連弾!月光とシンパサイザー
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「ほんっっっと、チョ〜うざぁい!」
雨の中、中庭のテラスに駆け込んだ人物の第一声がそれだった。それと同時に昼休みの終わりの合図が聞こえてきた。私なんかのお願いのせいでサボらせてしまって、申し訳ないがその優しさに笑ってしまった。
現れたのは、同じクラスの騎士様…瀬名泉で、手に持ったレジ袋を私の頭にガサッと乗せた。おそらく入っている猫缶が頭にカツンっと当たる。ここまで届けてくれたわけだしこのくらいの痛みは我慢してやろう…
『お疲れ、泉。ごめんね?ありがと!』
瀬名「ほんとさぁ〜、なんで昼休み終わりに言うかなぁ…?この馬鹿女王様は!」
『ほらほら、座って!』
瀬名「はぁ……あんたのせいでサボることになったんだけどぉ〜?」
『いいじゃん、たまにはさ〜…』
瀬名「しかも、きてみれば猫と遊んでるし…、マジでなんなのぉ?」
袋をガサガサと漁って猫缶を取り出し、開けて猫さんの前に差し出すと猫さんはお腹が空いていたのかモグモグと食べ始めた。
泉も覗き込んでその様子を見る。
瀬名「なんでリトル・ジョンがいるの?」
『リトル・ジョン?何その名前…?レオのお友達だと思って……』
瀬名「その王さまがつけたのっ、リトル・ジョンって名前」
『全然リトルじゃないけど…どっちかって言うとビッグ…』
瀬名「それは王さまに言ってくれるぅ〜?」
『は〜い』
引き続き、袋から飲み物とお願いしていたパンを取り出し、パンの袋を開ける。
瀬名「それで、なんでこんなところにいるわけぇ?よりによって雨の中でさぁ〜」
『なんか、雨の中でも出たら面白いことありそうだし…、な〜んかここに来たくなっちゃって…そしたら先客がいて、人懐っこいから餌でもあげてさらに仲良くなろうって寸法さ!』
瀬名「それに俺を呼んだ理由は?」
『…泉が、一番すぐくると思ったから…ごめんね?やっぱ怒ってるよね?』
瀬名「別に…紡は普段我が侭言わないし、逆に俺の我が侭聞いてくれてるわけだし…今回くらい見逃してあげるけどぉ〜」
『ありがと…、ついでに雑談してもいい?』
パンを食べながら泉の顔を覗き込めば少しギョッとして目を逸らしてからコクリと頷いた。なんだか耳が赤いけど…雨だし少し冷えたのかな…?
心配しつつも、先ほど零さんに話したことと同じことを話す。
『私と凛月って泉にとってどう見えてる?』
瀬名「なに?やっぱり喧嘩でもしたの?」
『やっぱりってなに⁉︎……喧嘩はしてない…たぶん…』
瀬名「たぶんってなに、曖昧だなぁ〜?それで?あんたらがどう見えてるかでそれは解決するの?」
『…たぶん…』
瀬名「たぶんたぶんって…
くまくんと何があったかは知らないけど、あんたらは〜…そうだな〜…友人…じゃないな。同じ星の宇宙人って感じ…?
よくわからないところで共感するし、よくわかんないところで理解してる…。同じ星の人間だから、通じ合ってるって感じぃ?
くまくんも特殊な星、あんたも特殊な星……まぁ、それ言ったら王さまもなるくんもかさくんもみ〜んな宇宙人だけど〜
でも、くまくんとあんたは星が近いんだろうね?共感する力が他の奴より強い。だからこそ、お互い不思議なんだろうね…なんでこいつ自分のことわかるんだ〜ってさ?」
『泉は…、エスパーなの?』
瀬名「あんたはわかりやすいし、顔に出やすいから。比較的わかるよ〜」
『隠し事できないなぁ〜…』
瀬名「それで?答えは出てるの?」
『んん〜…どうだろう…、答えには近づいてるかな?
早く教えてあげたい…。答えって言うか…理由を…私が凛月のことわかる理由を…凛月が私のことをわかる理由…』
瀬名「くまくんのこと…好き…なの?」
『え?…なんでそんなことに…』
瀬名「なんか、恋する女の子みたいでムカつく…」
『そこは可愛いと言ってほしかった…。』
恋する女の子…とは聞こえはいいが、たぶんそう言うのじゃなくてどっちかっていうと、私たちが友達になった理由みたいなものを探していると言ったほうが正しいのかもしれない。この得体のしれない関係に答えがほしくなってしまった。それだけのことだった…。
瀬名「可愛いって…、ふふっ。そうね、そうかもね?」
『何急に…』
瀬名「そうやって、何かを一生懸命考える姿は可愛いんじゃない?」
『えっ……』
瀬名「答え探し頑張りなよ。そんで早く仲直りしな?二人が一緒にいないのってな〜んか不思議だし」
泉は逸らしてた顔をこっちに向けて少し悲しそうに微笑む。その理由がわからなくて少し困惑するとその目の隠すように泉は乱暴に私の頭を撫でて髪の毛を乱した。
困惑のあまり、大人しくしていると泉は手櫛で乱れた髪を直してくれた。
『泉は…身内にはとことん甘いよね…』
瀬名「そうね〜、俺みたいなのに付き合ってくれる奴は少ないからね。手の届く範囲にはね」
『…大丈夫だよ、泉はいい子だから…みんな泉のこと大好きだよ。私が保証する』
瀬名「大好き、ねぇ……あっそ……」
『せっかくだから、歌でも歌っていきますか?騎士さん?』
瀬名「別にいいけどぉ〜?女王陛下も歌ってくれるのぉ〜?」
『私歌下手だよ?泉の練習相手にもならないよ?』
瀬名「俺よりは上手でしょ…」
泉は少し怒った顔をしてこっちを睨む。たしかに2年の時に「セナ!紡より下手っぴだなぁ〜あはは☆」とどっかの王さまが言っていたな…まだ引きずってるのか…今や私より泉の方が全然上手なのに、音とるのも上手くなった…
『泉の歌声、レオに聞かせてあげたいよ…』
瀬名「…結局、あんたはれおくんばっか…」
『えへへへ…神様ですから…』
瀬名「それで?歌うの?歌わないの?」
『歌おう!雨が止むように♪』
ギターを持ち直せば、泉は微笑んで「女王様は何歌わせてくれるの?」と言った。気分で曲を弾けばそれに合わせて泉が歌ってくれた。
さらにあわせて猫さんが踊るように体を揺らして可愛かった。雨でもこんな素敵なコンサートができるんだ。晴れたらもっといいコンサートになりそう…。
早くこの雨を止めないといけないよね。
同じ星の宇宙人
『雨音と泉の声はお似合いだね…』
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