また演劇部の舞台楽しみにしている」と言葉を残して、部屋から出ていった。椚先生と二人っきりになってシーンとした部屋の中椚先生が背に隠していたファイルから数枚の紙を取り出す。そこには先日の日々樹くんに言われた劇団の脚本家募集のチラシも入っていた。
椚「アイドル科の教師としては、あなたのようなプロデューサー、そして作曲家を失うのは痛手ですが…。普通の教師としては、一生徒が夢を見つけたと聞けば嬉しいものです…。
私も、微力ですがお手伝いしたいんですよ。これでも1年生の時からあなたを見てる教師の一人なので…、」
『椚先生…?これは…』
椚「私の知り合いがいる劇団の脚本家や作家の募集です。日本から海外まで様々ですが、あなたの実力ならば問題ないでしょう。挑戦するかは自分で決めなさい。」
『いいんですか…?その…コネみたいになりませんかこれ…』
椚「なるわけないでしょう?入団試験は全て実力です。受けるかどうかもあなたの自由ですし、私は一つの道を提示しているだけです。」
『…ありがとうございます…。参考にさせていただきます…。』
椚「はい…せっかく見つけた夢です。燃え尽きるまで走り続けなさい。」
まさか、あの椚先生が熱血教師のようなことを言うと思わなかった。でもその目は真剣に応援してくれる心が伝わってくる…。
『私、頑張ります。椚先生、あの…』
椚「いえ、それ以上は行き先を決めて卒業するときにしてください。勝手に悲しい雰囲気を作られても困ります」
『…うっ、すみません。あの、これありがとうございました。私教室に戻ります』
椚「はい、ご苦労様でした」
二人して立ち上がって部屋を後にする。職員室の前で椚先生とは別れて、私は教室へ向かう。その帰り道でもらった紙に目を通す。どの劇団もある程度は名の知れた場所で、自分の実力にあっているのかはわからないけれど実力をはかれるいい経験になるだろう。
『でも…全部、締切が12月か…ううん…スタフェスか将来の夢か…』
椚先生が奨めてくれたところだ環境も悪くないはず、全てが自分の経験になるだろう。
でも、スタフェスだって夢ノ咲の一大イベントだ。きっと『Knights』も参戦するに違いない、ハロウィンで培った経験を『Knights』の一員として発揮できるまたとないチャンスとなる。その後のイベントといえば大きく分ければバレンタインと卒業式だけとなる。『Knights』のために尽くす一年の予定が私は何かできたのかな…。
『結局はどっちかしか選べないのかな…器用じゃないなぁ…』
母に話した通り卒業を機に『Knights』をやめるとするなら、本当に時間が限られているし、将来の自分と今の『Knights』としての自分を天秤にかけ続けなければならないのだ。それにこのことは母以外には言ってないことだから、これだけは私一人で答えを出すほかないのだ…。
考えるのを諦めて、教室にはいって自分の席に着く。みんなの話し声や椅子を引く音、この音を聞けるのも後何回…後何回私の耳に届くのだろうか。
考えていると、机がノックされて上を見る。
瀬名「考えごとしてるとこ悪いんだけど。」
『あ、うん。なに?』
瀬名「今度の土曜、朝10時に紡の家の前集合。スカートじゃなくてパンツで来ること」
『え?待って…どういう…』
瀬名「…べつに、たまには付き合ってよ」
『うん…それはいいけど…どこへ?』
瀬名「聞くのは野暮でしょ?大人しく家の前で待ってなよ」
そういって、泉は言いたいことだけを言って自分の席へと戻っていった。ナルちゃんの計画かな…?でも脚本が書けたことは伝えた。最初から目的とされてたレオへの恋心にも気づいた…。これ以上何をするのかな?それとも、本当に泉の気まぐれ…?
いったい、なんなんだろ…?
いろいろな選択
『悩むことが増える18の冬って感じ』
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