連弾!月光とシンパサイザー
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軽音部部室にてギターをのんびり弾いているとおしりの下にあった棺桶の蓋がガタゴトと音を立てる。
しかし動かずに乗ったままでいればゴンゴンゴンっっ!と音を立てる。
さすがに悪いかと思って、立てばゆっくりと蓋が開いてお目当ての人物が現れる。
『こんにちは、吸血鬼さん』
零「紡ちゃん…、来てギターを弾くのはかまわんが棺桶に閉じ込めるでない…爺にドッキリはいかんぞ…」
『ごめんごめんっ!許して零さん!お詫びに通りすがりのあんずちゃんからもらった炭酸ジュースあげる♪』
零「我輩…炭酸よりトマトジュース派なんじゃけども…」
『あははは☆いらないならいいやっ』
零「…して、我輩に何か御用かな?」
『なにも言わずしてわかってよ〜鈍いなぁおじいちゃん』
零「こんなところで2人きり…紡ちゃんのテンションが高い…何かを誤魔化そうとしておるな…はて、愛の告白かのう?」
『帰るわ』
零「これこれ…そうせかすでない。相談ごとじゃろう?言ってごらん…」
零さんはのっそり棺桶から出てきてどこから出したのか、トマトジュースをいれてゴクリと1口飲み込んだ。そして、早く話せとこちらに目を向ける。
『私と凛月って零さんから見てどういう風に見えてる…?』
零「どういう…?はて、それはまた難しい質問じゃのう…」
『友達?親友?同じユニットの仲間?女王様と騎士?……ここ数日どの言葉でそれを表していいかわからない。
でも凛月はその答えを探してる。私が見つけて教えてあげたい…。でも考えれば考えるほど答えは見つからなくて…、私1人じゃわからないからみんなからヒントをもらうことにした…。』
零「なるほどのう…、そうじゃな…紡ちゃんと凛月は『理解者』というのが我輩的には似合っておると思う…。
お互い自分の世界があるが、その一部分を共有しておる。それ故に互いの感覚や感情をある程度理解し把握できる…他の人間ではできないレベルでな?」
『『理解者』…ん〜…でもなんでもわかるわけじゃない…』
零「それはそうじゃ…お互いのこと全てわかっておったら、葵くんたちのように一心同体とも言える…。
2人は男女で、生まれ育った環境も周りにいた人間も違う。わからぬこともある。じゃがどちらかが知ってるからそれを補える…そう思わんか?」
『うう…難しいなぁ…でもわかる気がする』
悔しいほど的をえてる…零さんの言葉はストンと胸に落ちてきた。確かに、お互い分かり合っているとこもあればそうじゃないところもある…それでも、どちらかが知っていれば…、それは2人の知識になっていた。
早くも答えに近づいて気がするが、本当にこれが正解なのだろうか…、まだ答えを探す余地がある、と思っていると零さんの大きくて細身な手が頭に乗る。
零「まぁ1番は凛月と付き合ってゴールインしてもらって、義妹になってくれるのがいいんじゃが……」
『さっきまでの真剣な零さん返してよ…』
零「そうかや?意外とマジなんじゃが…凛月はダメかのう?贔屓目無しに目に入れても痛くない子なんじゃが…」
『マジって…あのさぁ…そういう目で見てないって知ってるでしょ?』
零「まさか…紡ちゃん…男じゃなくて女の子がっ…」
『ああ!?そんなわけないでしょ!もう!零さんのバカ!帰る!ギター借りていくから!あばよ、吸血鬼!』
バンッと音が鳴る勢いで部室のドアを閉めて私はすぐさま走り去っていった。
零「そうやって探し回ってるだけで凛月は幸せじゃと思うぞ…」
零さんの言葉なんて無視して中庭の屋根のあるテラスを目指した。雨はまだ止む気配もなく降り続け、中庭の花々に栄養となる水を注ぎ続けた。
テラスにつけば案の定誰もいなくて、雨の中私ひとりがポツンと立っていた。ギターが濡れないよう抱きしめて走ったが、足元がビショビショになってしまった。まだ昼休みが終わるまで時間もあるので、意味は無いと思うが靴下を脱いで乾くようにと干してベンチの上に胡座をかいて膝の上にギターを置けば、手が勝手に音楽を奏でる。
適当な曲に適当な歌詞をつけて歌うとベンチの下から「にゃーん」と声が聞こえる。
『うわぁっ!な…なに…?ねこ…?』
「にゃーん」
『君たしか…王さまの友達猫さん…だよね…?』
猫さんはギターを持っている私の腕に擦り寄ってくるまるで「もっと弾いて」というかのように、その頭を軽く撫でればその手にも擦り寄ってくる。
『君も雨宿り…?ずっとここにいるの…?』
「なぁーん」
『そう…お腹すかない…?
空いたよねぇ…実は私もなんだぁー…っあ!いいこと思いついた!
待ってて!今救世主を呼んであげる!』
「にゃー?」
1人で騒ぐ私に猫さんは頭を傾げる。私は携帯を取り出して「パンと猫缶買ってきてー!中庭のテラスで遭難中なの〜!」と言いたいことだけ言って電話を切った。電話の相手はありえないほど怒っていたけど、たまにはありえない我が侭を言ったってバチは当たらないはずだ。その人が来るまでは、彼の友人である猫さんをこのギターでもてなすことにしよう…。
『君は『Knights』の曲好き…?』
「にゃーん」
『そっか!じゃあ『Knights』の名曲を聞かせてあげるねっ♪』
こうして、猫さんのためだけの短いライブが始まったのだった。『Knights』の曲はどんな楽器で弾いても綺麗な音色だ。アレンジのしがいもあるってものだ…、弾いてるギターにあわせて猫さんが歌うように鳴く。それが可愛くて笑っているとテラスに傘を持った人が駆け込んでくる。
こんにちは、吸血鬼さん
『猫さん、音楽はいかが?』
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