轗軻の恋と、親友との約束
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
映画を見終わり、北斗くんと別れた帰り道にナルちゃんから「夜道、吸血鬼に注意><」とメールが入っていた。吸血鬼…、というとまた零さんのことか?と思いながら帰り道をゆっくり歩くと家の前に見慣れた姿があった。
『凛月?』
凛月「おい〜っす♪おかえり、紡」
『ただいま、え?なんでウチに?』
凛月「ナッちゃんに頼まれてきたんだけど、お母さんがまだ帰ってないっていうからお出迎えしようかなって」
『…いや、なんでウチに…』
凛月「一回きてみたかったんだよね〜♪」
『えっと…じゃああがっていく?』
凛月「もちろ〜ん♪」
凛月は私の手を引いて私の家の玄関まで案内する。いや、私の家…。
玄関を開けると愛犬が足元へと駆け寄ってくる。
凛月が先に靴を脱いで犬を抱っこする。私も続いて靴を脱げば、凛月は手慣れたようにリビングへと向かった。いやだから、私の家…。
凛月「この子紡にそっくり」
『え?…似てるかなぁ…』
凛月「うん♪可愛い…」
『か…可愛い…』
凛月「ただいまぁ〜♪」
紡母「あらっ♪凛月くんおかえりなさい…!」
凛月「紡ママただいま〜♪」
『えっ…馴染んでる…』
リビングに入るとそこには母がいて、何事もなかったように「おかえり」という。父は今コンサートで日本を飛び回っているので不在だが…、それにしても凛月よりも奥にいるあの母のキラキラの笑顔が不思議すぎる…。
『お母さん、ただいま…えっと…その笑顔はなんだろう…』
紡母「あらあら!噂に聞く凛月くんがまさか彼氏として紡ちゃんを訪ねてくるなんて思わないじゃない!そういう関係なら早く言ってよぉ〜!レオくんじゃないのは少し寂しいけど…でも紡ちゃんが幸せならママは、オールオッケーよ!」
『………、凛月ちょっと来ようか』
凛月「わぁ〜殺されそう☆」
母の言葉の意味を理解すると、犬を下ろしてから凛月の腕を掴み自分の部屋へと入る。凛月を椅子に座らせてその前に立って凛月を見下す。
凛月「だって、この時間は紡の彼氏だもん…」
『だもんってねぇ…お母さんに誤解をうむようなこと言わないでよ!お母さんに誤解を解くところまでが凛月の仕事だからね?』
凛月「嫌、とは言わないんだね?もっとさぁ『凛月が彼氏なんて嫌だ!』とか言ったりしないわけ?」
『嫌って…だってみんな私のために付き合ってくれてるわけでしょ?拒否するのは違うっていうか…』
凛月「紡は本当に優しい子だね…まぁだから好きなんだけどね?」
『へっ…』
凛月「でも…あんまり気軽に男を自分の部屋に上げない方がいいよ。彼氏からの忠告…」
『忠告…』
凛月「手を繋いだり、頭を撫でたり…、そのくらいは可愛いものだけど。抱き合ったり、どこかにキスされたり、密室で二人っきりになったり…紡は気にしてないかもしれないけど、相手は何考えてるかわからないよ?彼氏っていうのはそういうの心配だし、いい気持ちはしない。」
『う…うん…?』
凛月「紡は小さい頃から王さまっていう幼馴染がいて、感覚おかしいかもしれないけど。彼氏彼女ってそういうものだよ?そういうのわかり始めてる?それともまだわからない?」
『凛月…?』
凛月は真剣な表情で椅子から立ち上がる。そのまま、私ににじり寄ってくるのでそれに合わせて後ろに下がる、足元にゴンッとベッドにぶつかり凛月に肩を押されてベッドに倒れこむ。
押し倒されるような形になり、目の前に凛月の顔と天井だけが映る…。
『ま…待って!近い…!』
