轗軻の恋と、親友との約束
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鳴上「あらあらァ!紡ちゃんのパパとママ大恋愛じゃなぁい!」
『私も初めて聞いたんだよねぇ…まさかお母さんがお父さんにゾッコンで…、お母さんが働いてた教会に偶然お父さんが聞きに来てて「あなたの弾く曲は素晴らしい」って音楽の話だったのに、お母さん勝手に一目惚れと勘違いして猛アタックしたなんて…我が親ながら恥ずかしい…』
鳴上「いいじゃなぁい!!!素敵だわァ!…っていうか紡ちゃんって本当にパパとママを足して二で割ったって感じよねェ…」
私はナルちゃんとカフェに入ってお茶をしている。朝早く「9:00に駅前集合、いつも通りの格好でいいわよォ」と珍しく簡素なメールが来て行ってみればナルちゃん本人がやって来た。気にしなくていいと言われたが、オシャレな人がくるのは分かっていたし…それなりの格好をして来てよかった…。
いつも遊ぶ時と同じように少し歩いていい感じのカフェに入ってお茶をする。デートというよりいつも通りの光景だ…。
昨日母から聞いた素晴らしい恋話をナルちゃんに話せばこのように大喜びだ。ナルちゃんは「他には他には⁉︎」と食いついてくる。
鳴上「他にはないの⁉︎紡ちゃんのパパママの恋物語!」
『今話したので全部だよ〜…残念残念!』
鳴上「あらァ…じゃあ紡ちゃんのお話でも聞こうかしら…♪」
『もう…聞かれると思った…』
鳴上「どうだったの?男取っ替え引っ替えして答えは見つかったかしらァ?」
『取っ替え引っ替えって…誰がそんなことさせてくれたのかなぁ〜?』
鳴上「あら…誰かしらねェ?」
『でも、おかげで演劇部の脚本はあがったから追求はしないでおく…』
鳴上「あらできたのねェ!よかったわ…でもなんか…浮かない顔ねェ…」
『余計なことしたって後悔するよ…ナルちゃん…
ナルちゃんがやりたかったことは、私の恋を自覚するサポートなんでしょ?ごめんね、鈍い女で…いろんな人に迷惑かけてごめんね…』
鳴上「バレバレだったのねェ?それで?分かったの?」
『うん…私、レオが好きみたい……他の人と出かけても、どこかレオと重ね合わせてた…。』
鳴上「あらあらあらァ!じゃあ早く王さまに告白しないとォ!」
『しないよ。』
鳴上「…えっ、なんでよォ!」
『…私は騎士だもん…。王さまに恋心をいだいて付き合って幸せになろうなんて、そんな都合よくはいかないよ。
それは騎士としての私への裏切りだし、ファンのみんなへの裏切りだよ…。私はこの恋を許せない…。私はこの気持ちに鍵をかける。
だからナルちゃん…何も言わないで、言いたいことはわかってる。けど、ダメなものはダメ。この恋心は湖に沈めてしまいたい』
鳴上「紡ちゃん…」
『どう?後悔した?』
鳴上「…どう言っていいかわからないわよォ…こんな悲しいことって…」
『でも、事実だよ。言えないよ…
私は知りたくなかった。伝えられない思いなんて…、私は私を裏切りたくないし、『Knights』のみんなにも『Knights』のファンにも幸せになってほしい。この恋が叶わなくても叶っても…私に幸せの物語はやってこない。』
鳴上「なんでそんなこと言うのよォ!もっとワガママでもいいのよ!紡ちゃんは自分の幸せを考えてもいいのよ…」
『ごめんね、ナルちゃん』
鳴上「謝らないでよォ…」
『でも、ありがと。新しいことを知った…。全部ナルちゃんのおかげだよ』
鳴上「もう…どうすればいいのぉ…」
ナルちゃんは悲しそうにこちらを見る。それ以上口出ししてもしょうがない。もうわかってるんだろう、ただただ私の顔をみつめる。私は冷めてしまった紅茶を飲む。
冬も近くなってしまい寒いんだから冷めた紅茶はいささか美味しさに欠ける。親友にこんな顔をさせておいて、なのに穏やかに笑って変な光景かもしれない。
『ナルちゃん、恋ってあったかいよ。素晴らしい曲がいっぱい書けた…、誰かと会っても彼のことばかり考えて、誰かと重ね合わせて勝手に幸せな気分を味わってた。
気づいてからずっと、作詞する手が止まらない。ピアノを触る手が止まらない。ずっとずっと音楽が私の世界を彩ってくれる…。
伝えられない分音楽で返そう。音楽は世界の共通言語だから…』
鳴上「紡ちゃん…」
『よし!ナルちゃん映画見にいこっか!とびきり泣けるやつ…!』
鳴上「えっ…えぇ…」
『ナルちゃん…!デートしよっか…☆』
カフェの席を立ち上がり、私はナルちゃんの手を引いた。ごめんねナルちゃん…、ごめんね。せっかく気づかせてくれたのに、せっかく恋を教えてくれたのに期待に添えなくて…。ナルちゃんは本当に大切な親友だ。困ったら助けてくれてフォローしてくれて、本当にお姉ちゃんみたいだ。年下だけどね…
鳴上「紡ちゃん、ごめんね?でも、後悔はしないわ…アタシはずっとずっと紡ちゃんの幸せを願ってるわ…だから、泣かないで?」
『あれ…おかしいな…まだ映画も何も見てないのに…なんで…溢れてくるの…ごめん…ごめんね…?止まらないよ…』
鳴上「…ちょっと寄り道しましょか…きっと笑顔になれるわァ」
『うん、ありがとう…ナルちゃん』
ナルちゃんは私の手を引いて歩き出す。ナルちゃんの笑顔は不思議だなぁ…私まで幸せな気持ちにしてくれる。
『ナルちゃんっ!』
鳴上「あら、何かしら?」
『大好きだよっ!』
鳴上「あら、嬉しいわァ。アタシもよ♪」
私たちは、笑いあってから繁華街を進んでいく。言霊を吐き出せば気持ちは幾分か楽になる、もういいんだ。これが私の人生だ。
そうでしょ?
閑話休題
鳴上「デート、しましょっかァ」
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