轗軻の恋と、親友との約束
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
休日の早朝から趣味と化した脚本作りの続きをしていれば、静かな部屋に着信音が鳴り響く。ビクリと肩を揺らして恐る恐る、相手を見ると案の定ナルちゃんで「今日はお姉ちゃんな1日☆オシャレするのよォ!10時からここ!」と地図情報付きでメールが送られていた。だんだんとナルちゃんが占いのお姉さんに思えてきた…最近のメールの内容がラッキーカラーとかアイテムとか…そんな感じになってきているここ最近。
指定の場所へ行くために作業を中断して着替えはじめる。のんびり過ごす予定だったが、お出かけするのも創作活動のひとつだ…諦めてロングスカートにロングカーディガンを合わせてブーツを履いて家を出る。
電車に乗って2駅ほど進み、改札を出て少し歩けば目的の場所へと到着した。そのお店は行列になっており、多くの女の子が並んでいた。ナルちゃんが好きそうなファンシーなカフェだった。
『甘いもの…美味しそう…』
朱桜「紡お姉様〜!遅くなりました。長い時間お待ちになられていませんでしたか?」
『司くん……ううん、今来たところ!』
朱桜「なら安心しました!本日はこの不肖、朱桜司が紡お姉様を”escort”いたします!」
司くんは私の手を取りお店の列へと並ぶ。やはり、このお店に入るようで司くんは目を輝かせていた。やはり、甘いものが好きなのだろう。わくわくしているのが見てわかる。
『そういえば、司…?』
朱桜「っぴゃ!…お姉様…?」
『って呼んでいい?』
朱桜「い…いいですが、突然どうしたのですか?」
『今書いてる脚本が年下ものだから、急に呼んだらどんな反応するのかなって』
朱桜「…う…嬉しいですが、ドキドキしてしまいますね…」
『他には他には?』
朱桜「すごく暖かいです…もっと呼んでほしい。そう思います…両親に呼ばれるのとはまた違う感覚です!お姉様…もう一度…」
『…そこまでくるとこっちが恥ずかしい…』
司くんは握っていた私の手を胸元まで持ってきて上目遣いで、「ぷりーず」と囁く。先日の友也くんとは違い、身内のような司くんその距離感もどことなく近く感じる…。
『つ…司…他の人もいるから近すぎるのは…』
朱桜「し…失礼いたしました!…お姉様…私が恋人の間はどうかそのままで…」
『う…わかった…』
朱桜「順番です!さぁ参りましょう!」
順番がまわってきて店員さんに案内されるまま司くんは私の手を引っ張る。司くんは席に着くと二人が見えるようにメニューを広げる。店内にはカップルや女の子同士が多く、みんな楽しそうに会話をしながら…パフェを食べている。
朱桜「お姉様!この大きな”parfait”はいかがでしょうか!」
『どれどれ…え”』
朱桜「今日の私たちにピッタリです!ぜひ!」
そこにはでかでかと『カップル限定特大パフェ』と書かれた大きなパフェが写っていた。
『だって…これ大きいよ…それにカップルの証明しろって…』
朱桜「司にお任せください!それともだめ…でしたか…?」
『う”…ず…ずるい…』
朱桜「ふふふ。お姉様はお優しいですね…すみませーん!」
司くんは店員さんを呼び、特大パフェを注文する。店員さんは笑顔で「それではお二人がカップルだという証明を☆」というので一人で慌てていると司くんが席を立ち私の足元に跪く。そして、手を取り手の甲にキスをする。それはまるで女王と騎士の忠誠を誓うような姿に見えて店内が騒めく。私が突然のことに唖然としていると、司くんは店員さんに「これでいかがでしょう?」と微笑む。店員さんも真っ赤な顔をして「す、素敵でした!」といって厨房へ去っていく。
『ちょ…ちょっと!司くん何するの⁉︎店内だよ⁉︎』
朱桜「お姉様?呼び方戻っていますよ?」
『そんなことはどうだっていいの…つ…司!人前で恥ずかしいことはしないで!』