凛月「でも男とふたりってこういうことだよ?紡は女の子だから押し返すこともできない。今までの男は優しかったかもしれないけど、俺は紡にわかってほしい…」
『わか…る…?』
凛月「気づいてほしい、女と男の距離をちゃんと…。はかれるようになってほしい。今、彼氏としてできる精一杯のこと。」
『凛月…?』
凛月「俺は、俺が紡の彼氏だったら、紡がセッちゃんやナッちゃん…ス〜ちゃんですら笑いあってると、なんで?って思う。なんで相手が俺じゃないのかって…、俺だったらって…恋ってワガママなものだよ?愛って自己中心的なものだよ?今の紡はそれをわかってない。第三者の恋愛に満足してるだけ。」
凛月は悲しそうに私を見下ろす、その通りかもしれない。第三者の恋愛に満足している、映画や舞台で見る書かれた恋愛。ナルちゃんがくれた恋愛ごっこの一時的な恋愛。それはどれも私という人間を無くしても成立する、第三者の恋物語だ。
でも、凛月が言いたいのは私がいないと成り立たない。私と相手がいて成り立つ、恋物語の話…。
『なんで…凛月がそんな…』
凛月「心配なの…危機感がなくていつも不安。紡は女の子なんだよ?今もこうして受け入れてるけど、このまま何かされたらどうするの?」
『だって、凛月だよ…?』
凛月「俺だから、なに?男はみんな狼、知ってるでしょ?」
『…凛月は狼?』
凛月「ううん。俺は吸血鬼…このまま紡の血を飲み干しちゃうかもね?」
『痛いのはやだ…』
凛月「………」
凛月は私の上からどくと隣に座り深いため息をつく。
私も上半身を起こすと凛月は私の膝を枕にする。今度は先ほどと逆に凛月の顔と床が見える。
凛月「紡はもっともっと、真剣に考えて…、俺はこれ以上言えないよ。
紡が誰とこうしたいのか。こういうことをしてほしいのか…。そういうのを真剣に考えてほしいとナッちゃんは思ってるよ?もう逃げられないってわかってるんでしょ?なんとなくは気づいてるけど、それから逃げてる…。それはきっと、答えを見つけたら何かあるってことなんでしょ?」
『凛月…鋭すぎるよ…』
凛月「でもね?紡はその答えを知るべきだよ…気づくべきだ。彼氏として、『友達』として、騎士として…紡には気づいてほしい。だから、ちゃんと向き合って…?」
凛月は下から私の頭を撫でて微笑む。もう私の考えていることはわかっているのだろう。どうせ、凛月にはバレバレなんだ…。もう隠すこともないかもな…
『向き合ってもいいのかな…私が気づけば私は感情に優劣をつけてしまう…。ずっと私の『Knights』は優先順位の高いものだった。だからみんなが大好きだった…。でも…』
凛月「大丈夫だよ。その中に優劣があってもみんな紡が好きだし、紡が俺たちを大切にしてくれてることは分かってる。だから誰も怒らないしダメだなんて言わない。」
『本当に?』
凛月「もちろん、俺が紡に嘘ついたことある?」
『あると思うけど…』
凛月「こら、雰囲気大事にしてよ」
『あはは…、そうだね。ありがとう凛月…』
凛月「うん。頑張ってね」
凛月は私の頭をゆっくりと撫でる。それから、身体を起こし私の隣に腰掛ける。夜になったから、凛月は饒舌に話続ける…けどだんだんと雑談になって普通の会話になっていく。
『凛月。ご飯食べていく?お母さんも、その方が喜ぶから』
凛月「うん♪紡ママの料理楽しみだなぁ〜」
『うん、じゃあ行こうか』
ベッドから立ち上がり、座っていた凛月の手を取りリビングへと向かっていく…凛月は少し悲しそうに「今日のご飯は何かな?」と笑う。ごめんね、凛月。私ちゃんとするから…。
朔間凛月の場合
凛月「『お友達』っていうのも難儀なものだね」
→