躍進*ブラッディ・ナイトハロウィン
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そろそろ『ハロウィンパーティー』の目玉でもあるライブが始まる時間だ。
みんなに頼まれた通り、音楽室へと向かう。夕方のオレンジ色が廊下に広がる中をゆっくりヒールの音を鳴らしながら歩く。
きっと血の女王も処刑台に立つ時、一人でこんな気持ちだったのかな…でも私は違う。あなたと違って民を愛し、民に愛される女王になりたい。民が苦しむならその苦しみを分かち合い和らげたい…そうやって誰かに寄り添える人間でありたい。私は私自身のことをもっと『信じたい』ーー。
『でも…過信はしすぎない…いつも真摯に受け止めて向き合いたい…。』
たどり着いた音楽室の扉をガラガラと音を立てて開ける。すると、そこには零さんが部室に置いている棺桶に似ている蓋の開いた棺桶が置いてあった。
その中をゆっくり覗けば、お目当の人物が「すうすう…」と寝息を立てていた。
『凛月…起きて〜…』
しかし、凛月は目を開けることなく寝息をこぼす。
『凛月…あのね。
私…、いろんなことやったんだ…『Knights』以外のプロデュースもライブの計画や企画…それに合わせたレッスンも…あと生徒会が普段やってる予算のこととか…あんずちゃんがいつもやってる運営のこととか…新しい世界に触れた…
どれも新鮮で目を輝かせながら作業してた。でも結局思い浮かぶのは『Knights』のことで……みんなだったら…って考えて…
『Knights』やめる〜とかいってダメだよねぇ…成長の兆しなし…』
そう言いながら、棺桶の淵ににおでこをつけると誰かが頭を撫でる。
凛月「そんなことないよ。紡はすごい成長してると思うなぁ…太陽みたいにキラキラしてる…」
『凛月…起きてたの…』
凛月「紡の声はよく通るからねぇ〜♪すぐ起きちゃうよっ」
『キラキラ…してるのかなぁ…』
凛月「ふぁあ、ふ…♪ただ…俺も紡も独りぼっちで、この音楽室でピアノを弾いてる時間が……ほんとうに苦しくて寂しくて、耐えられなかったんだ
こんな感情が、俺らのなかにもあるなんてねぇ。不思議だねぇ?」
『だから、ふたりとも頑張りすぎたんだよねぇ…』
凛月「でも、暗闇に光が差し込んだみたい。照らされて焦がされて灰になったとしても、それが嫌じゃない…。
俺たち月の住民は昼の世界には交われない…でも、楽しくってねぇ……。ずるずると、みんなと同じ時間を過ごしちゃったけど…」
『り〜つ!大丈夫だってば!
凛月がみんなと同じ時間を共有できるように私も頑張るから、太陽の下でみんなと笑えるようにさっ!』
凛月「ほんと…紡は強い子だなぁ…」
凛月はゆっくりと棺桶から出る。固まった肩をぐるぐると回しながら座り込んだ私の腕を引っ張り立ち上がらせる。
『凛月を灰になんてしないよ…そんなことしたら、いろんな人に怒られる。』
凛月「今気づいたけど、すごい格好だね」
『なんでいい話の時にそういう事を言うの…』
凛月「まぁまぁ♪怒らないでっ、じゃあ行こっか?」
『…もう』
夕方になって少しコンディションも戻ってきたのか腕を掴んで音楽室を後にした。
凛月が今何を考えているかはわからないけど、きっと昔の零さんみたいに眩しいものを集めて手元におこうとして無茶をしてしまったんだろう。そんなことしなくても、みんな凛月の近くにいてくれる…凛月を守ってくれるのに…凛月も充分男の子ってことだよね…?
歩いていけば、ライブが開催される講堂の中へと入っていく。凛月に腕を引かれるままに楽屋まで連れて行かれる。
そこには先ほど見たレオと同じく死神の衣装を身に纏った『Knights』の姿があった。
凛月「おい〜っす♪」
瀬名「おい〜っす♪じゃない、くまくん体調は?問題なさそうならさっさと着替えてくれるぅ?」
凛月「はいはい♪」
朱桜「凛月先輩お手伝いします!」
凛月「うんうん、ご苦労ス〜ちゃん」
楽屋の裏にある着替えスペースに衣装を持った司くんと一緒に凛月は消えていく。
泉はゆっくりと歩いてこちらに向かってくる。呆然と立っている私の目の前に立ち止まって少し高い泉の顔を見る。
瀬名「女王陛下は?袖でご覧になるそうだけどぉ〜ここには何の用?」
『凛月に連れてこられただけだよ?邪魔なら袖で待ってるけど』
瀬名「邪魔なんて言ってないじゃん」
『じゃあ物言いには気をつけなよね。死神さん』
瀬名「…っは、あんたらしくないねぇ」
泉は私の頭を撫でる…と言うよりは頭をつかんでぐらぐらと揺らす。
瀬名「あんたもゆうくんも…ほ〜んっと生意気。」
鳴上「泉ちゃんは紡ちゃんがきてくれて嬉しいのよォ…今回はほんとにライブに関わらなかったじゃない?みんな寂しかったから来てくれて嬉しいのよォ…」
『そうなの?泉も可愛いところがあるね!』
瀬名「あぁあ!紡もなるくんもチョ〜うるさぁい!」
鳴上「さぁさっ!紡ちゃんお茶でも入れてあげるわァ♪」
『いや、みんなライブ前なんだし集中しなよ…』
鳴上「ほらほら!早くお入りなさいっ!うふふ♪」
『ちょっ…ナルちゃん…』
ナルちゃんに背中を押され楽屋の中へと押し込まれる。
やっぱり、『Knights』は居心地がいい。昔よりずっと、綺麗な清んだ空気だ。
深く深呼吸をしてからお茶を啜れば、目の前に泉が座る。
『レオはどこ行ってたの?』
瀬名「さぁねぇ〜?先にステージの方にいってるんじゃな〜い」
『適当だなぁ…でもそろそろ出番かな?凛月〜準備は?』
凛月「はいはい…ス〜ちゃんったら急かすんだからぁ…」
『うん…似合ってるよ?』
凛月「ヴェール直して?女王様…」
『私は『Knights』の人間じゃないんだけど?』
凛月「じゃあ衣装係…」
『はいはい…なおします…』
凛月のミニハットをなおしながら笑う。司くんもつけるときに注意していただろうに…。少し乱してくるあたり…もう確信犯なんだろうなこの子は…
『凛月、ちゃんと見てるから…大丈夫だよ』
凛月「うん、夜は俺の時間だから…頑張るよっ♪」
こうして、私は『Knights』と一緒にステージの袖に向かっていったーー。
起きて、吸血鬼さん
『いってらっしゃい』
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