連弾!月光とシンパサイザー
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真夜中の音楽室ーー。
私はここ最近考えていたことを凛月に話すためにゆっくりと口を開く。
『去年さ、月の住民の話ししたの、覚えてる?』
凛月「紡と俺が同じ月の下でしか生きれないって話し?」
『そう…、ずっと同じ世界の人間。それだけで、終わってた。だから、凛月に「なんで俺のことわかるの?」って言われた時から理由をずっと探してた…。
でも、結局自分一人じゃわからなかった。ごめんね?いつもわからないことを教えてあげて…教えてもらって…ってしてたのに』
凛月「ううん、俺こそごめんね?避けるような真似して…」
『大丈夫、凛月と話すことができなかったのは寂しかったけど…、色々考えられた!
ひとりで考えてもダメだから、仲の良い人に聞いたの…色々言われたけど、一番言われたのは『理解者』って言葉…でもさ、納得できないところもあって…答えは見つからなかった…
ずっと考えてたらね?曲が完成してた、凛月のために書いたの…答えとか納得できる理由は見つからなかったけど、これを…この曲を『理由』にしてくれないかな?』
凛月「…うん、充分な理由だよ。紡の曲を、俺のためだけにもらえるなんて…」
『ありがとう…それとね!』
凛月「なぁに?」
『この答えは…これから一緒に探そう…!いつもどっちかが知ってることを相手に教える…そうやってきたけど…、ふたりが知らないことはふたりで答えを探そう…!そうすれば、きっと良い答えが見つかる!霊感(インスピレーション)もいっぱいわいてくる!そう思わない?凛月…!』
凛月「…ふふっ、そうだね。それが一番の『答え』だよ。ありがとう、紡…じゃあまずはこの曲でも聞かせてもらおうかな♪」
凛月は月光に照らされながらこちらに微笑む。そのまま手に持った楽譜をピアノの譜面台に置いて簡単に並べ直している。
ピアノに近づいて並べ替えるのを手伝ってから凛月の座るピアノの椅子に座る。椅子を半々に分けて座ると、凛月が肩肘をピアノに置いてこちらを見る。
『なに?歌ってくれないの?』
凛月「初見だから、紡が歌って?」
『私が?…うう〜…まぁ良いけど』
凛月「やった♪紡が歌うの珍しいからラッキー♪」
凛月のリクエスト通りにピアノを弾きはじめれば凛月は目を閉じて大人しく聞き入っていた。
私は、完成した曲を歌う。書いた時の思いが伝わるように歌えば楽譜の歌詞を見て凛月がたまにあわせて歌う。それがどうしてか「大丈夫だよ」って言っているようで安心して弾き続けられる。
曲が終われば、凛月は軽く拍手してくれるがそれを苦笑いで返す。
『何が、初見だから〜…だよ。合わせられるんじゃん…』
凛月「ふふっ♪良い曲だね…そっか〜…ピアノの曲…ノクターンだ。」
『そう…あとね。これは、ピアノ一つでも綺麗な曲だけど…連弾にするとより曲のイメージが変わるの。』
凛月「連弾…?へぇ…それは一緒に弾かないといけないね…」
『今度は凛月が歌って?私がメインのピアノ弾くから』
凛月「…ふふっ、いいよ。」
私がもう一度鍵盤に手を置けば凛月も鍵盤に手をかける。呼吸を合わせて弾きはじめれば先ほどの単体よりも音に重みが加わって曲の感じも変わってくる。それに合わせて凛月が歌えば、先ほどの私の歌とは比べ物にならないほどの完成度で、流石の実力だと思った。
曲が終わるまでミスすることなく弾くと凛月が歌い終わる。
凛月「さっきとイメージもちょっと変わったかも…連弾…の曲なんて初めて…」
『いいでしょ?単体でも聞けて連弾でも聞ける。凛月の歌声にあった高さだし、弾きながらでも歌えるね?』
凛月「…ふふっ♪でも、この曲は紡の前で歌うことしか無さそう…」
『なんで⁉︎ダメだったかな⁉︎』
凛月「違うよ…この曲は連弾で聞きたい。…紡とじゃなきゃ弾けないでしょ?」
『そういう…いつでも弾いてあげるよ…でも一人でも弾いてよ』
凛月はゆっくりと私の頭を撫でてから楽譜に目を向ける。パラパラと楽譜をめくって、再度音や歌詞を確認する。凛月の顔を見てるとここが好きなんだとか気に入ってるとかが伝わってくる。
『その曲の名前…凛月がつけて…?私やっぱネーミングセンスないからさぁ…』
凛月「ん〜…紡がつけてよ…いいじゃん…たまにはさ」
『…う〜…あ!”sympathizer”ってどう?』
凛月「シンパサイザー?どう言う意味?」
『理解者、とか…共鳴者って意味だったはず!』
凛月「うん♪気に入った、珍しくいい名前なんじゃない?」
『珍しくは余計だよ…じゃあこの曲は”sympathizer”』
そういってペンを持って楽譜に書けば凛月も「いいね」と頷くと小さく笑いあった。これで私たちの小さな喧嘩は幕を閉じた。
これでいつも通りだ…日常をひとつ取り戻せた。また新しい曲を書く時は本当の『答え』を見つけた時に一緒に名曲を生み出そう…。
『次はもっと素晴らしい名曲を生み出そう!あはは☆』
凛月「まずはこの曲に馴染ませないとね…♪」
凛月はまた鍵盤に手を置いて弾き始める。私も合わせて弾けば凛月と目が合う。やっぱり凛月は最高の『友達』だ…。
『凛月…『お友達』になってくれてありがとう…』
凛月「……こちらこそ…最高の『お友達』になってくれてありがとう…紡♪」
真夜中の音楽室で2人のピアノが会話するように流れる。きっと夜が明けるまでこの音色が続くんだろう…だって私たちは月の下でしか生きられないたった2人の月の住民なのだから…
sympathizer
『私の雨も止んでいたんだ…』
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