躍進*ブラッディ・ナイトハロウィン
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『おろしてよ!レオ!恥ずかしい!一般客もいるんだよ!』
月永「あはは☆」
レオは私を抱っこして廊下を走り抜ける。一般客が歩き回れる場所ではざわざわと声がする。
何も知らない人達には一種の見世物になっているが、わかる人にはわかる。たまに「王さま⁉︎」と声が聞こえる…せめて、人通りのないところへ…と思っていればガーデンテラスの方へと向かっているようだった。
『なんなの⁉︎どこにいくの!は〜な〜せ〜!』
月永「お前反抗期か⁉︎普段はこんなこといわないのに〜!レイか!シュウか!いやこの反抗期具合はセナだな⁉︎」
『いや…普通の反応!』
月永「もうちょっと我慢しろって!落としたら危ないだろ‼︎」
『だったら離してよ!』
月永「お前本当に反抗期だな!あははは☆でもおれは負けないぞ〜!」
私の話をまったくもって聞き入れてくれることはなかった。ただただ目的地を目指して走っていく。私ももう言うこともせず顔を見せないようにレオの肩に顔を隠すしかできなかった。
月永「よし、連れてきたぞ〜!」
鳴上「あらあらあら!素敵な格好ねェ、紡ちゃん!」
朱桜「紡お姉様!女王の名に相応しい美しいお姿です!」
『あれ…みんな…?ここは…』
瀬名「厨房〜…お菓子作りに追われてるのぉ〜」
『みんなは制服なの?衣装着てるのレオだけ?』
鳴上「ライブのトップバッターだから、宣伝も兼ねて王さまにはファンサービスついでに女王様探しに行ってもらったのよォ」
月永「人だかりできてたからどこのユニットだ〜と思ってみたら紡でビックリした!見つけやすかったけど!」
『待って待って…、なんで私を探しに?私今回は『Knights』と関係ないでしょ?』
朱桜「ですが…、やはりお姉様に見送っていただいた方が…気持ちが入ると言いますか…。」
瀬名「それと、あんたにお願いしたいこともあってさ」
『お願いしたいこと?』
瀬名「そう、あんずがくまくんを捕まえて寝かしてくれてるらしいからあんたにはライブ前に起こして連れてきてほしいのぉ〜」
『それって…私の仕事?』
瀬名「『友達』でしょ?くまくんからのご指名だから文句言わないでよねぇ…」
『凛月は友達の乱用だ…』
詳しく聞けば、凛月の今回の体調不良を心配した零さんが寝床を音楽室に作ったそうだ。そこでライブが始めるまでは休ませる計画を立てているそうで、その情報をあんずちゃんから泉は聞いていたらしい。
それとは別に凛月は「どっかで休むかもしれないから紡に起こしにこさせて」とお願いされていたらしい。
また、泉は板挟みにされていたわけだ。仕方ない…わがまま吸血鬼のお願いを聞いてやることにしよう…。了解、と頷けば泉は「頼んだよぉ〜」と厨房の中に戻っていった。
月永「あと紡は袖からライブみてくれ!」
『いや、正面から見るって話さなかったっけ?』
鳴上「あら、そんな話アタシ聞いてないわァ」
『いや、レオに…』
月永「ダメだ!今までもこれからも紡が『Knights』のステージを見るのは舞台袖だから!そこでちゃんと見てろ!」
『えぇ…』
朱桜「そうです!どんな時でもどう言う立場でもお姉様が袖にいるだけで司は頑張れるのです!」
『そう言われても基本関係者以外立ち入り禁止だよ。あそこ』
月永「紡は関係者だから!あははは☆大丈夫だ!」
『大丈夫…とは?』
どうも、押しの弱さは変化がないらしい。3人が迫ってくるのに我慢できず「わかった…」と声をこぼすと、3人は声をあげて喜んだ。
喜ばれるのはいいけど、私が…『Knights』ではない私が舞台袖に立つなんてありえていいことなのだろうか…。まぁみんながそれを望むなら舞台袖に立って、ゆっくり見させていただくとしよう。
『私が袖で見てるんだから情けない舞台にはしないでね?』
朱桜「……」
鳴上「あら…」
月永「あははは☆その格好だとほんとに女王様だな!」
『なっ…!』
鳴上「よしよし…」
『なにナルちゃん…なんで撫でるの』
鳴上「子供の成長に悲しさを覚える母の気分よォ…」
『年下だよね?』
ナルちゃんは何も言わずに私の頭を撫で続けた。それを微笑んでみる司くんとレオ。いつもなら怒るのになんで今回は何も言わないのかな…流石に気恥ずかしいのでやめて、と腕を避けると「やんっ」と声を出す。
『なんなの、3人とも…様子がおかしい…怖すぎる…』
朱桜「いえ、少し離れた間にお姉様の雰囲気が変わられたな、と感じたので…」
月永「あはは☆霊感(インスピレーション)が湧いてきたっ!素晴らしい曲が書けそう!」
鳴上「うふふ♪じゃあ、紡ちゃん!凛月ちゃんのことよろしくねっ♪」
朱桜「お姉様!またライブでお会いしましょう!」
ナルちゃんと司くんは泉のいる厨房に戻っていき、レオと私だけになる。レオは豪快に笑っていた顔をすんっと戻して穏やかな顔でこちらに向き直る。
ゆっくりと私の手をとってテラス席に座らせる。一度厨房の方に入って戻ってきたと思ったらその手にはお菓子とカップを手にしていた。それらを机の上に置いて自分は向かいの椅子に座る。
『どうしたの…、レオ』
月永「『Knights』に戻ってきてくれ」
『…へ?』
月永「お前はやっぱり『Knights』に必要だよ。」
『それは今日が終わればまた私から言うって…』
月永「いや、おれから言いたい。紡は、どのユニットより『Knights』が相応しい、他のユニットになんかくれてやらない。」
『……』
月永「贔屓目なしに、お前はこの短い間に充分変わった。本当はもうこれからどうしたい。なんてわかってるんだろ?
見てればわかるよ。お前と何年一緒にいると思うんだ?幼馴染だろ?」
『…あははは☆…幼馴染にしては執着心の強い王さまだね』
月永「むっ…そりゃ…まぁ…」
『でも決めたことだから最後までやらないと、プロデュースしたユニットのライブを見届けないと、最後まで仕事はしないとそれは半端な女のままだ…私の仕事を見届けたからまた言って?』
月永「…絶対帰ってきてくれる?」
『そんな悲しい顔しないで?私は戻ってくるよ。首を切られても蘇ってあなたに会いに行く。』
月永「その格好だと、冗談に聞こえないな…あははは☆」
レオはそれ以上は追求せずに椅子から立ち上がり、「リッツのことよろしくな」と言って厨房へと消えていった。私は残ったカップとお菓子を見ながら少し息を漏らす…。
彼の真剣な顔に危うく流されてしまうところだった。でも、今日は…今日一日だけは『Knights』じゃない私を満喫したい…、私の小さなワガママだったーー。
死神の囁き
『死を告げる前に生者の世界を満喫したい』
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