轗軻の恋と、親友との約束
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私は休日の朝から駅前のベンチにポツリと座って待ち合わせ時間になるのを待っていた。
昨日の夜、突然ナルちゃんから「明日、⒐:30に××駅集合!オシャレ!作詞禁止!」とだけ連絡があった。何も詳細を書かないまま…必要事項だけ…
『それで来ちゃうあたり、私もダメだよねぇ…』
**「そうですねぇ☆女王陛下は『騎士』さんにお優しい☆」
『…えっ』
日々樹「Amazing☆呼ばれて飛び出てなんとやら…☆」
気づいた時には隣に薄水色の長髪が並んでいた。『Knights』の誰かしらが来るものと思っていたのだが…
『もしかしてナルちゃんの言ってた…?』
日々樹「はぁい☆私が女王陛下をエスコートいたします☆」
『他に何か聞いてない…?私何も聞いてなくて…』
日々樹「私は今日というよりお昼まで女王陛下…いえ、紡の恋人です☆」
『はい…?』
日々樹くんがいうには、先日ナルちゃんから私のエスコートと映画を一緒に見て来て欲しいとお願いされたらしい。そのテーマが『デート』だそうで、二人の時間は恋人のように接してねと言われたらしい…
日々樹「脚本家も演出家も一種の演技者に変わりありません☆紡さんも演じてください☆そして知るのです!愛を……☆おやぁ?」
『…くそ!なんで出ないのナルちゃん!もう!早く出てよ!』
日々樹「没収でぇす☆」
『ちょちょ…ちょっとぉ!』
日々樹「それでは行きますよ!紡…☆」
『名前で呼ばないでよ…日々樹くん!』
日々樹「日々樹くん、じゃないでしょ?私たちは恋人なのですから…☆わたる、とお呼びください。」
『…無理』
日々樹「冷たい恋人ですね…☆でも安心してください!私がその冷たさをあっためてあげます…☆」
『…ナルちゃんの考えがわからないよ…うう…』
日々樹「まずは映画からです…☆あはははは!」
日々樹くんは私の手を掴んで映画館へと走って行った。忙しい中で3時間ほどの時間しか取れなかったそうだが、それでもこの3時間程度はどうやらこの日々樹渉の彼女らしい…恐れ多いことだが…
日々樹「紡、この映画のチケットです!」
『これ…発券しないといけないやつだ…私がやってくるね?』
日々樹「いいえ、ここは私が☆紡は座っていてください…!」
『え…あ…ありがとう…』
日々樹くんは颯爽と発券機に向かって行った。なんだか、似つかわしくない光景だが…、なんとなく大切にされてる女の子ってこんな感じなのかな…?その後ろ姿にも愛しさを感じるもので、この待ち時間も大切なのかな…もしこれが彼だったら……
日々樹「何をお考えですか…?☆」
『ぎゃっ!』
日々樹「愛らしい声ですね…!」
『……なんでもないから黙ってなさい』
日々樹「はぁい…」
日々樹くんは発券を終えて気づけば私のもとに戻っていた。いちいち声が大きいので黙らせれば素直に聞いてくれた。映画まであと30分はあるだろうか、ご飯を食べることはできないがお茶くらいはできそうだ…
『どこかカフェにでも入ろっか?少し時間あるし』
日々樹「そうですね…☆私がご馳走いたします☆」
『いや、大丈夫だけど…お金あるし…』
日々樹「カップ一杯くらいおごります☆彼氏ですから…!」
『か…れし…そうですか…』
日々樹「甘えてください、彼女さん☆」
『…じゃあお言葉に甘えて?』
そういうと、日々樹くんは私の腕を引っ張って走り出す。有名な珈琲店に入れば、彼はスムーズに注文していく。お金を出してもらう代わりに席を取って待っていれば、コーヒーが二つ机に置かれる。
「ありがとう」といえば「いえいえ」と返ってくる。
日々樹「紡はプロの脚本家になりたいのですか?」
『え?う〜ん…脚本家になりたいっていうか…まぁ物書きではありたいかなぁ』
日々樹「なら、舞台の脚本家を目指しませんか?」
『脚本家…』
日々樹「よければの話です☆紡が好きな劇団が脚本家の募集をしているので…☆」
『…わっ…ほんとだ…』
日々樹くんが渡してくれた紙には私の大好きな劇団の名前が書かれていた。そうか、劇団に脚本家として応募してみるという手もあるわけだ…。やると意気込んでも、その辺りを考えていなかった。基盤はしっかりした場所に入ってそこからフリーになるというのも手ではある…
『でも…この期間って…』
日々樹「そうなんです!スタフェスと丸かぶり☆これを受けるならスタフェスは何もできないかもしれませんっ!運命の決断ですねっ☆」
『ううん…。でも、力試しか…』
日々樹「私はオススメします…私は紡の脚本や創るステージが好きですので…」
『渉…』
日々樹「おや…やっと名前で呼んでくれましたね☆」
『…ありがとう…、参考にするよ。将来の…』
日々樹「おやおや、紡は本当に成長されましたね…昔なら自分のことなんて置いて『Knights』のところへ行っていたのに…」
『…そうかもね…』
日々樹くんからもらった紙を丁寧に折ってカバンにしまう。最後の一口になったコーヒーを飲み終わると、日々樹くんは「そろそろ行きますか?」とコーヒーをさげてくれた。
そして、二人並んで先ほどまで居た映画館へと戻る。
『日々樹くんって恋人いても変わらなそう…』
日々樹「どうでしょう…でも、私は等しく人を愛しているので…☆」
『…じゃあ人類、皆恋人か…』
日々樹「さぁ、映画のお時間です…☆」
日々樹くんはなぜか飲み物にポップコーンにと両手をいっぱいにして映画館へと入っていった。
映画の内容は確か…学園の青春ラブストーリー…でも、日々樹くんは見終わると「演劇部でこれは無理ですね☆あははは」と高笑いしていた。そのせいで内容はすっかり頭から抜け落ちた。確かにこれは男同士では甘すぎる話だったかもしれない。
『ほら…時間でしょ?恋人はお終い。ありがとね日々樹くん』
日々樹「はい♪女王陛下とこうやって時間を過ごせたのはいい思い出になりました♪こちらこそありがとうございましたっ☆」
『うん、脚本頑張るから…』
日々樹「いろいろと楽しみにしておりますっ♪」
そういって日々樹くんは手品のように消えてしまった。
唖然としているとまたナルちゃんから「12:30!〇〇のショッピングモール!ランチしてから映画よォ〜♪」と連絡が来た。もしかして、次も同じようなテーマなんだろう…もう、ナルちゃんの操り人形になるしかないようだ…
私はトボトボと指定の場所に向かっていった。
日々樹渉の場合
『日々樹くんエスコート上手いなぁ…』
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