轗軻の恋と、親友との約束
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18時まで時間もあるし、ずっとカフェにいるのも…と思ってショッピングモールの中をウロウロする。
指定されたレストランはショッピングモールの中でもいいところで、大人の方々がいくようなお店だ。いったい誰が相手なのだろう…日々樹くんが来たわけだし、もしかして天祥院くん…?いや彼ならば、別の高級レストランを指定する可能性があるし、司くんならもっと甘いものを食べれるところにしそうだ…。
だとすれば…姫宮くん…?いやあまりに関わりがなさすぎる。
『買おうかなぁ…』
零「我輩が買ってやろうか、紡ちゃん」
『…ひゃあ!後ろに立たないでください!』
零「レストランにいく途中に目的の人物がおったもんでな」
『へ…じゃあ零さん…?』
零「冬は日が沈むのが早くていいのう…早く紡ちゃんと遊べることじゃし。ほれ、そのワンピースがいいのかえ?」
『いや、いいよ。お金に困ってはないし…服買ってもらうとか…』
零「おや、紡ちゃん知らんのか。男が女に服を送るのは脱がしたいからじゃって」
零さんは私の腕に手を這わせツーっと腕を撫でる。ゾワゾワと鳥肌が立つのを感じて、零さんの腕をはたいて歩き出す。
…なんてことを言うのこの人は…
『買う気がなくなった。早くご飯行こう…』
零「おや〜…怒らせてしもうたか…」
『だいたい、なんで零さんが…』
零「鳴上くんに頼まれたもんでな…、デートできるなんて嬉しいのう。我輩がご馳走してあげるよ。」
『うん、そうしてください』
ズンズン進むと後ろから「なんでそんな冷たいんじゃ〜」と声が聞こえる。同い年・後輩ときて先輩か…後ろから早足で走ってくる零さんに向き直る。零さんは頭に?を浮かべながら私を見る。
『…零さんが彼氏は絶対ない』
零「えぇっ⁉︎そんな正面から言われると流石の我輩も傷つくんじゃけども⁉︎」
『でも、今日は親友のワガママだから…エスコートしてよ。彼氏さん』
零「ふふふ。いいじゃろう、ほら手をどうぞ彼女さん」
零さんは私の手を取ってレストランの方へと歩き出す。レストランの前につけば零さんは手を引いたまま、スタッフに「18時から予約してた。朔間です。」
と伝える。ちゃんと話せるんだ…なんて失礼なことを考えながら、手を引かれるままついて行く。
席につこうとすると零さんが椅子を軽く引いてくれるそのまま「ありがと」と呟きながら席につく。
零さんも向かいの席に座るとこっちを見て微笑む。
零「言うのが遅くなったが、今日の格好似合っとるよ」
『え…あ…あぁ、ありがとう…』
零「なんじゃその反応は」
『今日初めて言われた…。』
零「おやおや、前の人は恋人が何たるかわかっとらんなぁ…」
恋人じゃなくても、小さなことで褒められるって言うのは嬉しいものだ…。だが、こんな美形に正面から褒められるとは思わなかった。
『零さんも…』
零「ん?」
『私服、かっこいいよ』
零「…可愛い彼女に会うためじゃからな。ほら、メニューを決めよう。そのあとは、紡ちゃんの近況を教えておくれ」
そういうと零さんはメニューを渡してきて、好きな物を選んでいいと言ってくれた。なんとなくカップルの小さなことで褒め合いたくなる気持ちもわかるかもしれない…
褒められるとやっぱり胸が暖かくなる。彼氏が気を遣ってくれる、それだけでなんだかお姫様にでもなった気分だ。
メニューを決めて少しすれば料理が運ばれて来て零さんとジュースで乾杯した。
零「今日一日どうじゃった?鳴上くんも面白いことを考えるものじゃな」
『う〜ん。面白かったよ?映画とか見ても何が楽しいのか…、って思ってたことが理解できた気がする。』
零「ほう…、それで?その間に違う男のこと考えたりしなかったのか?」
『他の男…?』
言っている意味がわからず首を傾げると零さんはニヤニヤと笑う。思い返せば、今日一日………
『誰もレオのこと考えてないし!!』
零「誰も月永くんの話なんてしておらんが?」
『なっ…ぁ…あ……』
カマをかけたな…と思いながらボスりと椅子に座る。確かに、日々樹くんを待っている時、友也くんの照れた反応を見た時、零さんがレストランにエスコートしてくれる姿…どの姿をとっても「レオなら…」と心のどこかで考えてしまっていたのは事実だ。でもそれは長い付き合いだから…それだけ…それだけ、なのかな…?
『あぁあ!頭が混乱してきた…』
零「悩めるお年頃じゃのう…紡ちゃん…くくく」
『楽しんでるでしょ…悪い人〜…』
零「その悩みが早く解決すれば、いいのう…」
『思ってないくせに…』
零「そりゃあ…解決したら子供が巣立った気分じゃから…でもそれもまた成長じゃよ。紡ちゃん、じゃから…このあとも真剣に恋人と接してごらん、そうすれば自ずと答えは見つかるじゃろう。」
『…零さんは答えを知ってる…?』
零「知っとるかもしんが、教えてあげれんよ。こればっかりは紡ちゃん自身で答えを見つけないと意味が無いからのう…さぁ、デザートはいかがかな?彼女さん」
『ありがたくいただきます…。』
空になったお皿を、下げてもらい再びメニューを開く。美味しそうなケーキにアイス…そのどれもが私を誘惑するが、そのどれを食べてもこのモヤモヤは消えてくれることは無いのだろう。
お会計の時に財布を出し、払おうとすれば既に支払い済みだと言われた。どうやら御手洗に立った時に支払っていたようだ。そのスムーズさが、年上の男を感じさせた。「払うよ」と言えば零さんは「恋人じゃからかっこ悪いことはさせんでくれ」と頭を小突かれてしまった。
そのあとタクシーで家の前まで送られ、タクシーをとめて2人して玄関の前に立つ。
『ありがとう…零さん…』
零「なぁ、紡ちゃん。1回でいいワガママを聞いてくれんか?」
『なに?』
零「名前で呼んでおくれ…恋人じゃろう?」
『え?いつも呼んでるじゃん』
零「零、とその可愛い声で呼んでおくれ」
『…?急だな…そのくらいいいけど』
零「うん、おやすみ紡」
零さんは悲しそうに微笑んで私の頭を撫でる。私の表情の意味を理解することはできなかったが、今日の感謝を込めて言葉を吐き出す。
『うん、おやすみ。零』
そういって私は自分の家の玄関へと入っていった。零さんはそれを見送って止めておいたタクシーに乗りこんだ。
朔間零の場合
零「兄は妹に恋できんから…、これはケジメじゃ」
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