朱桜「おや?私は愛しの女王陛下に忠誠を誓っただけですよ?」
『…司…パフェ食べたこと泉にいうよ?』
朱桜「うっ…瀬名先輩には内緒にしてください…」
司くんは少し目を逸らして唇を尖らせる。先ほどまでの自信満々な顔から一転、今は年相応な男の子の顔だ。その頬をツンと指先でつつけばいじけた顔がゆっくりとこちらを向く。
『うん…内緒ね?』
朱桜「はい…約束ですよ。お姉様」
店員「お待たせいたしました!『カップル限定特大パフェ』でございます!」
朱桜「わぁあっ!”Marvelous”‼︎写真の通りで驚きました!」
『大きい…』
向こう側に座る司くんの顔が隠れてしまうほど、大きく流石に驚いた。この量を食べたら、本当に泉に怒られてしまいそうだ…。
司くんは目をキラキラさせてパフェを見る…。
静かに携帯を取り出してパフェと一緒に司くんも画角におさめる。
朱桜「お…お姉様!」
『あ…ごめん。つい……司、一緒に写真撮る…?』
朱桜「…はい!人を!」
『あぁあ!大丈夫!自撮りできるから…!』
流石にカップルの写真を撮るなんてこんなところで恥ずかしい思いはしたくない…私はインカメにしてパフェと自分と司くんが入るように携帯をかまえる。「はい、チーズ」といえば司くんは微笑んでカメラの中におさまっていた。
朱桜「こうやって、思い出を残すというのも悪くありませんね…それではいただきましょう!」
『うん…、んん!』
朱桜「ふふ。お姉様は驚いた顔も愛らしいですね…」
『ちょっと…急にスプーン突っ込むなんてひどいよ…』
朱桜「おや…”couple”は『あーん』をするものだと伺ったのですが…」
『いや…あーんも何も……』
朱桜「口端に付いておりますよ…クリーム…」
司くんは私の口端を人差し指で撫でてその指を自分の口へと持っていく。あまりにスムーズなその動きに私は体が凍りつく。
『…司くんって年下だよね…』
朱桜「はい…?そうですが、そんな今更ですね」
『あまりにスムーズで混乱したよ…』
朱桜「お姉様はしてくださらないのですか?」
『え…何を…』
朱桜「ふふふ。お姉様…『あー…』」
『…へ?あっ!えっと…『あーん』』
朱桜「”Delicious”!」
司くんにスプーンを渡され、されるがままに『あーん』とすれば司くんは喜んでスプーンを口に入れた。そういうところは年相応で、先日の友也くんとはまた違った感じがする…。
そのあとは二人で、大きいパフェを食べ続けていった。食べ終わると司くんは「満足です!」と笑い、つられて私も笑った。
やっぱり、何だか彼氏というより弟という感じで、彼が笑うと私も嬉しくなった。
食べ終わって、時間もそろそろということでお会計をしようとすると、司くんが「先ほど席を立った際に支払っておきました」というのでびっくり仰天、しかしそんな私を気にもせず彼は店を出ていった。
『ちょちょちょ…!司くん!お金払うよ!』
朱桜「いいえ、私がしたかったのです。お姉様ありがとうございました。とても楽しく、有意義な時間を過ごせました。」
『こちらこそありがとう…』
朱桜「では、私はここで…あ!鳴上先輩からの伝言です!」
『へ?』
朱桜「今日は日中お仕事の予定だそうで私に伝言を、と…『15時から××駅に集合!』だそうです。」
『あ…そう…わかった』
朱桜「それでは、この後も楽しんでくださいね!紡お姉様!」
『あっ!うん!ありがとう司くん!また学校で!』
そういうと司くんは手を振ってからお迎えの車に乗り込んでいった。
友情と愛情の狭間…まるでそんな感覚だった。はっきりしないこの感情もまたネタになりそうだ…。創作意欲が湧いてくる…、やはり創作活動のためにも持ち歩きのPCでも買おうかな…。
そう思いながら次の時間が来るまでの暇つぶしに私は電気屋に立ち寄るのだった…
朱桜司の場合
『タブレットみたいなPC欲しいなぁ…』
→